第88話:それから
どもどもべべでございます!
この次のお話しで、第三章は終了となりますね~。
打開策としては、急な感じだったかな?
とにもかくにもご投稿! どうぞ、お楽しみあれー!
大蚯蚓の見境無いトンネル開通工事により、崩落の危険性が生まれた山ドードー達の住まう高層住居。という名の岩壁。
この巣穴からの撤退を余儀なくされた事により、山ドードーの群れは路頭に迷う事となった。
無理に生活すれば、おそらく雛が生まれ、子育ての真っ最中に巣穴は崩れるだろう。されど、山ドードーだけでの卵の運搬はかなりの労力になり、結果として生き残れない個体が確実に生まれる。
群れの絶対数が減ってしまうのは、人間側からすれば避けたい事だ。故に、今回のような保護活動には率先して手を貸すべきだろう。
しかし、問題は保護の度合いだ。
こいつらの卵は滋養こそあり味も良い。だが家畜として育てた場合、前にも言った通り格段に味が落ちる。
故に、あまりきっちり安全確保してもダメなのだ。
この群れを保護し、かつ卵の味を保つための工程が、これだ。
「自然界と変わらない状況……食物連鎖を意識させつつ、安全を保障する……ですか」
「つまり、生贄の用意という事か。ヴォルは中々にあくどい面があるな」
ハノンが吐息と共に小さく呟いた言葉を、フロキアがムスッとした顔で補填する。そのまま憤りを俺に対してぶつけつつ、グイッと熱い紅茶を煽った。
「ワタクシとしては、中々に理にかなった取引だと思いますわよ? まさに人間が考えそうな事ですわね。むしろ今までこの手法が取られなかった事に驚きですわ」
「……兎さん……怖い……」
オリアンティが紅茶を飲みつつ、付け合わせのスコーンに手を伸ばす。
いつもならば、様々な料理の濃密な香りで充満するスペースは、紅茶の香りにより優雅な空間に様変わりしていた。
そんな中でも、ヘナはハノンの背中に隠れるようにくっついている。
『あの状況で考えた手としちゃ、中々良かったと思うんだがな。賛否両論だな、やっぱ』
「あはは……まぁ、僕も少し引きます。はい」
清掃の行き届いた木造テーブルに乗った俺が鼻を鳴らすと、ハノンが苦笑いで速攻に否定に走ってきた。
お前そんな事言って、うまくいけば卵焼きずっと食べれるってワクワクしてたじゃねぇか。
「なるほどねぇ。帰って来るなり旦那を引っ張ってったのは、そんな理由があったのかい」
俺らの座る席には、もう一人の人物が肘をついて話に聞き入っている。
もはやハノンにとっても、すっかりお袋的立ち位置になりつつある女性。ベローナさんだ。
そう、つまるところ、ここは【竜の息吹亭】。俺達はあの後、山ドードーの一件を解決すべく即座に山を降りた訳だ。
今は、町に戻ってから一晩が経った後だ。ひとまずは手に入れた山ドードーの卵を提供し、依頼は成功という結果に終わっている。異次元バッグ5個分の卵だ。しばらくは卵不足って自体にはならんだろうな。
「しかし、よく考えるもんだねぇ」
立ち上がったベローナさんは、紅茶のお代わりを俺らのカップに注いでいく。貴族であるオリアンティが不満を漏らさない辺り、紅茶の味は合格って感じなんだろうな。俺には等しくどれも同じ様な茶葉だが。
「あの人の従魔の巣穴に、山ドードーみんな住まわせるなんてさ。普通は考えない事だろう?」
「ですよねぇ……」
「そうだな」
「そうですわねぇ」
「……(こくこく)」
なんだよ、そんなにおかしい事か?
『良いと思うんだけどなぁ……山ドードー達だって、【竜の巣穴】に住めるのはかなりの安全保障だと思うぜ?』
「いやいや。竜……ドラゴンと同棲って、かなりのストレスだと、僕は思いますよ?」
「おまけに、賃金が卵だからな。山ドードー達も、必死になって味を維持しそうではあるな」
俺が考えた手段。
それは山ドードー達を竜の巣穴に住まわせるというものだった。
竜の巣穴に入ってくるような無鉄砲な外敵は、余程の馬鹿しか存在しない。仮にいたとしても、竜自身が返り討ちにしてくれる。結果として、山ドードー達は安全に暮らす事ができるという単純な理論だ。
この近所に竜なんているのかって? いるじゃねぇか。
俺らに毎回、自分の尻尾を提供してくれる、食わせ好きの竜がな。
『少なくともこの街では、オゴスの旦那にしかできない事だったからな』
美食竜。オゴスの旦那が従魔契約を結んでいるその竜は、グランアインの町の外に巣穴を作って待機している。竜が町に住むのは狭すぎるし、そもそも怖がる住民もいるしな。
その巣穴に山ドードーを移住させるよう、帰った俺達は旦那に相談したのである。
もちろん、無償ではない。代わりに、山ドードーには宿泊代として、美味しい卵を美食竜に提供する協定を結んでもらう運びにした。
美味しい卵を囮にして逃げる生態を持つ山ドードー達からしてみれば、卵のクオリティで美食竜を満足させればいいだけである。しかし、美食竜が満足しない味では、どうなるかわからないと思うのではなかろうか。
適度なストレスと安全の両立。この状況は、自然界の食物連鎖と何ら変わらないはずだと、俺は思った訳だ。
『お前もそう思うだろ? 独身貴族』
「くえぇ~!!」
「フスッ? ンブッ」
「……まぁ、その山ドードーもそりゃあ怒るな」
俺の顔面に、羽根ビンタが飛んでくる。痛くはないものの、明かな苦情が感じられた。渾身の苦情だ。甘んじて受け入れよう。
独身貴族は、山ドードー達のリーダーとして、人間とのパイプになるべく竜の息吹亭に厄介になる事になった。
こいつは群れの中で一番頭が良いし、人間の言葉もばっちり理解できていた。という訳で、群れの状況を報告したりする役割を担う事になっている。
「しかし、オゴス氏はよく承諾しましたわね。その山ドードーを従魔にするなんて」
「そうだな。引退されたとはいえ、オゴス殿の実力で山ドードーは、その……従魔の枠を裂くには弱い、な」
「くえ~!」
うはは、抗議してら。
山ドードーとの協定を結ぶにあたって、オゴスの旦那は独身貴族を自分の従魔に迎え入れる事を提案した。
独身貴族と念話を可能にし、群れの情報を正確に得るためだ。
これは相当思い切った選択だと思う。従魔師にとって、契約する生物はそのまま強さに直結するからな。
いくらオゴスの旦那が冒険者を引退しているとはいえ、美食竜と契約するような実力者が山ドードーと契約するなんて、前代未聞だと言えるだろう。
「はっはっは! あの人は食に対して貪欲だからねぇ。食材が手に入るようになるんなら、喜んで山ドードーとだって契約するさ。そもそも強さで従魔を選んでなかったから、契約ができる枠にも余裕があったみたいだしねぇ」
「冒険者としては、腕っぷしだけで活躍してこられたんですのね」
「貴女達が気にしないのならば……私からは何も言わないさ」
「あぁ、卵もたっぷり手に入れてもらったし、今後の食材供給も当てができた。アンタらへの依頼は文句なしの結果さね」
それに、と、ベローナさんがハノンを見る。
いや、ハノンというよりは、その後ろにいるヘナを見ているみたいだな。
「アタシの予想以上に、娘とも馴染んでくれたみたいだしねぇ」
「……!」
ヘナの髪が逆立った。
……恥ずかしいって事で、良いんだよな?
「……お母さん……や、やめ……」
「あ、えと……はい。ヘナさんは、大切な友達、です」
「っ…………ぁぅ……!」
ハノンの言葉に、ヘナの髪が波打つ。
そのまま悶えたあと、ヘナは掌モードになってしまった。余程照れ臭かったらしいな。
「はっはっは! 良いじゃないかい。今後も娘と仲良くしとくれよ!」
「オォーッホッホッホ! 言われずとも、2人ともみっちり鍛えてさしあげますわ!」
ベローナさんとオリアンティの、高笑いが響く。
ハノンがヘナを持ち上げて微笑み、ヘナの髪が波打つ。
フロキアが肩をすくめ、紅茶を一口飲んだ。
随分とまぁ紆余曲折あったお使いだったが、これでうまいこと丸く収まったかね。
『……ま、今日は美味いもんを期待しようかねぇ』
「ふふ。そう、ですね。ヘナさん、これからよろしくお願いしますね?」
「……は、はい……」
こうして俺達は、依頼を達成し一月分の宿泊期間を手に入れた。
ヘナという、ハノンと相性バッチリの仲間もできたし、今後の冒険者活動の幅も広がる事だろう。
しばらくは、竜の息吹亭を拠点に冒険者活動ができそうだし、その期間を利用してハノン達を鍛えて行こうじゃないか。
(……まぁ、ギーメイの奴の話によっては、どうなるかわからんがな)
あいつ、ハノンに関する情報を握ったみたいだしな。
オゴスの旦那が帰ってきて、山ドードー達に問題がないのなら、聞きに行こうかね。
けどまぁ、ひとまずは英気を養おうじゃないか。冒険の終わりってのは、騒いでなんぼだからな!




