第92話:オリィの離脱
どもどもべべでございます!
間が空いて申し訳ない!
これからしっかり機嫌を守っていきたいと思います!
という訳でご投稿! どうぞお楽しみあれー!
どうやら、オリアンティの実家から一報が届いたらしい。
すぐに帰ってくるように、端的に言うとそういう内容の手紙だったそうだ。
オリアンティの家庭は、以前聞いたように冒険家業を許すくらいには放任主義だ。その家族から帰省命令が来たんだから、強制力は相当なもんなんだろう。
少なくとも、オリアンティがハノンよりも帰省を優先するくらいには。
「ハノンさんの期待を裏切ってしまうのは、とても心苦しいのですが……」
「い、いえ。そういう事なら仕方ないですよ」
「フス……」
まぁ、こればかりはしょうがないと割り切ろう。ハノンの訓練を倍にすれば、出発までに調整も間に合うだろうからな。
「……なんか、寒気が……」
『気のせいじゃないから安心しろ』
「安心できない……!」
しかし、オリアンティは未だに納得が出来ていないようだった。
元々責任感の強い女だ。ハノンを置いて行かなくてはならない事が我慢ならないんだろう。
ハノンが気にしないで、と声をかけた段階で、オリアンティは意を決したように口を開いた。
「決めましたわ」
「え、な、なんですか?」
その瞳は、赤々と燃えている。
ハノンが、青ざめたのがわかった。うん、これは完全にスイッチが入ってる顔だな。
「ワタクシがここを出るのが、準備も含めて三日後です」
「そ、そうですか……」
谷間からいつもの扇子を取り出し、スパァン! と開いたオリアンティは、そりゃあもう鬼気迫った様子だった。
これは、訓練は二倍せずとも良さそうだな。
「その三日の間に、詰め込めるだけの魔法技術を貴方に叩き込んであげますわ! 覚悟はよろしくて!?」
「すみません、できれば穏便に事を進めていただきたいのですが……!」
「いいえ! 今の貴方を単独で行動させるのは、ワタクシの矜持が許しません!」
「フロキアさんに言った事と真逆なんですが!?」
『ハノン、諦めろ。むしろ俺も魔法訓練したいからどんどんしごかれろ』
「ヴォルさんまで……!?」
もはや、ハノンに逃げ場はない。オリアンティの背後には、炎が燃え盛っている。
そのままハノンの頭をガシッと掴み、ずるずると冒険者ギルドに向けて歩き始めた。
「さぁ、時間が惜しいですわ。今すぐ訓練を始めますわよ!」
「あ、あ、オリィさん、待って、あっあっ」
「そもそも、貴方の魔法は未だに威力はからきしなんですからね。この三日でしっかりとその辺を改善いたしますわよ!」
「あ、あっ……あああー……」
その後、ハノンはみっちりとオリアンティにしごかれた。
ハノンの魔法に関する改善点として、オリアンティは魔法の連射性を上昇させることを提案。威力が無いなら数を増やせばいいという観点から、しっかりとハノンにその極意を叩き込んだ訳だ。
しばらくは、真っ白になったハノンが「おそらきれい」とか呟いててヘナにめっちゃ心配されてたが、それは深く語らないでおこう。
んで、アッという間に三日後。
「良いですわね、ハノンさん! 今回の教えをしっかりと覚えておくように!」
「は、はい……」
『いやぁ、いい勉強になったなぁ』
俺らは、貸し切りの馬車に乗ったオリアンティを見送りに来ていた。
大量の荷物を詰め込み、豪奢な衣装に身を包んだオリアンティは、まさに貴族といったいで立ちである。いつものこいつも相当だが、今回は更にキラキラしてるな。
「ふぅ、まぁ今回は及第点を差し上げますわ。残りの日数は角兎が鍛えてくれるでしょうから、しっかりと調節もできるでしょう。そんじょそこらのモンスターや山賊相手なら、撃退できるはずですわ」
「あ、ありがとうございます!」
「お礼は互いに、この町で合流してからでしてよ? なので、必ず戻ってきなさい。良いですわね!」
「は、はい!」
よろしい。そう言ってオリアンティは、馬車の御者に一言「行先はアーケンラーブの町ですわ!」と声をかけた。
「それでは、ごきげんよう! 今度会ったら、魔法のテストを行いますからね!」
それだけ言って、オリアンティを乗せた馬車は出発する。
最後まで騒がしい奴だった……しかし、いざいなくなったらなったで、ぽっかりと穴が開いた気分だな。
やはり、アイツの存在はかなりのインパクトらしい。
「……行っちゃいましたね」
『だなぁ』
「……僕と、ヴォルさんと……ヘナさんだけで、冒険ですか」
『あぁ』
その時のハノンは、唇を結んでいたけれど、けして恐怖に慄いていたそれではなかった。
大きな不安と、ほんの少しの期待が混ざったその表情。未知を前に奮い立つ、1人の冒険者の顔だったと、断言できる。
初めて会った時、こいつがこんな表情ができるだなんて、想像もできなかったが……ついにここまで成長したか。
『よおし、ハノン。装備を整えて、しっかり訓練するからな!』
「は、はい!」
その期待に、俺は応えてやらんといかんな。
安心しろよハノン。お前を、しっかり鍛えぬいてやらぁ!




