第76話:落下地点
どもどもべべでございます!
ギリギリになりましたが、1週間内投稿完了!
どうぞ、お楽しみあれー!
衝撃が体を襲う。
だがそれは、突き刺すようは痛みではない。柔らかい布団を下にして着地したような、ぼふんという感触だ。
落下時間は、体感で3秒程か。そんな高さから落ちた割に、ウッ! ってなるくらいの衝撃なのは、素直に驚かされる。
「だ、だい……じょうぶ……?」
そんな声と共に、真っ黒だった視界がしゅるしゅると開いていった。
まず視界に入るのは、人間大の大きさに戻っていく毛の塊……まぁ、わかりやすくヘナだ。
俺らが穴から落下した際、ヘナが髪で包み込んでくれたんだな。だから、あの程度の衝撃で済んだんだろう。
そんなことも出来るなんて……ヘナは防御に特化してる器族なんだな。
「フシッ、フシッ」
「……ハッ! あ、は、はい!」
高所落下のショックにより、呆然としていたハノンも、どうにか正気に戻った様だ。
蓋を開けてみれば、全員無事だな。ヘナのお陰で本当に助かった。
「あ、ありがとうございます、ヘナさん!」
「ぶ、無事で……良かった」
互いに頭を下げ合ってる、場違いに微笑ましい2人は置いといて、とりあえず周囲の確認だな。
ふむ、人工的な石壁だ。等間隔に松明が設置され、煌々と燃えている。
もしここが古い遺跡だったらば、松明が燃えている訳がない。やはり、ダンジョンだと思って良いだろうな。
『ハノン、装備は無事か?』
「え? ……あ、えっと……」
『あぁ、盾は吹き飛ばされてたな』
ポーションなどの類は、ヘナのお陰で割れてはいないらしい。
だが、ハノンの生命線である軽銀の盾は、地上に置き去りになってしまった。ハノンは盾の扱いに重きを置いて訓練していたため、こうなるとかなり厄介な事になる。
「ど、どうしましょう……フロキアさんとオリィさんは、上にいるんですよね? 大丈夫かな……」
「ぅ……」
『まぁ、あの2人ならそう易々とやられんとは思うがな』
襲撃が狂牛ではなく、魔山羊だったならば、オリアンティを集中狙いされてヤバかったと思うがな。
とはいえ、狂牛も簡単な相手じゃない。あまり悠長な事は言わん方が良いだろう。
『とにかく出口の方角を探して、少しでも早くここを脱出しよう。ダンジョンだから、トラップに気をつけて行かねぇとだな』
「わかりましたっ。えっと、ヘナさん」
「は、はい……」
ヘナに方針を説明し、陣形が決まる。
先頭に俺が立ち、罠や索敵。真ん中は今、魔法使いとしての素養しか活かせないハノン。
ヘナは後方に配置し、不意に後ろから襲撃されてもハノンを守れるようにしておく。
盾のないハノンは、かなり脆いだろうからな。
「えぇと、ヘナさんは今まで、ダンジョンに潜ったことは?」
「……な、ない」
「ですよね……」
『今度はハノンが先輩だな。しっかり教えてやってくれ』
「せ、先輩……! えへへ、わかりましたっ」
という訳で、探索開始だ。
広範囲知覚を使って見たが、出口らしき空気の反響はない。多分、今は入口から遠い所にいるんだろうな。
だったら、多少当たりをつけて勘で進むしかない。迷った時の為のアイテムもあるにはあるが、今回はダンジョン探索の予定は無かったし、買ってないんだよな……。
『とはいえ、階層的には浅いだろうからな。出口にはすぐにたどり着ける筈だ』
「階段を見つけても、下に降りなければ……いいんですよね?」
『いや、塔や遺跡タイプのダンジョンの場合、登り道が進行ルートの可能性がある。特に今回は、山に出来たダンジョンだからな。敵の強さで出口の方向を判断しよう』
敵に手こずるようなら、大体3階層くらいだろう。
楽な敵なら出口はすぐなんだろうが、あまり楽観はしない方がいいだろうな。
「……だ、そうですね」
「うぁ……戦わないと、いけない……?」
「フス」
通路を歩きながら、その言葉を肯定する。
今回は流石に、ヘナに頑張ってもらわんといかん。どんな敵が出てくるかわからん以上、ハノンを守れるあの髪の盾は必須だ。
「……ハノンさん、の、兎さんは強い、けど……」
不安そうだな。仕方ないとは思うが。
「大丈夫、ヘナさんは僕らを助けてくれたじゃない、ですか?」
「…………」
「今も、こうして僕を守ってくれてます。……ヘナさんがいてくれて、本当に良かったです」
「……そう、かな……」
露骨に目を泳がせ、髪を波立たせる。これは、照れてると思っていいんだろうな。
ヘナは、ハノンに任せたおけば大丈夫そうだ。フロキア達じゃこうはいかんだろう。
もしかしたら、この状況がヘナにとって、いいターニングになるかもしれんな。
その為にも、こいつらを無事外に出してやらんとならん。
(……だがまぁ、そう簡単にはいかないか)
通路の奥。
一方通行の道の、向こう側。
そこには広間があるんだが……案の定、お出迎えがいるんだなぁ。
『ハノン、奥に敵だ』
「っ、ヘナさん、敵だそうです」
「うぁ……」
さてさて、道は一方通行。周り道はできん。
敵の種類によっては厄介な事になるな。後退し、反対の道を進む事も考えよう。
ひとまず、敵を確認する為に俺一人で先行する。こういう時、兎は小さいからバレないよう進めて便利だな。
『……なるほどねぇ、そういうダンジョンかい』
広間にいたのは、二足歩行の生物。
いや、生物ってのはおかしいかね。
剣と盾を持ち、胸を覆う鎧を着込んだ存在。しかし、鎧は安定せずにカラカラと音を立てている。
全身蒼白の体に、窪んだ眼孔。そこに瞳は存在しないが、警戒するように周囲を見回す動作はどこまでも人間臭い。
『スケルトン……ここはアンデット系統が主流と見ていいな』
骸骨型のモンスター。
アンデットの中では最もポピュラーな代表格が、そこにいた。




