第98話:行進と新装備
どもどもべべでございます!
今回はハノンくん回です! フロキアさん回はまぁ、適度なタイミングでとびとびにいきましょう。
という訳でご投稿! どうぞ、お楽しみあれー!
雲もまばらな青空に、小鳥が一羽飛んでいる。
壁も何もない空を、なんの縛りも無く飛んでいられるってのは、時々羨ましくなる姿だな。
今の俺らみたいに、えっちらおっちら地べたを歩いてる時には特にそう思えてくる。街道の石畳を踏みしめながら、耳を左右に動かし音を拾いつつ俺は小さく息を吐いた。
「ハノンって、意外と体力あるんだな。失礼な話だけど、休憩の数は増やした方が良いと思ってたわ」
「それな。この分だと、俺らが考えてたより速く目的地に着けそうだな」
「あ、あはは……装備で誤魔化してるだけですけど、ね?」
今は、アーケンラーブの町まで馬車の護衛依頼中だ。ナローの操る馬車を、俺とハノン、そして銅貨三人組の男手2人が囲んで歩いている。
ヘナはハノンのポーチポケットの中で、女の魔術師は馬車の屋根の上で体力温存だ。
グランアインからアーケンラーブにかけての道筋には、一本の街道が通っている。普通に地面だと馬車じゃ行ける場所も限られるし、石畳を敷いてくれた職人たちには感謝しかないな。
……まぁ、俺も労働者ギルドとの共同依頼って事で、石畳敷かされてたんだけどな! 護衛が必要とかいう名目で一番つらい中腹を担当させられたわ。
「それって、疲労軽減のマジックアイテム~?」
「はい。この靴なんですけど……これがないとまだ少し、遠出は厳しいかもですね」
いくら馬が荷を引くと言っても、その重量は相当なものだ。馬の体力を考えれば、必然その速度は限られる。
だからこそ、割と頻繁に休憩も入るんだが……この3人は、それとは別にハノンの体力も視野に入れてくれてたらしい。即席チームだからこその嬉しい配慮だ。
この辺は平野で見晴らしも良いし、奇襲の心配も少ない。この辺で一回休憩を挟むのはありだろうな。
「はぁ~、金持ってるなぁ。この前見た時より、装備も充実してるみたいだし」
「だな。前は普通にローブ着てただけだったけど……それ、マントみたいに加工してあるだろ? 下に何か着込んだ?」
「あ、はい。装備を一部新調しまして……」
今回、ハノンはいつも着込んでいた硬化魔術付与されたをローブを、マントに加工してもらっている。
そのせいで、見た目はいままでのハノンとあまり変わらないように見えるが、装備自体は大きく変わっているんだな。
「実は、筋力が上がったので、着れる防具が増えまして……その、布鎧を買ったんです……!」
「あ~、まぁローブよりは確かに頑丈だよな」
「最初のハノンくん、盾だけ良い物買ってて、見た目はローブ姿だったから、凄く見てる側の不安を煽ってたのよね~」
「あ、あはは……」
布鎧は、前衛職の冒険者なら最低限身に着けておきたい装備だ。幾重にも重ねた布を特殊な加工で固めて、軽く頑丈なものにしたものだな。
最初はぺらっぺらなローブに硬化魔術を付与して頑丈にした装備を選ぶしかなかったんだが、ハノンの筋力が上がった事で、ようやく最低に鎧と呼べるものを装備できるようになった。だから、これを機に遂に手を出すことにした訳だ。
で、最初に来ていたローブは思い出もあるってんで、そのままマントに加工してもらった。
「布鎧かぁ。俺も最初はそれしか買う金なくて、かなり苦労したんだよな……。ほら、俺って両手剣使うからさ、防具は堅ければ硬いほどいいんだよ」
「確かに……取り回しが大変そうですね、その武器」
「あ、ナローさん! あのカーブの少し先で見えてる木、あるでしょ? あそこで一回休憩するのはどうですか~?」
「そうだねぇ、最初の休憩地点としては、いい感じかな?」
歩き始めてから確かに、しばらく経っている。俺ら全員にも余裕はあるが、馬の体力を少しでも温存しておきたい所でもあるからな。
無理して奥に進むのではなく、適度な所で余裕のあるうちに休むのも大切だ。この3人は、ハノンがこの段階でバテ始めると思ってたみたいだしな。
『んじゃ、ちょっと見てくるわ』
「ありがとうございますヴォルさん。皆さん、ヴォルさんが危険が無いか見てくるそうなので、安全だったらそこを休憩地点にしましょうか」
「OK。助かるよ」
一人先行し、木の付近を索敵。
結果特に問題はなかったため、俺たちはここで休憩を取る事にした。積んであった水を馬に与えつつ、交代で警護と休憩を挟む。
「で、どんな装備なんだ? 見せてくれよ」
「いい、ですか? 正直、見せたかったんです」
「わかるぜ! 新しい装備は自慢したいよな!」
うんうん、装備ってのは冒険者の格を示す一番の標識だ。
良い装備を持ってる奴は、おのずとその装備を見せびらかすようにしている。それは他者に対する警告でもあり、自己顕示欲でもあるだろう。
俺だって、最初に軽銀の盾を買った日にはアルバートに殴られるまで自慢しまくったもんさ。
「えっと……こ、こんな感じ、です」
ハノンがマントの結び目を解き、はらりとはだけさせる。
自己主張の少ないハノンは、こういったお披露目に慣れてはいないのだろう。少々顔を赤らめて、はにかんでいる。
隠されていた新しい自分を、他人の目に晒す瞬間。それはハノンにとっても、共通の話題で誰かと仲良くなるチャンスだろうからな。緊張はさもありなんって事か。
「「「いやいやいやいや」」」
「ちょ、タンマ。ハノンちょっとタンマ!」
「え……?」
「え? じゃねぇよ! もっとこう、普通に見せてくんない!?」
「なんで若干エロい顔でもじもじしながらゆっくり見せるのよ? 変にドキドキしちゃうでしょ~!?」
「え、え? えろ?」
……あ~、うん、すまん。俺もハノンといる時間が長くなってきて、感覚麻痺してた。
確かに、今のこいつの動きはちょっとアレだった気がする! オリアンティがいたらやる前に指摘してた奴だ。
「いいかハノン、俺らは別にそんな事ないけど、世の中には怖~い人種がいっぱいいるんだからな!」
「あんまり誤解を招くような行動はとらないようにするんだぞ? 特に女は怖い……怖いからな……!」
「は、はい? はぁ……」
はい、すみません。
俺も改めて気を引き締めるわ。
「んじゃ、改めて……うん、薄くないか? その鎧」
「皮鎧より着付けにも時間かかんないし、需要はあるよな。けど、お前盾持ちだろ? 防御面の不安とかないのか?」
「あ、これも一応、硬化が付与されてまして……」
「ハノンくんって、惜しげもなくマジックアイテム買ってるのねぇ……」
そりゃあ、ハノンはできる装備も限られるし、元々の実力も高くなかったからな。
足りない部分は装備で補う。これは俺とハノンが組んだ時からの共通認識だ。今更そこを惜しむ事はないさ。
ちなみに、今ハノンが装備してる布鎧は、胸や腰周り、関節など、盾では補い辛い場所を重点的に固めているパーツ型の鎧だ。どちらかというと、戦士や盾持ちより、盗賊や軽戦士が着込むような鎧だな。
ぶっちゃけ、今のハノンの筋力で着れる鎧はここまでだ。鎧を着れるようになっただけでも成長なんだが、確かに前衛としては心もとなさがある。
だから今回も、ハノンの装備は魔術が付与されたものだ。硬化だけでなく、別の効果もついてる高級品だぜ。
《武器リスト》
・解体用ナイフ
《防具リスト》
・軽銀の盾 【衝撃吸収(小)】【軽量化】【自動修復(小)】
・テイマーサークレット 【契約獣強化】
・冒険者のブーツ 【疲労軽減(小)】
・魔術付与済みローブ 【衝撃吸収(小)】
↓
new:魔術付与済み布鎧 【衝撃吸収(小)】【斬撃耐性(小)】【自動修復(小)】
new:テイマーリング(腕)【契約獣行動範囲上昇】
《携帯品リスト》
・異次元バッグ(中)
・毒消し×2
・ヒールポーション×2
・罠解除ツール
・ベルトポーチ
・冒険者セット
・野宿セット
・調理器具
・食器セット
・ランタン&油、火口箱
今回俺たちが揃えたのが、この2つ。
防御面を強化した布鎧。そして、俺の行動範囲を広げてくれる腕輪、テイマーリングだな。
これは魔力の流し方でオンオフが効き、それによって俺がハノンと離れていられる範囲が大きく変わるんだ。
この腕輪の効果がある限り、距離にしてみれば竜の息吹亭からスラムの奥にまで進む事もできる程の距離が確保できる。今まではハノンが俺の所に強制転移されてしまうネックがあったが、これのおかげで俺だけが先行偵察できるようになったぞ。
「……といった具合の装備、ですね」
「いやぁ、なんというか……」
「ただの金属鎧で頑張ってる俺って……」
「ハノンくん、装備にお金かけすぎよぉ」
「あ、あはは……」
まぁ、ただで宿泊できたり掃除で金稼いだりしてたからな。
かなり奮発したし、これがもうハノンの完成形と言って良いかもしれねぇな。
『ハノン、そろそろ警護の見回り行くぞ』
「あ、はいっ。じゃあ皆さん、休んでてください。見回りしてきますので、その後交代という事で」
「ありがとうね~、頼んだわよっ」
「その角兎がいれば安定して見回りできるよなぁ。ハノン強いわ……」
信頼には応えないとな。
さて、何かこっちに有益なものが見つかればいいんだが……。




