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異空のレクスオール  作者: 天野ハザマ
本編

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戦いの始まり

 悠然と構えるシュテルフィライトの前にカナメ……そして、アリサとルウネが立つ。

 ここまで、二人は無言。

 カナメを守るように立つ二人の背中に、カナメは声をかける。


「本当に……どうして来ちゃったんだ。相手はドラゴンなんだぞ?」

「……そんな場所に一人で行こうとしたくせに」

「です」

「うっ……で、でも。向こうは俺との戦いを望んでたわけだし」

 

 カナメの言葉に振り向いた後……アリサは、シュテルフィライトに視線を向ける。

 その視線の意味を察したか、シュテルフィライトは余裕に満ちた表情……といってもドラゴンの顔ではよく分からないが、とにかくそのような表情と態度で笑う。


「いいとも。たっぷり話し合え。待つのには慣れている」


 なんなら不意打ちしても構わんぞ、と笑うシュテルフィライトをそのままにアリサはカナメの元へ歩き……そのまま胸倉を掴みあげる。


「あのさ。私はカナメに守ってもらうだけのお人形になるつもりはないよ」

「ア、リサ?」

「カナメが強くなったのは嬉しい。でもね、強くなる事で大事な事を捨ててないかな?」

「何を……」

「なら、なんで一人で戦おうとするの」

「それ、は」


 それは、巻き込みたくないからだ。死なせたくないからだ。それの、どこが。


「いい、カナメ。巻き込みたくない、だから一人で戦うっていうのは立派な台詞だよ。とっても綺麗だと思う。でもね、それは無意識に他人を見下してる。「弱いお前等は強い俺の後ろで震えてろ」っていう、史上最大の侮辱だからね。私はそんな奴は、永遠に一人でいいと思う」

「俺は、そんなことは……!」

「カナメから見て、私達は弱い? それともカナメが私達よりずっと強いのかな? 私達なんか必要じゃないくらい?」


 アリサの真っすぐな視線に、カナメは思わず視線を逸らす。

 そんな事を欠片も思っていなかったとは、言えない。

 強くなったという自覚があった。守られてるだけじゃないという自信があった。

 だから、見失っていた。自分が強いと自覚するあまり、隣を見ることを忘れていた。

 

「……ごめん。俺は……」


 驕っていた。気付かぬ間に、見下していたのだ。

 自分が守るのだと。そんな事を考えていた。

 自分の周りには、守られるだけを良しとする人間など一人も居ないというのに。

 

「いいよ。許したげる」


 目に見えて動揺するカナメの頬を、アリサは優しく撫でる。

 ぺち、ぺちと。軽く叩いて笑う。


「でも、次は許さない。思いっきりブン殴る。分かった?」

「……ああ。その時は、俺を殴ってほしい」

「了解っと。私からはこんなところだけど……ルウネは?」

「……そう、ですね」


 ルウネもまたカナメの側に近づくと、その顔をじっと見上げる。


「約束したですよね。いつかルウネを超えると」

「……ああ」


 そう、それはルウネと交わした約束、契約。

 ルウネを超えるまで、助けてほしいと。ルウネが誇れるような立派な自分になると。


「超えたですか? ルウネの助けはもう、必要ないですか?」

「いいや。俺はまだ全然だ。ちょっと力が強くなっただけで、何も分かっていない俺のままだった」


 世界を守りたいと願うのに、隣に立つ人の気持ちすら蔑ろにしてしまう。

 そんな事で、どうやって世界を守るというのか。

 自分で全てを背負うつもりのナルシストで、一体何を守るつもりだったのか。


「……ごめん、ルウネ。俺は成長したつもりで、間違ってた」

「一概に間違いだとは、言わないです、けど」

「え」

「強くなる、自信を持つ、一人でやろうとする。ある意味で当然です。でもそこに自己犠牲がつくと、歪むです。自分一人でどうにかなるなら、は破滅にしか繋がらないです」


 あの状況でカナメが助けを求められたとは、アリサもルウネも言えないし言うつもりもない。

 選べたのは「行く」か「行かない」の2択。

 だから、アリサもルウネもついてきた。振り下ろされたところで生き残る算段だって、当然つけている。


「こういう時にカナメ様が言うべきは、一つです」


 そう、それはすなわち。


「ありがとう。一緒に戦ってほしい……です。それだけでルウネ達は、フルパワーです」


 それだけでいい。それだけでいいのだ。

 他に何も望んでいないし、それが仲間というものなのだ。

 だから、カナメが言うべきは「どうして来たんだ」ではなかった。

 カナメが、言うべきだったのは。


「……ありがとう。まだダメな俺だけど……一緒に戦ってくれるか?」

「勿論。ドラゴン戦は最初の夜以来だね、カナメ」

「敵は見たことも無いドラゴン。でも問題ないです。最高のルウネを見せるです」


 不器用な笑顔を浮かべるカナメに、二人は快諾してシュテルフィライトへと向き直る。


「なるほど、良い余興であった……正直、妬けるぞ?」

「ハハッ、なら戦うのやめる?」

「いいや、それはないな」


 アリサに、シュテルフィライトは笑いながら……しっかりと、アリサとルウネを見据える。


「だが、聞こう。我が名は宝石竜シュテルフィライト。お前達の名を教えよ」

「アリサ。ただのアリサ」

「ルウネです」

「よかろう。カナメ、アリサ、ルウネ! 手加減はせぬ……我を楽しませよ!」


 天地を揺るがす咆哮が響く。戦いの始まりを告げるその咆哮は……遠く、聖都まで響いていた。

次回更新は8/10です。

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