第85話:クライミング
どもどもべべでございます!
今年も皆さん、本当にありがとうございました!
また来ねんも、よろしくお願いいたします!
という訳でご投稿! どうぞ、お楽しみあれー!
岸壁は、ほぼ垂直と言っていい角度だった。
どうやったら、飛べない山ドードーがあの高さに巣を作れるのか。正直言って、努力の方向性を間違えていると言わざるをえない。
まぁ、外敵から身を守るという意味合いでは、有りだとは思うんだけどなぁ。……あれだ、お前ら飛べないんだけど、雛とか巣立ちの時にアイキャンフライしちゃわないか?
「ヴォルさん、準備できました」
『おぅ、ありがとうよ』
俺の腰はハノンの手に握られたロープに繋がっており、その首元にはベローナさんから預かった異次元バッグが括りつけられている。つまるところ、完全装備形態ってやつだ。
俺達の取る手は、単純にして明解。俺とヘナが崖を登ってロープを通し、そこから体力に自信のあるフロキアがロープを使って登って作業するというものだ。
オリアンティとハノンは下で待機。モンスターが来た時に備えての見張りという役割だな。ハノンもヘナの代わりにいつもの盾を装備し、襲撃に備えての防備を整えている。
「良い事? 貴方達の役割はあくまでロープを渡すことですからね。無理はしない事ですわよ!」
「は、はい……」
「フス」
まぁ、確かに崖登りに油断は禁物だな。下手を踏んで落ちた時のダメージは、馬鹿にできたもんじゃない。
なんたってダメージが鎧を貫通してくるからな……装備が重ければ重いほど威力も高くなるが、戦士職は装備を脱いで先に進む訳にもいかん。万が一を想定しないのは愚の骨頂だが、それを警戒しすぎても前に進めないというジレンマだ。
今回はここが目的地だからその辺はあまり気にしなくても良いだろうが、そこが道中ならば、避けられない登攀というのは厄介だ。
「2人こそ、しっかり周りを警戒していて欲しい。危ない時にはすぐに避難する事。いいね?」
「は、はい」
「ふん、言われるまでもありませんわ」
『ん、じゃぁ行ってくるわ』
「はい、その、いってらっしゃいっ」
よしよし、んじゃま、やって行こうかね。
今回の崖はほぼ垂直だが、足をかけられない場所がない訳じゃない。
ましてや、俺の体は通常の人間よりかなり軽いし、小さい。多少のでっぱりでも、立派な足場になる。
「……ん」
跳んで上がれそうな場所を探してとんとんと登り始めた俺を見て、ヘナもまた進み始めた。
髪が数束広がり、触手みたいに動いて岩の出っ張りに絡ませていく。
後は、その髪を使って自分の体を持ち上げて行くだけ。……正直言って、その、なんだ……キモイな、素直に。
しかし、その実力は凄まじい。登っていくスピードは俺の速さをゆうに超えている。俺が一段一段跳んでいくのに対して、あっちは数段飛ばしだもんなぁ。
「ヘナさん! 足元を髪で隠しておきなさい!」
「っ……は、はい」
「オリィさん、フロキアさんの首が……!」
「ノーリアクションとはいえ、女性のスカートを覗いた罪は重いですわよ!」
「んがぐぐ……!」
何やってんだ、アイツら……。
というか、ヘナは髪の向こうはスカート着用なのか。意外と女の子な一面を知って、おっさんは安心したよ。
「……い、いました。山ドードー……」
「フシッ」
やがて、俺たちは山ドードーの巣があるポイントにたどり着く。
下から見てたら、穴ぼこに巣が点々と作られている感じだったが……こうして見ると、意外に広い空間なんだな。
崖に出来た穴は、かつて何かの巣だった場所らしい。かなり深く掘り進められており、モグラの巣みたいに中に繋がっているように見えた。
山ドードーがどうやってここに来れたかがわかったな。おそらくこの穴が、崖下のどこかに繋がってるんだろう。その穴を使ってこの崖まで登り、巣を作ったんだろうな。
これなら、雛がアイキャンフライすることもない。穴を隠しておけば、小さい外敵以外は警戒も最小限で済む。これは中々頭のいい山ドードーだ。
「「くえ?」」
「……フス」
「「くえー!?」」
俺と視線が合い、バタバタと羽ばたく山ドードー。
人間に見つかったのは運が無かったなぁ。
「くわ、くわー!」
「くわわー!」
「お、落ちついて……あの、生まれない卵だけ、貰いたいの……」
「くーわー?」
……え、なに、会話出来てんの?
「くわ、くわ」
「くえー」
「……それ? 赤ちゃん入ってない?」
「「くえー」」
いやいやいや……何この空間。
怖い怖い怖い。動物と触手生物が井戸端会議してるみたいで現実味が無い!
「……フス」
「あ、あの……言ってる事は、わかんない、ですよ?」
「フス? ……フゥ」
そ、そうか。よかった。
もはやヘナがどんな存在だと判断していいかわかんなくなってたぞ。ヘナがやばいというか、この山ドードーの理解力が凄いって話なんだな。
……いや、それもそれでヤバいけどな!?
「……他にも……無い? できれば……欲しい、な」
「くえー?」
「くわ、くわ」
「くわー」
え、なんかお隣さんに聞きに行くみたいな素振りしてないか。
俺が山ドードーの卵採りに行ったのって割と前の話だけど、今の山ドードーってこんなに頭良いもんなの?
「くわー」
「くわー」
「……その、兎さん……運んで、くれませんか……?」
「フ、フス」
なんか、穴を使ってお隣さんの所に行くらしい。
ヘナが掌モードになって、俺も一緒に付いて行く流れになってるみたいだ。
ち、ちょっと待っててな?
『ハノン、ハノン!?』
「……ルさーん……! ……しましたー……?」
下からハノンの声が聞こえる。いかん、焦りが念話に出ちまったか。
『と、とりあえず大声は出すな? 現状を伝える事伝えてロープは垂らしとくから、フロキアが上がるかどうかはそっちで判断してくれ!』
俺は山ドードーの対応をハノン達に伝え、フロキア用のロープを垂らしておいた。ついてくるかどうかの判断は、あいつらに任せよう。
こんだけ頭の良い奴らなら、何かしらの罠の可能性はあるか? ……いや、仮にそうだとしても、山ドードー相手に遅れは取らんと信じたい。冒険者として自信を無くすぞ。
「フス、フス」
「「くわー」」
まぁ、油断はせんでいこう。俺はヘナをバッグの上に乗せて、顎で挟むようにして付いていく。
ふむ、放棄されたモグラ穴……俺が楽々進めるサイズって所を見るに、大蚯蚓食いっつう巨大モグラの穴だな。
あいつらは基本、掘りっぱなしで大蚯蚓を探し回って動き回ってるんだよな。それをありがたく使わせてもらった訳だ。
「くえー」
「くわ、くわー」
「「くえ?」」
本当にご近所付き合い感覚なノリだなお前ら!?
おっさんが銅貨級でこの手の依頼やってた時は、もっとアホだったよな!?
「くわわーくわ」
「くえー。くわ」
「わぁ……いっぱい」
卵余ってる、独身のメスん所に来てくれたのか……卵がわんさか置いてあるな。
認めざるを得ない。俺がしばらく見ない間に、山ドードーはワンランク上の存在になっていたらしい。
すげぇよ山ドードー。俺、種族の進化を目の当たりにしたよ。




