第84話:山ドードー
どもどもべべでございます!
メリークリスマス! 子どもたちにプレゼントを配りにいくぞー!
というわけでご投稿! どうぞ、お楽しみあれー!
山ドードーは、本当に力のない種族だ。
追い詰められたらやたら強いとか、実は倒したらヤバい効果があるとか、そんな能力も断じてない。
本当に、繁殖力だけが売りの、飛べない鳥だ。
だからこいつらは、種の保存のために様々なやり方で巣を守っている。
「あったにはあったが……」
「高い、ですねぇ」
今回俺達が見つけた、山ドードーの巣穴。
それは、切り立った断崖の窪みに存在していた。
場所としては山の中腹まで登り、そこからまた1刻無いくらい登った辺りか。ヘナがここにあったという経験の元に、一番近い所を案内してもらっていたんだが……。
「……ど、どう、しましょう……もう少し、先に……前は、あったんだけど……」
どうやら、予想外の場所を探リ当てちまったみたいだな。
俺達が見上げている状態で、高さはフロキアが4人分くらいか……そこに複数の巣が確認できる。無精卵だけでも、結構な数が取れそうだな。
まぁ、山ドードーも種の保存のために必死なんだ。このくらいの事はするだろうな。
「ふむ、そこに今回もあるという確証はないし、我々はこうして目的の物を見つけてしまったからな……」
「ワタクシはどちらでも構いませんわよ? どこだろうと危険に変わりはありませんし」
オリアンティは割り切ってるな。まぁ、今日一日で散々な目にあったし、しょうがねぇか。
しかし、俺個人的な意見だとオリアンティと同意だ。目的の物が見つかったなら、そこを狙うべきだろう。特に今の俺らには、再探索なんて余裕はないだろうしな。
最初は少しくらい取って、異次元バッグに入れておくって話をしてたんだがな……そんな時間はもうねぇなぁ。日数的に余裕があるはずの依頼なのに、なんでこんなに切羽詰まってんだか……。
「……ヴォルさん、あそこまで登って、卵取れると思いますか?」
『まぁ、異次元バッグを首元に括りつけてくれればできると思うぞ。今の俺は体も軽いし、ロープをあそこまで繋いで、全員が登るまでの橋渡しもできるだろうな』
「うぅん、わかりました」
俺の意見を元に、少し話し合いが続く。
ハノンはこういう直接危険な場面は避ける傾向が強いが、今回はオリアンティとヘナが逆に乗り気みたいだな。
オリアンティはわかるが、ヘナがこの状況を肯定するのは意外だったな。
「でも、ヘナさん。危なくないですか……?」
「……? 私、その……普通に登れる、から……」
そう言うと、盾状態から人型に戻ったヘナは、その髪を器用に動かして見せる。
なるほど、ヘナは野外活動が得意って言ってたが、こういう事もできるからか。本当に、性格と性能が一致しない奴だな。
「ふむ、ではここの卵を狙うという事で良いかな?」
「……わかりました。僕も腹を括りますっ」
「わかった。それと、元は山を降りてキャンプを張る予定だったが、今日はここで寝るという事でいいんだね?」
「そうですわね。今から降りるとそれこそ山道で足を取られそうですわ」
「……賛成……」
と、いう訳で。
俺達は、崖から離れた一角にキャンプを構築。夜襲に気を張りつつ、翌日アタックという形になった。
ちなみに、今日はオリアンティとハノンは見張り無し。徹底的に休んでもらって魔力回復に努めてもらう。だから、俺とヘナ、そしてフロキアが3人で交代して見張りに立つ事となった。
マジックユーザーはそれが義務だからな。いざという時に魔法が使えないのは致命的過ぎる。
「ご飯は、保存食をそのままなんですね……」
「キャンプ場と違って、山は匂いで獣が寄って来た際に対処がしづらいからね」
「でもまぁ、女将が用意してくれた保存食は質が高いですわ。この貴族であるワタクシが調理もせずに食べても良いと思える保存食など、数える程しかございませんもの!」
「……美味しい」
いやまぁ、この肉絶対、美食竜の尻尾だろうからな……。
保存食にしていい食材じゃあ、ねぇんだよなぁ……。
◆ ◆ ◆
「……おふぁよぉございまふ……」
『おうおはよう。もうみんな準備してるぞ』
「……あふ……」
翌日。
頭の動いてないハノンを急かしながら、俺はロープなどの必要物資を再点検していた。
ハノンは案の定起きれなかったが、まぁ昨日あんだけ頑張ったんだし、寝かせておいてやろうってんでそのままだった。だが、これが当然ではないって後で言っておかないといかんな。
「……フロキアさんは、何をしてるんですか?」
『あぁ、今朝俺の日課を見たらしくてな。何か成長の一環になるんじゃないかって、猿真似してんだよ』
目を擦りながら装備を整えているハノンの視線の先には、足を高々と持ち上げながら目を閉じて直立してるオブジェがあった。
俺が朝にする、気を高めるための鍛練を見ていた結果らしいが、まぁ初めてやってみて成長になれば苦労はない。
それどころか、気の流れを意識してない段階であれをやってもなぁ……まぁイメージトレーニングにはなるし、その猿真似からあっさりと気功を習得する天才もいる。やってみて損はないさ。
「おはよう庶民! 早速ですが、装備の着こなしが雑すぎますわ!」
「あぅ、おはようございま……わぁっ、そ、そこ、引っ張んないでくださ……!」
「いけませんわ! 朝の身だしなみは何よりも心構えを変えてくれますもの。しっかりと整えておかなくては!」
「…………」
「あ、あ、やめ……はうぅっ」
「……本当、ムカつくくらい綺麗な肌してますわね。ケアもろくにしてないくせに……庶民のくせに、庶民のくせにっ」
「あ、あた、当ってます、オリィさ、だめ……!?」
「…………」
フロキア、乱れてるぞ。
俺が軽く鼻を鳴らすと、慌てて姿勢を正すフロキア。
こいつも、なんのかんので男なんだなぁ。
「や、やっと解放された……」
「……おはよう……」
「あ、ヘナさん、おはようございます」
「……ん」
ハノンが装備をちゃんと着込んだ辺りで、ヘナが近づいてくる。
そして、挨拶の後で体を縮め、ハノンの盾として腕に収まった。どうやら、ヘナにとってもこのポジションが一番落ち着くようになったらしい。
けど、この後すぐ仕事してもらうんだがな?
『さて……ハノン、もういいか? 朝飯は山を降りてからって話だからな』
「あ、はいっ」
さて、岩壁に添えられた卵の採集か。
若い頃を思い出すねぇ。ちと体が疼いてきたぜ。
道中のトラブルのせいでずれていた意識のピントが、ようやく定まった気分だ。
「……これで何を得られるのか、私にはまだ理解できなかったな……」
フロキアも自分の世界から戻ってきたし、オリアンティもぶつぶつ言いつつ集まってきた。
どれどれ、始めて行こうかねっ。




