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第89話:情報の化身

どもどもべべでございます!

これにて第三章はおしまい! 次からは第四章です!

次からは、ハノンくんを取り巻く状況をがらっと変えてみようかな?

せっかくパーティでふわっとした立ち位置の人がいますしね~。

そんなこんなでご投稿! どうぞ、お楽しみあれー!

 

 竜の息吹亭に一ヵ月滞在の権利という、破格の報酬を得た俺達。

 その日の夕飯は卵焼き、目玉焼き、ゆで卵、オムレツといった卵尽くし。様々な料理に舌鼓を打ち、堪能した後は風呂に入って寝るだけ……だったら良かったんだが、そうはいかない。

 今回の冒険は、俺らだけが思い出にしてハイお終いっていう訳にはいかないんだよな。


「お風呂、入りたかったな……」


『そうはいかないだろ。報告もまた冒険者の義務だからな』


 残念そうに呟くハノンは、受付までの列に並びながらため息をつく。その手には、【新種のダンジョン発見の報告】と書かれた羊皮紙の切れ端が握られていた。

 そう、ここは冒険者ギルド。今回の依頼はギルドを通した訳ではないが、それでも用事が出来てしまった為に俺達はここにいる。


『なんせ、新たに発生したダンジョンの情報だ。持って行けば情報だけでも十分な金になるし、もしかしたら探索の依頼を貰えるかもしれん。未発掘のダンジョン探索は、危険な分旨味がデカいからなぁ』


「ヴォルさん、ワクワクしてます?」


『そりゃあそうだ。冒険者の仕事ん中では、まさに花形な依頼だからな。ダンジョン開拓ってのは』


 この町に近い【グランアインのダンジョン】は、もう発生してから20年は経つダンジョンだ。当然かなりの深度まで探索されているし、傾向や対策もなされている。そこで採れる素材やアイテムも、この町には浸透したものばかりだ。

 そんな状況に新たな風を送り込むのが、新発見のダンジョンだ。数多の危険は存在するが、その向こうにはまったく新しい需要を生む財が眠っている。これを狙わない冒険者など、いないと言って良いだろう。


『俺がグランアインのダンジョンに初めて入ったのは、オゴスの旦那やベローナさん達みたいな大ベテランが探索しまくった後だったからなぁ。あん時は面白く無くてやけ酒したもんよ。それが今回、第一陣として突っ込める可能性があるってんだから……燃えるだろ?』


「あ、あはは……僕はその、そこまで……」


『……あ~、すまん、テンション上がってた。とにかく、報告までは義務って事だ』


 流石に、ハノンを連れての探索は無謀かね。自重せんとな。

 ちなみに、オリアンティとフロキア、そしてヘナは竜の息吹亭で片づけを手伝っている。

 というか、フロキアは何故か一人で風呂に入るようオリアンティに義務付けられていた。ハノンはフロキアが風呂から出るまでに報告に行ってこいだとさ。


「お待たせしました~」


「あ、はい……っ」


 受付の姉ちゃんから声がかかり、ようやく本題に入れる状況になる。 時間は夜だが、今回は魔山羊イビルゴートの撃退依頼があったからな。賑わいはあせていないらしく、少しだけ待たされたな。

 要件を書いた羊皮紙を受付に渡すと、姉ちゃんは「まぁっ」と声を上げて目を丸くしていた。うんうん、良いリアクションだ。


「少々お待ちくださいっ」


「あ、はい……」


 奥に小走りで消えて行く。絶対、アルバートん所に持って行ったな。

 俺という知り合いがいるんだから、最初からアイツに話通せばいいとも思えるだろう。けど、あんまり特別扱いしてて、ハノンが変な誤解してもされてもいかんからな。

 あくまで今回は、一介の冒険者って事で話を進めるつもりだ。


「えぇと、ハノンさん。こちらにどうぞっ」


「は、はい……」


 ……で、その後。

 結局俺達は、即座にギルド長室に呼び出されていた。

 特別扱い、嫌なんだけどな……。


「あ、あれ、ギーメイさん?」


「やほ~、俺のとこ来てって言ってたけど、こっちから来ちゃった。待たせてもらってたよ?」


 部屋には、俺ら以外にも客人がいた。

 ギーメイ。明らかに偽名なそいつは、客人用のソファに座り優雅に紅茶なんぞ飲んでやがる。

 この野郎、ハノンがギルドに向かう事をわかってたな。……いや、俺がハノンを引っ張ってきたわけだから、俺の行動を読んだんか。

 こいつ相手に、そう何か月も隠し通せんとは思ってたが……。


「いやぁ、アルバートも人が悪いよなぁ。こんな面白い状況、俺にまで黙ってるなんてさぁ」


「……どうせ貴様は、黙っていたとしても探り当てるだろう」


「ははは、なんだそれ、褒めてんのかどうかわかんないよ。ねぇ、()()()()()()()?」


「うぇ……!?」


「……フゥ」


 あ~、くそったれ。

 やっぱりこいつ、行きつきやがったな。俺がヴォルフガングその人だって事実に。

 これだから、盗賊ギルドは嫌なんだ。


「え、えと、その……なん、なに……!」


「あっはは。ハノンくんのリアクションって飽きないよね」


「……今回は、貴様も用件があってここにいたのだろう。悪戯をしている場合か」


「わかってるって~。でも、その前に改めて自己紹介しとかないと、ハノンくんに怖がられちゃうかなって思ってさ」


 ギーメイはけらけらと笑った後、ソファから立ち上がり俺らに向き合った。

 ふとした事で忘れてしまいそうな2.5枚目顔に、一杯の悪戯な笑み。

 覇気もないし気配も凡庸なくせに、何故か一歩下がりたくなるような不気味な感覚。

 それはまるで、こうして相対しているだけで、自分の情報全てを見透かされているかのようだ。


「改めて、名前はギーメイで通させてもらうよ。嫌ならブライアンでもマーカスでもなんでもいいさ。というわけで肩書だけを明かすよ?」


「は、はい……」


「俺って実は、グランアインの盗賊ギルドのギルドマスターなんだよね! 改めてよろしく~」


「え、えぇぇ!?」


「同時に、冒険者ギルドの金貨級冒険者でもある。先輩だから敬うように!」


「えぇぇぇ……!?」


 いや、うん、情報の開示が雑! さらっと言って良い事じゃないと思うんだがな!

 そう、こいつは俺と同じく金貨級の冒険者であると同時に、盗賊ギルドのギルドマスターだ。盗賊ギルドが冒険者に協力的な理由の一つと言っていい。

 ……ハノンにこの事を伝えると、絶対顔に出て俺の事がバレるから言わなかったんだが、時間稼ぎにしかならんかったなぁ。


「ま、そういう訳で、今後ともよろしくね。ハノンくんに……ププ、ヴォル、くぅん?」


 よし殺す。


「わ、わ、ヴォルさん、落ち着いて……!」


 ……チッ、仕方ねぇな。ハノンに感謝しろよ。

 本当だったら蹴り飛ばして泥沼に沈めてる所だぞ!


「……喧嘩を売りに来ただけなのか?」


「はは、まさか。情報の売り込みに来ただけだよ」


「そうか、ならば摘まみ出すのはその後にしてやる。……その前に、ハノン少年。新しいダンジョンというのは本当かね?」


「あ……は、はいっ」


「へぇ?」


 アルバートが舵を切った事により、ようやく話題が軌道に乗った。

 勧められるままにソファに座ったハノンは、ここ数日の依頼で体験した事をアルバートに報告する。

 ギーメイがいるのは大丈夫かと聞いていた辺り、そこは成長が見て取れたな。にこやかに金貨数枚をアルバートに渡して居座っているギーメイを見て、少し引いていたが。


「……ふむ、アンデット系の敵が湧くタイプのダンジョンか」


「凄いじゃん? グールの麻痺爪とか採れればかなり儲け出るよ。立地的にもグランアインが独占できるでしょこれ」


「そうだな。早急に冒険者を派遣して、危険度の調査や素材の価値を調べてもらう必要がある。……何か、新しい手掛かりが見つかるやもしれんしな」


 アルバートはそこまで言って、眼鏡をきらりと光らせる。


「ハノン少年。この情報は我々にとって値千金だ。君には後日、この価値に見合った報酬を支払おう」


「あ……その、僕だけじゃなくて、皆さんに……」


「パーティ単位での報酬か。わかった」


 纏まった金が手に入るのはありがたい。

 ハノンの訓練や、この街で活動するにあたっての目標を考えると、金はいくらあっても良いからな。


「報告は、以上かね?」


「は、はいっ」


「ふむ」


「じゃあ、次俺ね?」


 ある程度の報告が上がった所で、ギーメイが割り込んで来た。こいつからの売り込みがどのようなものかは、かなり怖いもんがある。

 俺の正体も含めて、どこまで握っているのやら……


「ハノンくんの故郷だけどさ、アルバートに教えていい?」


 あ、ほぼ全部知られてんのな。

 ほんと、どうやったら情報がそんなに入ってくるんだ。不気味な奴だわ本当に。

 俺の正体とかならともかく、ハノンの個人情報なんてこの街に落ちてるはずがない。つまり、こいつは別の地方のコネまで使って調べ上げたんだろう。


「え、えと、それは、その……はい」


『おい、良いのか?』


「アルバートさんには、大変お世話になってるので……」


 ……お前が良いなら、良いんだけどよ。


「ありがとね~。それじゃあ、君の故郷、サノストに関してなんだけどさ」


「サノストか。それはまた、ハノン少年の判断能力が裏付けされたな。……君がここに来た理由も納得した」


「は、はい……」


 流石に、アルバートはサノストの状況を把握しているか。

 その上で、ハノンがここにいる事を受け入れる姿勢なのは、まぁ安心だな。


「他には漏らしてないから安心してね。……で、さ」


 言葉を区切り、笑みを深めるギーメイを、ハノンが喉を鳴らして見つめる。

 全てを知られている。そんな状態で相対している怪人の口から、何がもたらされるのかという緊張が見て取れる。

 ……それは、驚きと共に、ハノンの未来を切り開く言葉だった。


「隣国からの移民が、労働力になってるっていう町があるんだけど……君、この情報にいくら出す?」

 

 同時に、今後の波乱にも繋がる情報であろうことは、容易に想像がついた。

 

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― 新着の感想 ―
[良い点] ああああああああああ! んもう! ギーメイみたいなキャラ大好物!!! んもう! あとオリィさんがフロキアさんの危うさを見張り始めてて笑うww
[一言] な、なんだってー!(MMR) ギーメイ、お前そこまでの重要キャラだったのか(驚嘆)。 そしてまた引きがお上手ですね!! これは四章も楽しみだぜ!!
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