第80話:vsゴースト
どもどもべべでございます!
10日も開けてしまい、申し訳ございません!
改めて、ご投稿です!
どうぞ、お楽しみあれー!
「フシッ!」
俺はひとまず、目の前のゴーストに蹴りかかった。
こいつらの動きは遅い。ある程度物理法則は無視してくる分、精密な動作が出来ないんだろう。
だからこそ、攻撃を当てるのは容易なのだが――――
(やっぱ、大した打撃にはなってねぇか)
俺の蹴りは、シーツに穴開けて被ったみたいなふざけた外見のどてっぱらに、確かにヒットした。
しかし、まるで干してある洗濯物に足を突っ込んだみたいな手応えしか感じない。明らかに、中が詰まってないものを蹴った感触だった。
これがゴーストの厄介な所だ。こいつらは、物理的な攻撃を無効化、あるいは大幅に減衰させる能力を有しているわけだな。
今回は、減衰タイプだろう。手応えは無いが、痛打になっていない訳ではないように見える。つまり、俺でも延々殴り続ければ落とせる訳だが……後ろの事を考えると、あまりダラダラやり合いたくはないな。
『ハノン、目の前の奴に魔法を打ち込み続けろ! 絶対触られるなよっ』
「っ……『清浄なる水をここに。我が敵を打ち倒す槍となりて、天翔け突き進まん』……ウオータースピアっ!」
ハノンは俺の指示に従い、魔法を自分の前のゴーストにぶち込む。
ゴーストの弱点は、大まかに言ってしまうと魔力だ。こいつらはアンデットとしての体の維持に、魔力を使っているからな。
案の定、威力が高いとは言えないハノンの魔法を受けて、大袈裟にのけぞりもがいている。魔力の塊に殴られて、結構なダメージになっているようだ。
「ほ、本当に効いた。このまま押し切れるかな……」
「っ、だ、ダメ……来る、よ」
そうだな、相手が魔力持ちと分かったからには、ゴースト達も黙ってないだろう。
俺の前にいる奴もまた、ハノンを狙おうとしている。それはなんとかして通さんようにするが、問題は既に対峙している方だ。
相手がゴーストとなると、厄介な攻撃を仕掛けてくるんだよな!
「フシッ!」
ゴーストが、シーツをたなびかせながら体当たりを仕掛けてくる。
俺はその攻撃が、後ろのハノンに向かないように対処しなければならない。つまり、躱すのではなく、角で受けるという選択だ。
通常なら、これは間違いではないんだが……
(っ……やっぱり【ドレインタッチ】かよ……!)
奴に触れた瞬間、俺の中で何かが吸い出されるような感覚を味わう。
同時に、不快な苦痛と倦怠感に襲われる。これが厄介なんだ。
「っ……!」
「わわ、ヘナさん!?」
チラリと視界を後ろに向けると、ゴーストの攻撃をヘナが受け流した瞬間、ざわりと髪が粟立ち一回り小さくなっていた。おそらく、ヘナもドレインタッチのダメージを受けたのだろう。
ドレインタッチは、触れた相手の生命力、あるいは魔力を吸い取り己の物にするというものだ。
基本的には、ゴーストやリッチなどのアンデットが持っている事が多い。これがまた、触れてしまえば一定の量が吸われるもんだからかなり厄介なんだ。なんたって防御が意味を成さないからな。
俺やハノンみたいに、盾で受けるタイプには天敵と言える能力だろう。
「っ……どいて……!」
ヘナがブッシングを使い、ゴーストを押しやって距離を離す。しかし、相手は先ほどの攻撃である程度回復してしまっているからな。まだまだ余裕で突っ込んでこようとしている。
俺もしんどいな。かつての体ならまだしも、この角兎ボディにはそこまで生命力がない。
早いとこ、ハノンに始末してもらわんと……!
『ハノン、ヘナに回避に専念するように指示しろ。ヘナが動いて、お前の体を相手に触れさせなければ回復はしない』
「は、はい……ていうか、回復してるんですね!?」
慌ててヘナに指示を出し、詠唱を始めるハノン。ゴーストはその気配を読み取り、2体でゆらりと仕留めにかかってくる。
俺は先ほどと一緒だ。ハノンに手を出させないよう、一体の順路を塞いでヘイトをこちらに向けさせる。
先ほどの蹴りは、ドレインタッチで無かったことにされてしまっていた。今後の目標は攻撃魔法だな!
「ウォータースピア!」
2発目の魔法が飛ぶ。
ゴーストにこれを避ける事は、まずできない。ど真ん中に命中し、水しぶきが舞い上がる。
しかし、先ほどヘナの生命力を吸ったゴーストは、ギリギリの所で踏ん張ったようだった。床に落ちそうだった濡れシーツが、再度空中に舞い上がる。
そして、俺とハノンに向けて一斉に攻撃をしかけてきた。
『避けろ!』
「っ……!」
ハノンは、盾で受ける事に経験のほとんどを費やしている。
故に、回避というものはまだ上達していない。角兎の突進みたいな直線的でもない限り、躱せないだろう。
しかし、そんなハノンの体が、左にぶれる。
同時に、バランスを崩したハノンの右側を、ゴーストが通過して行ったのが見えた。
「あ、あわ……!」
「……よかった」
ヘナだった。
回避し損ねようとしたハノンの体を、盾の体を無理矢理動かして転ばせたのである。
結構なラフプレーだが、躱せたのであればクリティカルってもんだ。やるじゃねぇか!
「フ……!」
まぁ、俺は受け止めるしかねぇんだがな……!
またしても、ひどく体が痛み始める。くっそ……感覚的に、あと3発くらい受けたらまずいかもしれんな。
だが、ヘナが盾から槌を発生させ、ゴーストを吹き飛ばした瞬間に、その焦燥は払しょくされる。
ゴーストが現界していられる生命力が、ヘナの攻撃で尽きたのだ。シーツが力無く広がり、床に落ちたのが見える。
「っ、よ、よし! あと一体……!」
『お手柄だぜ、お前ら!』
ハノンが俺の方に向き直り、残った一体と対峙する。
こうなると、俺が抑えておく必要はあれど、受け止めなくて済むという安心感が発生する。ハノンが背後から狙われる心配がなくなったからな。
『体感的には魔法で2発だ。頼んだぜ!』
「は、はいっ」
相方を失ったゴーストは、動揺したように蠢く。
しかし、すぐにこちらに向き直り、突貫を試みようとしてきていた。
俺は通路を塞いでこちらにヘイトを集める。しかし、先ほどとは違い、回避して見せる。
ゴーストの攻撃は、目先の俺を狙ったために、ハノンまでは届かない。
「『清浄なる水をここに。我が敵を打ち倒す槍となりて、天翔け突き進まん』……ウオータースピアっ!」
そして、ハノンが削り、ヘナが押し戻す。
この状態が構築された段階で、俺達の負けは無くなったと言ってよかった。
それから、3分にも満たない時間の後。
床には、もう一枚の汚れたシーツが広がっていたのであった。




