第83話:行動方針
どもどもべべでございます!
さぁ、この章もあと少しですね!
次はいよいよ……どうなるやら。
どうぞお楽しみに~!
フロキア達の傷を、ハノンの【アクアビット】で回復させた後、ダンジョンから戦略的撤退を計った俺達。
結論から言って、ダンジョンの出口は、俺達が引き返した地点からしばらく進んだ場所にあった。
「……空が、赤いな……」
「ですね……」
「フス」
いくつかの分かれ道を見て、道中フロキア達が開けなかった宝箱などを見つけては、赤字分を取り戻すべく少しだけ狙ったりしながら進んだ結果、大した脅威も無く外に出るに至る事ができた。
しかし、そんな俺達を待っていたのは、夕暮れ時の山道という最悪のシチュエーション。そこそこの時間ダンジョンいたからな。そりゃあ夕方にもなるか。
「皆さん。山ドードーの卵を狙うのは、時間帯的にもギリギリだと思いますわ」
「あぁ、そうだな……今から探しても、夜になる可能性が高い」
「そうなると、危ないですよね……」
「……ぅ、ぅん」
まぁ、そうだよな。
今回俺達は、予想を超えるトラブルにより大幅に時間と体力、そして魔力を消耗してしまった。
この状態で山を登り、山ドードーの卵を回収するというのは非情に危険である。卵を狙ってくる獣などの対処もしなければならないからだ。
「しかしながら、私はこのまま探索する事をおススメするよ。ハノンくん」
「えぇっ?」
「そうですわね。ワタクシもそれに一票ですわ」
ほう。
フロキアとオリアンティがそう言うからには、論理的な材料が揃ってるんだろうな。
俺らの現状と、考えられる危険は……ははぁ、なるほどな。
『ハノン、少し休憩したら、確かに卵の場所を見つけるだけでもした方がいいぜ』
「ヴォルさんも同じ意見? な、なんででしょう」
「……わからない……」
まだこの辺りは、経験に乏しいハノンやヘナではわからんだろうな。
確かに俺達は消耗している。だからこそ、この状況を利用しないと厳しいものがあるんだよ。
「理由は単純さ」
フロキアが俺達の代わりに、答えを述べる。
山の中腹を指差し、そこにあるであろうデカブツを連想させてくれながら、説明を始めた。
「私達が通ってきたルートには、狂牛の死体が転がっている。あいつの肉は結構おいしいんだが、私達は時間が無かったから、解体が出来ずに終わっているんだ」
「は、はい」
「……餌?」
盾状態のヘナが一言漏らす。
その答えに、フロキアは満足そうに頷いた。
「そう、餌だ。山に生息する肉食性のモンスターは、おそらくあの狂牛を貪る為に集まるだろう。その間に他のルートから進んでいけば、奴らとの戦闘は回避できる」
「それ以外の不安要素といったら、魔山羊でしょうけど、それもグランアインの町付近で目撃されていましたわ。ワタクシ達がこうしてる間に、討伐依頼が出されているでしょうね」
「な、なるほどっ」
ま、そういう事だな。
強敵が減っており、かつ撒き餌のおかげでモンスターとのエンカウント率も減っているという状況。
これを利用して、後れを取り戻そうって考えな訳だ。
肉体的な負傷はハノンが回復させたから、問題は魔力と疲労。これは、最低限山ドードーの卵を見つけてから、キャンプを張って回復に努めようって腹だな。
「とまぁ、これが私達の判断だが……それにハノンくんがついてこられるかは、君次第だ。あれだけ苦労をしたんだから、無理に進まずに一度キャンプ地点まで戻っていいんだよ」
「まぁ、ダンジョンの入り口は麓付近にありましたものね。今ならキャンプ場の方が近いですわ」
「……うぅん……」
さてハノン、さっきは失敗した二択だ。
ここでどうするか、せっかくだしお前に決めさせようじゃないか。
「……ハノン、くん……無理は、ダメ、だよ」
「……でも……」
ヘナの意見は、後退。
ハノンの消耗具合を、近くで見てたからな。その意見は貴重だ。
この依頼は、期限が決まっている訳ではない。早いに越したことはないが、だからと言って命を賭けてまで突貫作業をこなさないといけない依頼ではない。
ハノンが、責任と自分のポテンシャルを天秤にかけて、どう判断できるか。そこを見ておかんとな。
『どうする? 決めるのはお前だ』
「……わかり、ました」
ハノンはじっくり考えた後、フロキアとオリアンティに向き直る。
「進みましょう」
「……大丈夫なんだね?」
頷きながら、言葉を続けるハノンを、俺たちはじっと見つめる。無理をしていないか、その裏の気持ちを聞き逃さないように。
「た、確かに疲労はしていますし、魔力も結構使ってしまっていますから、僕自身は不安です……。けど、だからこそ、皆さんの意見通り、リスクが少ない今の内に……探索だけでもしておかないと……」
「ふむ、なるほどな」
「……それに……」
ん?
「それに……なんですの?」
ハノンは、もじもじと体をよじりながら、頬を染める。
汚れた衣服をつまんで、自身の肉体をチラリと覗き……ふぅ、とため息をついて、皆に向き直った。
「今戻ったら、一日滞在時間が伸びて……お、お風呂に入れない日数が伸びるんです……!」
「「「…………」」」
「今もう、体ドロドロで……拭くだけじゃ嫌だなって……! なので、が、頑張りますっ」
なるほど。
なるほどなるほど、そっかぁ。
『ハノンよ』
「は、はい?」
俺は、小さく跳躍した。
前足を高々と上げ、ハノンの頭部付近まで接近。
その後、その前足を思い切り振り下ろす。
『風呂と命を天秤にかけんじゃねぇぇぇええ!!』
「あいたぁぁぁあ!?」
さっきまでの冷静な判断はどこいった!
いや確かに、モチベーションは大事なんだが……!
「はぁ、仕方ないな」
「良いじゃありませんの! ワタクシだって早く湯船に浸かりたくてよ!」
「……あはは……」
結局。
俺達はハノンの意見により、進軍を決断。
卵を見つけ、その場所付近でキャンプするという選択に至ったのであった。
もちろん、俺がその間ハノンを説教していたのは想像に難くない。




