第82話:合流
どもどもべべでございます!
さぁ、今から仕事だ!
行ってきます!
「ハノンくん……無事でよかった!」
「うぶぶ……! フロキアさん、苦しいです……!」
俺とフロキアが一瞬だけガチな殺気をぶつけ合ってから、その数秒後。
毛が逆立った程の相手であったはずのフロキアは今、感極まった顔でハノンを思い切り抱きしめている。うん、まぁ気持ちはわからんでもないが、お前落ち着け。
「まったく、思いのほか元気そうですわね。心配して損しましたわ!」
「フスッ」
「貴方も! 兎の姿であんな殺気向けないでくださる!? 危うく本格的な戦闘になる所でしたわ!」
仕方ねぇじゃん。フロキアの反応速度がやたら良いんだもんよ。
あの状態で迎撃態勢取られたら、本気出さねぇとハノンとヘナが危ないと思うのも仕方ないってもんだ。
しかし、こいつらボロボロだな。オリアンティなんてドレスが破れてスリットから生足が覗いてる始末だ。
地上でも相当なゴタゴタがあったと見えるな。
「怪我はないかい? 体のどこかに異常は? 穴から落ちたんだ、頭に衝撃を受けてはいないかい?」
「だ、大丈夫ですよ。ヘナさんが守ってくれましたから……!」
「そうか、良かった……」
いや、まぁ……気持ちはわかるが、心配しすぎじゃないかいフロキアさんや。
ハノンの頬がもちもちと潰れてるんだが。もっちもちなんだが。
「……ところで、件のヘナさんはどこにいますの? 彼女も無事なんでしょう?」
「あ、はい。一緒にいますよ」
「……それって、もしかして……」
オリアンティが、フロキアの背中を見る。
そちらに目を向けると、フロキアは落下時に落としたはずの、ハノンの盾を背負っていた。どうやら回収してくれたらしいな。
そして、視線はハノンが持っている黒い盾へ。見覚えの無い盾の存在に、オリアンティの目元が僅かにひくつく。
「その盾……ヘナさんですの?」
「あ、そうなんです。よく一目でわかりましたねっ」
「む? ヘナ……だと?」
フロキアが盾に視線を向けた。
その瞬間、盾の真ん中からギョロリと目玉が現れ、視線が合う。
「「え、えぇ……?」」
これがハノンなら、割と大声でリアクションしてくれたんだろうな。と、ダンジョン内で柄にもない事を考えてしまうのであった。
どうやら、俺もこの2人に合流できて弛緩しているらしい。
◆ ◆ ◆
「なるほど、盾形態……」
「確かに、それができるならヘナさんはその状態が一番効率的でしょうね」
「ヘナさんのおかげで、僕も全然怪我しないままここまでこれましたっ」
うんうん、実際ヘナがいなければかなり危なかった。
敵こそよっわい部類だったが、盾も無いハノンだったらどうなってたかわからないな。
今回のダンジョン探索の報酬は、ヘナが盾形態を身に着けた事だろうな。
「……ところで、フロキアさん達はどうやってここに……?」
「あぁ、ハノンくん達が落ちてから、私達も必死に上の連中と戦ってね」
「本当、2人で狂牛と狼なんて、相手にするものではありませんわ」
深いため息と共に、2人は話し始めた。
どうやら、俺達が落ちた後、思いっきり獣たちに囲まれて苦戦していたそうだ。
狂牛は攻撃こそ単調だが、タフで高威力の突進を繰り出してくる。そこを小癪にも狼が謎の結束力でフォローしてきたらしいな。
フロキアが狼や狂牛相手にターゲットを取って回避、そこをオリアンティの火力で押し込み、なんとか狂牛を倒したらしい。狂牛のダメージは生前の俺でも何発もはしんどいだろうから、回避特化のフロキアとオリアンティが揃ってこその戦闘だったんだな。
「そして、狼が逃げたところでようやくダンジョンの入り口を探せるようになって……」
「少し降りた所で入り口を見つけて、貴方達を探しに探索に乗り出したって事ですわね」
「ほわぁ……有難いです……」
「……ね」
ダンジョンでは、スカウト役の俺がいなかったんで罠なんかはフロキアが男探知(※体張って罠を受け止める手法)。
余波でオリアンティもダメージを受けて、この通り。ボロボロの2人が完成したらしいな。
戦闘よりも、ダンジョンの罠でそうなったのな……やっぱりダンジョンは準備してから挑むもんなんだよ。
「という事は……さっきの振動は、フロキアさん達?」
「あぁ、聞こえていたか。爆発の罠を踏んでしまってな」
「ワタクシごと巻き込んで、思い切り吹き飛びましたのよこの人。ポーション飲んだせいで今回は赤字ですわ!」
「フス……」
「回復が終わって、蝙蝠の群れを吹き飛ばしてから奥に進むと、貴方達が飛び出してきたという訳です。最序盤の状況だったからよかったものの、次の階まで行こうと考えるならば正直しんどかったですわ」
ふむ、俺達が戦闘を回避したのは、蝙蝠の群れだったのか。
俺とハノンだけだったらウザかっただろうけど、ヘナがいたんならそこまで苦戦する相手じゃなかったな。
選択としては本当に裏目を引いた感じ。まぁさっきも言った通り、こればかりは運だろうけど。
「なんにせよ、君たちが無事で良かった」
「い、いえ、その……フロキアさん達の方がボロボロなので、申し訳ないと言いますか」
「気にする事はない。私達はこの程度でやられる程弱くはないさ」
「……ありがとう……ございます……」
「ふんっ、庶民を守るのは貴族の務めですもの。当然ですわ!」
どうあれ、ようやくこれで合流出来たな。
『よしハノン、まずは脱出するぞ。このままだと敵や罠が再ポップするからな』
「あ、はい。皆さん、まずは移動だそうで……」
「あぁ、そうだな。ダンジョンはしばらく見たくない」
「本当に……久しぶりに新人時代を思い出しましたわ」
後は、フロキア達が辿った道を辿って出口に進めばいい。
はぁ、短いはずなのに、やけに長く感じるダンジョン探索だったな……。




