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第78話:ヘナの変化

どもどもべべでございます!

よーし出勤ギリギリ! 短めですがご投稿!

どうぞ、お楽しみあれー!

 

「ヘナさん、凄いです! 僕、あんなにスムーズに戦えたの初めてですっ」


「え、えと、その……うぇへへ……」


 盾から元に戻ったヘナにずいっと近づきながら、ハノンが興奮した様子で声を出す。

 スケルトンが消滅したのを確認してから、ようやく一息つけた。それにより、感情を抑えきれなくなったのだろう。


「なんというか、勝手に体が的確な方向を向いてくれるというか! 攻撃を受けた後も、すごく滑らかに攻撃が逸れましたしっ」


「す、少しなら、動けるから……」


「やっぱりっ。ヘナさんが手助けしてくれてたんですね!」


『ほう、器族ってのはそんな事もできるのか』


 少しなら動けるって事は、攻撃の受け流しができたり、ハノンの視界外からの攻撃に対応できるって訳だ。

 自動防御の魔法が付与された盾は、普通の冒険者が逆立ちしたって買えない値段だったりする。ヘナは、自分の思う以上のポテンシャルを持っているようだ。


「なんだか、不思議な感じ……持ってて貰うと、落ち着くというか……守れて嬉しい、みたいな……」


「僕も、守って貰って嬉しかったです。また戦闘が起こった際には、お願いしてもいいですか?」


「う、うん」


 ん〜、戦闘だけか?

 それはなぁ。


『ハノン』


「っ、はい?」


『こうなると、少なくともこのダンジョンにいる間は、ヘナに盾になって貰った方が良さそうだ。戦闘中と言わず、探索中もな』


「え? で、でも、ずっとって訳にはいかないんじゃ……」


『さっきの戦闘はどうにかなったが、これ以降がどうかはわからんからな。トラップにかかる可能性もあるし、妥協したらハノンが危ねぇ』


「ぅ……」


「……兎さん、なんて……?」


 あまりヘナに頼りすぎたくないのか、ハノンが俺の言葉を通訳するのは、どこか辿々しいものだった。

 女性に助けられるのが恥ずかしいって柄じゃねぇ。となると、何がそんなに嫌なのか……。


「……私は、別に、いいけど……」


「でも、戦闘ならともかく、通路でも盾のままなんですよ? ヘナさんが危ないんじゃない、ですか」


「……そう、なのかな」


「そ、そうですよ。罠にまで巻き込んで、危険を増やして、僕ばかり安全っていうのは……」


 あー、なるほどなぁ。

 ヘナばかりを、文字通り矢面に立たせるのが忍びねぇのか。

 盾形態のヘナがどれほどの攻撃に耐えられるかは、確かに把握していない。ハノンを守るために、延々と攻撃を受け続けるのが危険ではないかと、そう考えているのだろう。


「……だ、大丈夫、だよ」


 しかし、そんなハノンの不安を、ヘナは否定する。


「むしろ……その、あの状態……凄くしっくり、きたの」


「盾の状態が、ですか?」


「うん……なんか、腑に落ちた、みたいな……自然な感じ。多分、私……あの状態が、普通なんだ……」


 自分がなんの意図で造られたか。それが理解できたと、ヘナは続けた。

 器族は、言わば意志のあるゴーレム。それが何の目的で造られたかは、こいつらを造った文明が滅んだ今、わからない。

 しかし、自分が何を持って生まれたかなど、判断するのは自分なのだ。ヘナは、己の中で答えを見つける事ができたと、そう言っている。


「私は、盾の器族……それが、ようやくわかった……。だから、その……盾のまま、いたい、かな。……だめ?」


「う、うぅん……良いのかな」


『少なくとも、俺はその好意に甘えるべきだと思うぜ』


 少しの間、ハノンは悩んだ様子だった。

 しかし、ヘナが珍しく自己主張した事を、無碍にしたくなかったようだ。結局、その意見を受け入れ、このダンジョンの中でヘナを装備し続ける事にしたらしい。


「じゃあ、その……よろしくお願いします、ね?」


「うん……ありがとう、ね」


「こ、こちらこそ!」


 こうして、ハノンはヘナという、心強い守り手を得た。同時に、ヘナもまた自分の必要な何かとして、ハノンを得たと言えるだろう。

 この二人が、この先交わり続けるかは分からんが、今だけはしっかりと噛み合っている。この変化が、互いにとって新しい一歩になればいいんだがな。


『……よし、じゃあおっさんは、若いもんの邪魔する奴を、端から除いてやろうかね』


「は、はい! 先に進みましょうっ」


「う、うん」


 比喩すら通用しませんか。

 ま、こいつらにはこのくらいの距離感が丁度いいのかもなぁ。

 出そうで出ない春の芽にため息をつきながら、俺は気配を探りつつ歩き出したのだった。

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