第79話:暗雲
どもどもべべでございます!
キーボードは良い。指が進むぞ!
という訳でご投稿! どうぞ、お楽しみあれー!
先ほどのスケルトンの強さからして、この階層は出入り口に近い。そう推測できた。
問題は、俺たちが選んだ道が、そちらに繋がっているか、はたまた奥に進んでいるかという事だ。
俺の【広範囲知覚】は、空気の動きを捉える……つまり、動いている者を知覚する能力だからな。壁の反響で通路を把握するなんて真似はできん。
こればっかりは、勘で進んでみるより他ない状況だった。
「罠は、あまりなさそうですか?」
『油断はできんがな。だが低い階層には、対処が容易な罠がほとんどなのは確かだ』
ハノンにとっては、これが二度目のダンジョン。ヘナに至っては初めてだ。
しかも、ダンジョンの途中からスタートという変則的なアタック。セオリーは通用しないと思って良いだろう。
「……フシッ」
「っ」
ハノンを制止させる。噂をしたら影が差すというが、こうもタイミングよく罠を見つけると、どこか不気味な雰囲気だ。
さて、床を踏んだら発動するタイプの罠だが……解除用のツールは無い。ここは無視が安定だろう。
けどなぁ、また引き返す可能性もあるんだよな。短時間の内に引き返す事を考えると、罠は解除しておいた方が良い気もするが……。
『ハノン、その辺に手ごろな石落ちてないよな?』
「えぇ、探してはいたんですが……このダンジョン、そういった物は落ちてないみたいです」
『だよなぁ、俺も見回してたけど、落ちてなかったし』
その辺の対策をさせてくれない辺り、結構いやらしいダンジョンだ。
そうなると、これは無視して行くしかないな。
『そこに小さなマス目があるだろ? それ罠だから、踏まないようにするんだぞ』
「わ、わかりました」
『また引き返す可能性もあるから、しっかり覚えとけよ』
「はい。……ちなみに、どんな罠なんですか?」
ふむ?
ん~、こいつは……
『落し穴、だな』
「わぁ……効果的な奴、ですよね」
『あぁ、絶対油断できない奴だ』
なんせ俺の死因だからね。
死因! だからね!
「……2人、とも……遠い目、してる」
「えぇ、まぁ……」
「……フス」
互いの運命を変えた罠に最大の警戒心を込めながら、俺たちはヘナの疑問を苦笑で受け流す。
引き返すにしても絶対忘れねぇ。そう心に決めて、探索を続けたのであった。
◆ ◆ ◆
「……フシッ」
「どうしました?」
しばらく進んだ所で、広範囲知覚に引っ掛かった存在がいた。
通路の角を曲がった先にいるようなんだが……厄介な事に、広い空間を飛んでいるようである。
数も多いし、これは中々骨が折れそうだ。
その事を伝えると、ハノンもまた考え込んだ。
「飛行する敵が多数、ですか。それは……僕の魔法で倒せるようなら、良いんでしょうけど……」
「……引き、返す……?」
悩ましい所だな。
飛んでる敵ってのは、当りゃ倒せる奴が多い。しかし、中にはガーゴイルみたいに飛んでて硬い理不尽な奴もいる。
今回の奴らは、デカい連中じゃない代わりに数が多い。そうなると、ハノンの魔法で堕とせる可能性はあるが、群がられたら対処は困難だろう。
絶妙に判断に困るバランスだ。
「今回は、偵察はできないんですか?」
『曲がってすぐの所みたいだな。この前の大蝙蝠みたいに休んでないし、かなり厳しいだろうなぁ』
「うぅん……じゃあ、引き返しましょうか」
「……うん」
結局、選択したのは退却だった。
オリアンティがいれば文句なしに殲滅だったんだろうが、それを言ってもしょうがない。
ハノンの判断はクレバーだ。無理をしている様子もないし、しばらく道の選択はハノンに任せてても良いだろう。
思えば、こうしてハノンと2人で探索するのは、最初に森でポイズンモスも討伐した時以来だな。いや、ヘナはいるけど実質装備だし。
そう考えると、これはハノンにとっても良い訓練になるだろう。フロキア達に教わった事への復習にもなるしな。
『じゃあ、道中の落し穴には気を付けて戻るぞ?』
「はいっ」
落し穴、そしてスケルトンのいた空間。
それらを再度通り、落下地点まで戻ってくる。上を見上げると、空へと続いていた穴は塞がっていた。
やはり、ダンジョンってよくわからんな。
わからない、つまりそれは脅威という事だ。改めて気を引き締め直し、反対の道を進んで行く。
「……ハノン、さん。疲れて、ない?」
「ん、大丈夫です。山登りより楽ですよ」
ハノンとヘナが、疲労度を確認しあっているのを横目に、俺はちょっとした違和感を覚えていた。
気配……というか、寒気かな。微妙に毛が逆立つというか、そんな感覚だ。
広範囲知覚にも、何も反応していない。こういう感覚は初めてだが、あまり気分の良いものじゃないな。
(……こういう感覚を無視すると、大抵良くない事が起こるんだよな)
長年の勘って奴が働いた。
『ハノン、周囲を警戒しろ』
「っ、はい」
狭い通路に、俺とハノンが縦一列で並んだ陣形。
何かが出てくるとしたら、どっちに現れるかで取れる選択肢が変わってくる。もちろん、出てこないに越した事はないが……世界はそう優しくもない。
「っ、ヴォルさん! 僕の前です!」
『悪いな、こっちもだ!』
「えぇ!?」
結果は、挟み撃ちだった。
「……ゴースト……!」
ヘナの言う通り。目の前に現れたのは、シーツ被って顔用の穴を開けたみたいな存在だった。
こいつらはゴースト。立派なアンデット系モンスターであり、死者の魂を封じ込めて動く存在だ。
『ハノン、魔法で迎撃しろ! こいつらに物理攻撃はほっとんど効かん!』
「えぇぇ……!?」
布が体だから効かない訳じゃないんだが、効果が薄いんだよな!
つまり、俺が戦力外だよ畜生! 昔からゴーストみたいな存在は苦手だったんだ!
「……く、くるよ」
「わわわ、や、やります!」
「フシッ!」
迫りくる2体のゴースト。
俺は自分の前にいる奴に威嚇しながら、迎え撃つ。
突然の襲撃による戦闘が、幕を開けた。




