裸になれるのは浴室の中だけ……。
瞬と別れて、家に帰ると私はそのまま浴室に向かった。
最近……瞬と会った後は一目散に家に帰り部屋へ行く。
部屋に入ると着替えもせずにそのままベッドの上へ……そして……両手で顔を覆いながら身体を丸めうずくまる。
そうすると……手から……身体から……ほんのりと瞬の匂いがする。
瞬の匂いが消えるまで、私はじっくりとその日の余韻に浸る。
でも……今日は……直ぐに浴室に行きシャワーを浴びた。
匂いも感触も嫌な気持ちも……全て洗い流したかったから……。
忘れたいけど……逃げたいけど……。
頭からシャワーをかけながら……今日の事を考える。
今日、私は……瞬に……嘘をついた……。
菫と……一緒にいないで……私だけを見つめていて……。
友達なんていらないじゃないって……私がいればいいじゃないって……そう言いたかった。
でも……それは完全に私のわがまま……そもそも彼に友達がいない原因の一つは私なのだから……。
キスした時、ドキドキが止まらなかった……彼が好きで好きでたまらなくなった……もっともっと彼と……色々な事をしたい、先に進みたいってそう思った。
これが恋なのだろうか?
でも……少しずつ冷静になってくると、嬉しさよりも怖さが増していく。
このまま……彼と、瞬と……進んで良いのだろうか? って、そんな思いが頭を過る。
私と彼は憎みあっていた。 本当に嫌いだった。
それがマッチングシステムで出会い180度変わった。
彼は……私なんかで良いのだろうか?
私は彼を選んで良いのだろうか?
私たちに関係はシステムによって変えられたのではないか?
思い込んでいるだけなのではないか?
彼と私は似ている……だからこそ、わかる事がある。
今、彼は揺れているのだ……私とは少し違う気持ちで。
そう……今……私も揺れている。
好き……嫌い、束縛したい……束縛したくない……抱き締めて欲しい、抱き締めて欲しくない。
私の中で相反する気持ちが、感情が同居し、せめぎあっている……。
逃げ出したい……いや、多分中学までの私なら……こんな気持ちに耐えられず逃げ出していたのだろう。
瞬が好き……。
でも……知らない事が多すぎる……彼の事を私はまだ知らない。
今までシステムに頼りすぎていた、多分それは彼もそうだ。
私たちはまだ、お互いを晒け出していない……そんな気がする。
知られる事が……知る事が怖い。
嫌われたくない……嫌いになりたくない。
だから、知りたくて、もっと知って欲しくて……彼とキスをした……頑張って……キスをした。
私の精一杯の気持ちを伝えたくて……そして…………彼を私の元に留める為に。
でも……心配していた事が現実なる。
……菫に言われた事が……現実になった。
『システムの信頼を失ったら……貴女たちの関係はどうなると思う?』
前に話し合った時……最後に言われた菫の台詞……。
それを瞬に気が付かせたくなかった。
キスをして舞い上がっていた私、でもそれは瞬との関係が進んだからではなかった。
彼が私に夢中なってくれるって……彼が……私から離れられなくなるって……そう思ったから……。
だから私はもっと……自分の全てを使って……もっと好きになって貰えたらって……そう考えてしまった。
出来もしないのに……。
彼の前で……裸になんてなれるわけ無いのに……、
私はお湯を止めると、自分の裸体を見つめる。
「……籠絡なんて……出来るわけないのに……」
自分の身体で彼をなんて……出来るわけ無いのに……なんの経験も無い自分が……。
今の私なんて、精々頑張ってキスまで……しかもその結果……瞬にこの先の事を気付かせる事になってしまった。
瞬は気付いてしまった……システムの事に……私との違和感に……。
──私は酷い女だ。
最低なのは……男じゃない……最低なのは私……私は全てを利用している。自分のエゴの為に……。
瞬も、システムも、そしてこれから……菫、高麗川菫さえも……利用しようとしている。
自分のトラウマを解消する為に、男性不信を治す為に……。
自分の目的の為に……自分のエゴの為に……。
魔王は菫じゃない……魔王は私……私は自分の為に……システム同様に……二人を利用しようとしている。




