第97話:【番外編】フロキアの冒険2(フロキア視点)
どもどもべべでございます!
遂に金貨級がどしどし登場! さぁ、登場人物が膨らんできましたよ~
という訳でご投稿! どうぞ、お楽しみあれー!
それにしても、金貨級が2人か。
新発見のダンジョンに金貨級が関わるというのは、普通の事なんだろうか?
グランアインが抱えているダンジョンは、長らく最初にハノンくんと向かったダンジョンの一つだった。それは、私が冒険者として活動するよりもずっと前から使われている。
故に、そのダンジョンをどの階級が攻略したかなんてのは、あまり語られていない。今回が異例かどうかの判断はできないな。
そう考えている内に、ギルドマスターの部屋に到着した。ギルドマスターに会うのは頻繁になってきたものの、ここに来るのはあまり慣れないな。
「……失礼します。フロキアです」
『おほんっ、入りたまえ~?』
『……私の真似のつもりか。くだらん……フロキア青年、気にせず入りたまえ』
ノックをすると、中から声がかかる。
……最初に聞こえた、高く飄々とした声。話に出ていた金貨級か。
「失礼します」
とりあえず、入室。一礼し、集っていた者を視認する。
そこにいる面々を見て、私は硬直した。
「やほ、今回はよろしくね~」
「フロキア青年、彼を見て金貨級が全てこうだとは思わないように頼む」
「本当に、それよねぇ」
「ぶ~、なんだよ~」
まずはギルドマスター、アルバート氏。
瞳の奥底を眼鏡で隠しつつ、我々冒険者を操る敏腕エルフだ。
彼の交渉術は優れてこそいるが、とても真似しようとは思えない。一歩間違えば即座に信用を失うであろう手札を平気で並べて、かつ自分の地位を安定させているのだから人間離れした存在だ。
そして、この場にいるのはあと2人。
1人は、ゴブリン大討伐で一度だけ見た事のある女性。
使い込まれた銀杖に、首にかけられた聖印。飾り気こそ無いが、質感の良い司祭服……装備からして、おそらく神官だろう。
ウェーブ状の長い髪は淡い栗色で、片方の目元を隠している。そこから僅かに見える痕跡を見るに、大きな傷跡を隠しているのだろう。
だが、その隠された部分を含めても、彼女が見目麗しいという事実に変わりはない。それ程に整った顔立ちだった。
……まぁ、聖職者と言うにはいささか、けしからん体型をしていると思うが。ゆったりとして露出の少ない服なのに、胸の下をベルトで固定しているせいで双丘が目立って仕方ない。オリアンティ以上かもしれんな。
そして、もう1人。……私が固まった原因だ。
彼は、パッと見た限りただの少年に見えるだろう。
青みがかった跳ねの少ない頭髪。少々生意気そうだが、端正な可愛らしい顔立ち。鼻の頭には絆創膏が貼られており、やんちゃなイメージを定着させている。
腰には二本の短剣が下げられており、彼が軽戦士か斥侯かという目測を立てられる。だが、動きを阻害しない部分のみを防具で固めただけで、ほとんど地肌と変わりない布面積の防具を見る限り、明かに軽戦士だと想定できることだろう。
やや褐色に見える肌は、日焼けをしているからだ。彼がせわし気に動く度に、装備に隠れた地肌が白い部分を覗かせている。実に健康的なバランスだった。
「……【疾風のミアレス】……【時告げのアンナ】……」
「お、ちゃんと知ってるね。そう僕こそが疾風のミアレス! よろしくねっ、フロキアくん!」
「あらあら、少し恥ずかしい。改めて、アンナです。よろしくお願いしますね?」
幼少の頃より憧れていた冒険者。疾風のミアレス。
私に、冒険者としての道を進ませた根幹が、今目の前にいる。
それにより、私は二の句が継げなくなってしまっていた。
◆ ◆ ◆
「う~ん、ごめん! 君の事覚えてないっ」
ギルドマスターの部屋に設置されたソファーに座りつつ、ミアレス氏は両の手を私に合わせて謝罪した。
私が、幼少時代に魔物に襲われた所を彼に救われたという話をした時の反応だ。
「それこそ、森の中で襲われた迷子なんて結構助けてきたからさ~。ピンポイントで覚えてらんないよね? んははっ」
「いえ、そうだとは思っていましたので。それよりも、中々に軽い性格だった事に驚いてます」
「あ~、まぁ依頼の時とか人が集まる時とかには、このテンション隠せって言われてるんだよね~。アルバートに」
股を開いてスペースを占領しつつ、紅茶をズビズビ啜るミアレス氏を見つつ、私は苦笑した。
確かに、ギルドマスターならば金貨級のイメージダウンに繋がると言いそうだ。
「お前のノリは、金貨級の品位を下げるからな。黙っておけばまだ良いのだが……」
「それは聞き飽きたって~。それに、僕なんかよりヴォルフガングの方が態度的に問題あったと思うけど~?」
思った通りの感想だね。
「……コホン。じゃあフロキアさんには悪いけど、改めて自己紹介させてもらうわね? やっぱり、自分ですることに意義があると思うから」
「おっとと、そうだね~」
二人の私語を窘めるように、アンナ氏が話を切り出す。
話を切るタイミングが中々強引だな。まぁこのくらいじゃないと、ミアレス氏のテンションに流されるのだろう。
「では、私から。名前はアンナと申します。色んな方からは、時告げのアンナと呼ばれていますね。……一応、司祭の地位を頂いているけれど、一神官と変わらない態度で接してくれる事を願います」
これは驚いた。彼女は上級職まで上り詰めていたのか。
司祭は、神官を一定のレベルまで上げた者のみが取得できる上級職だ。神から直接啓示を得られ、支援も回復も強力な奇跡を使えるんだとか。
流石は金貨級だと言った所だな。
「今回のダンジョンでは、アンデット系が多かったと聞いたからな。私の方から彼女に依頼を持ちかけたんだ」
「えぇ、ターンアンデットなら任せて頂戴?」
「頼りにしています」
柔和に微笑んではいても、頼もしさは損なわれていない。むしろ底が見えない分、不気味な迫力がある。
……あまり彼女に逆らっては、いけない気がするな。
「じゃあ次! 次は僕ね!」
続いて手を伸ばすのはミアレス氏。輝く瞳が何とも愛らしい。
「僕はミアレス! ご覧の通り軽戦士っ。更に双剣士も取得してる超凄い冒険者! めっちゃ速いから期待してて~?」
「凄いな……上級職持ちが2人か」
双剣士もまた上級職だ。二本の剣を使って激しい連撃を繰り出すことを主とした戦法を取る事ができる者にのみ取得できる、手数と速さを突き詰めた技能だな。
露出過多な装備も、動きを阻害しないためのものだろう。どれだけの速さで動けるのか……一目見てみたい。
「ちなみに今年で37歳! 既婚者で6人の子持ちで~す! これ奥さん。カワイイでしょ~」
……いやまぁ、わたしより年上だという事は理解していたが……改めて聞くと凄いインパクトだな。
念写用の水晶を取り出されたので中を見てみると、どう見ても10歳程度にしか見えない少年少女が肩を組んで子供と戯れている。……これが夫婦とは。
「ミアレスは【フィルボ】だからな。種族的に幼く見えるのだよ」
「僕らからしてみたら、君たちが育ちすぎなんだけどね~」
フィルボ。数ある種族の中で、成人しても我々の幼少期程までしか見た目が変化しない種族だ。
非常に楽観的で、娯楽を好み、絆が深いらしい。詳しくはわからないが、まぁ……私の記憶と今の彼が、さして変わらない姿をしている証拠だな。
「という訳で、よろしく~」
「よろしくお願いします」
「フロキア青年。今回は彼等に加え、君を含めた3人でダンジョンに潜ってもらう。出来る限り奥まで潜って、無理そうなら撤退という形だな」
ふむ、なるほどね。
しかし……
「……私は、足を引っ張るような気がするのですが」
「つまり、君が潜れる範囲が危険地帯までのボーダーという事だ」
なるほど、私は目盛り代わりという訳だ。
舐められたものだな……だが、この面子ではそれが事実だ。せいぜい、見積もりが甘かったと思われるよう努力しよう。
かくして、私は金貨級の中に紛れて活動することになった。
憧れの冒険者の実力……是非とも拝んで、技量を盗ませてもらうとしよう。




