第87話:洞窟の中で
どもどもべべでございます!
さて、そろそろ3章も終わりに近づいてまいりました。
1章2章が戦闘重視な分、3章はのんびりした感じに終わろうかなっと。
毎度毎度波乱万丈が冒険ではありませんからね~。
という訳でご投稿! どうぞ、お楽しみあれー!
山ドードーの悲鳴は、最初に俺らが通っていた方角から聞こえてきた。つまりは、独身貴族を紹介してくれたあの夫婦の声である可能性が高い。急いで現場に駆け付ける。
一体何があったやら……山ドードーがいくら進化してたって言っても、強さは見た感じ過去の記憶と大差ないように見えた。外敵の侵攻だった場合、まずいかもわからんな。
「フシッ!」
「くえっ? くえ~!」
最初にロープをかけた巣穴に向けて走っていたら、独身貴族にすんなり追いつくことが出来た。やはり遅いな、山ドードー。
何で来たんやって感じに喚いているが、それを聞いてる暇はないし、むしろお前がなんで行くんだよって話になる。無視だ無視。
「くえ~!」
独身貴族の頭上を飛び越え先頭を奪うと、プライドでも傷ついたのかやたらと喚き散らしてきた。お前、本当にオリアンティとそっくりな!
しかし、お前の後ろを付いて行くより、俺単体が急いだ方が速いんだ。すまんな!
「「くえぇ~!?」」
また夫婦の悲鳴が聞こえる。巣穴は目の前だ。
一気に距離を稼ぐべく、【身体強化】を使って水平に跳躍。夫婦の巣穴に到達した。
そこに居たのは……
『うじゅる』
「「くえぇ~!」」
肌色の、長い体。
どこが顔かもわからぬ見た目。
しかしどこか、愛嬌を感じさせる動き。
地中の整備士と名高い全生物の友。大蚯蚓がそこにいた。
「……フスゥ」
ってなんだよ、大蚯蚓かよ。
夫婦はヤケに慌てて、卵の前に立ちふさがり威嚇しているが、何のことはない。
こいつはただの、でかい蚯蚓でしかない存在だからな。土や岩しか食わんし、なんなら食ったのを綺麗に栄養豊富にして排泄してくれる掃除屋だ。
大蚯蚓食いがここを放棄したのは、かなり前みたいだな。外敵がいなくなったことで、大蚯蚓が戻ってきたんだろう。
夫婦は、卵を狙われていると勘違いしているんだろうな。しかし、そのつもりのない大蚯蚓は、顔らしき部分を夫婦に向けてきょとんと首を傾げている。
これは、誤解を解かんといかんなぁ。
「フス、フス」
「くえ!?」
「くえっ、くえっ!」
「フシ。フスゥ」
「「くえぇ?」」
なるほど、来た時にはないルートから大蚯蚓が生えている。大蚯蚓が掘り進んだ穴が、夫婦の巣穴にたまたま当たっちまったのか。
大蚯蚓はその大きさから、岸壁だろうと食いながら掘り進む事が出来る。ある種脅威かもしれんが、本人はまったく戦う意思はない。下手に刺激しなければ、勝手に出て行ってくれるはずだ。
まぁ、大蚯蚓が原因で山が崩れたりすることもあるんだが、そこは自然の摂理だし、その崩れた部分も栄養豊富な土壌になるからなんとも言えんな。
「フス、フス。フシッシ!」
「くえ~……」
「くえぇ。くえ~」
「フス、フス~」
「「くえ~」」
ぐねぐねは、石を、ガジガジ。
卵、ドードー、食べる、ないない。
そうジェスチャーで説明すれば、夫婦は胸を撫でおろしていた。どうやら通じたらしい。
大蚯蚓も、軽く頭の近くに前足を振っていたら方向転換し、違う方角を食って出て行こうとしている。双方丸く収まったようで何よりだ。
「くえぇ~!」
「「くえ?」」
「……くえ?」
おぉ、独身貴族も来たか。
戦闘とかにはならんかった。問題はないぞ~。
「……くえ~ぇ!」
「フシッ?」
え、何で俺怒られてんの?
羽根でテシテシやられても痛くないんだが……。
「……兎、さん……?」
「フス」
俺らがそんなやりとりしてる内に、何でか外からヘナが顔を出した。
ふむ、外壁を伝ってきたのか。巣穴までの道は、掌モードで俺が運ばないと通れないからな。
ハノン達に伝えに行くかと思ってたんだが、自分で状況を確認するのを優先したんだな。冷静じゃないか。
「フシ、フシ」
「……あぁ……大蚯蚓……」
「フス」
ヘナもまた、この状況を見て色々と察したらしい。納得したように頷いていた。
そう、この場面に関しては、何も問題はない。あるとすれば……
「……大丈、夫……かな。この崖……」
「フスゥ」
そうだよなぁ。
問題があるのは、これから先の事だ。
「「くえ?」」
山ドードーの視線が、俺たちに集中する。
あ~、その、な? お前らには悪いんだが、な。
「……。あの、ね、みんな」
「くえ」
「……この巣……その、引っ越ししないと……だめ、かも」
「「…………」」
うん、そうなんだよな。
この巣、というか崖……近々崩落すると思うんだよな。
ヘナの言葉をちゃんと理解している山ドードー達は、しばらくの間硬直していた。
「……くえぇ」
「くえぇ!? くえ~!」
あぁ、奥さんが倒れた。
まるで、高い借金して買った夢のマイホームが、手ひどい災害でおじゃんになった時のリアクションだな……。
◆ ◆ ◆
「つまるところ、このままでは山ドードー達の子供たちが生まれ、成長する前に、この岸壁は崩落するという訳だな」
「……はい……」
「くえぇ……」
それから。
俺らは、山ドードーを代表して独身貴族を連れ、ハノン達の元に戻っていた。
卵をくれた山ドードー達の窮地を前に、パーティー間会議が必要だろうと判断した結果だ。
「その、大蚯蚓が崖を食べちゃって、脆くなってくから、ですね?」
「そうですわね。それだけじゃなく、大蚯蚓が出てきたという事は、遠からず大蚯蚓食いが現れるはずですわ。そうなると……」
「余計に穴が広がり、崩壊が早まるだろうな」
「くえ~! くえっくえっ!」
落ち着けよ独身貴族。
この面子は誰一人として、山ドードー達を放っておくような事はしないだろうさ。
とはいえ、本当にこの状況はいただけない。
山ドードー達の巣穴は、元々開けられた穴を使っている。中には通路も通っており、元からスカスカな訳だ。
つまり、これ以上穴が増える状況に陥ると、遠からずこの岸壁自体が崩落することになる。
「うぅん……どうしましょう」
「どうするもなにも、山ドードー達を避難させるしかありませんわ」
「だが、雛を育てられる環境を今から見つけるのは困難だぞ」
「フス」
元々、山ドードーは斜面や岩陰などに巣を作る。こいつらだけなら、場所を移す事自体は簡単なんだが……既に卵産んでるんだよなぁ、こいつら。
安全な場所で生活してたこいつらにとって、いざ卵産んで子育てって時に外に放り出されるのは、母子ともにストレスヤバいだろうな。
「くえ! くえっ!」
「フス……」
こらこら、つつくな独身貴族。
今考えてるから。どうすりゃいいか考えてるから!
「……今産んだ卵は、どれくらいあるんだ?」
「えと……規模は、大体……20匹、くらい……」
「山ドードーは結構卵産みますから、1ペアに卵5個から10個はあるでしょうね」
そうだな、大体そんくらいだったわ。
今からその規模の生活空間を見つけるのは、流石に無理があるんだよなぁ……。
「ダンジョンに落ちて、苦労して……」
「ようやく卵を見つけたと思ったら……」
「山ドードーの危機的状況を解決しないといけなくなる、と……」
「……ハプニング、だらけ」
「……ヴォルさんがいるからかなぁ……」
「フス!?」
なんで!?
運が悪いからってか! ふざけんな畜生!
それ言ったらハノンもだからな。お前も大概不運だからな!?
「くえぇ……」
「……フス」
あ~、そんな落ち込むなよ独身貴族。
何とかなるから、な? お前らには、今後も卵で助けられることになんだから。数を減らすような事はしないって。
山ドードーの卵は、普通の鶏卵よりも需要があるんだし……ん?
卵に、需要が……?
『……そっか』
「ヴォルさん?」
そうだよ。
卵に需要があるんなら、それを活かせばいいじゃないか。
久しぶりに湧いたナイスアイディアに、自然と頬が緩んでしまう。
『ハノン、ちょっといいか!』
「は、はいっ」
俺のアイディアを、ハノンが皆に報告する。
フロキア辺りが渋ったが、他に妥当な手も無い。
結果、俺の案が通る事になったのであった。




