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第68話:お手並み拝見

どもどもべべでございます!

リレー小説に参加しましたとも! 楽しくて楽しくて仕方なかったです!

改稿作業も相まって、一週間ギリギリになってしまった!

というわけでご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~!


 太陽の向きからして、まだ昼にはなっていない時間帯。

 俺達は、森の前まで到着した。 

 急なルートの変更はあったが、ここまでは順調だ。平野ではモンスターにも遭遇しなかったし、特に障害なく進めている。

 問題は、ここからだな。アイツは特に脅威のあるモンスターはいないと言っていたが、確実に襲撃はあるだろう。


 森ってのは、一体の生き物みたいなもんだしな。魔山羊イビルゴートを避けて通った俺達だが、それ以上のトラブルが舞い込んでくる可能性もある。

 つまるところ……森ん中ではそのトラブルに対処できる存在。野伏レンジャーが不可欠って事だ。


「さて、野伏の技能なら私も持ってはいるが、正直嗜みという程度でしかない。ここからは、君が頼りだ。ヘナ」


「お手並み拝見ですわね? ワタクシの行く道を切り開いていきなさい!」


「っ……っ……」


「あ、あの、ヘナさん? 無理しないで、いつも通りで良いですから、ね?」


 俺達の前には、楕円形態から元に戻ったヘナがいる。

 唯一視認できる丸い瞳をウルウルさせて、なんだか胃が痛そうだ。

 過剰な期待は禁物って事なのかね……この調子で野外活動ができるのか?


「……と、とりあえず……森から、山……最短、行きます」


「あぁ、ハノンくんもそれでいいかな?」


「が、頑張って付いて行きますっ」


『よく言った。フォローは全力でしてやるよ』


「えへへ……」


「まぁ、ワタクシも貴女の指示に従いますわ。せいぜい頑張りなさい?」


 という訳で、進行開始だ。

 ヘナを先頭に、ガサガサと木々をかき分けて進んで行く。

 森の中で最近危険視されていたのは、先日俺達が狩った肥蜥蜴ヘビーリザードくらいだったはずだからな。ハノンの体力に気を付けて行けば、2日とかからずに山岳地帯まで向かえるはずだ。

 特に今回は、ヘナが最短ルートだと言っていた。これがどのくらいのものかはわからんが、もしかしたら野宿が必要なくなるかもしれん。


「……この辺り、魔物……少ない。です。……でも、最短、少し多い。……見つかったら、対応、で」


「ふむ、モンスターが多いルートを、隠れて行くのか」


「あら、でもゴブリンが荒らして少なくなったのではないんですの?」


「……正確に、は……群れの規模、小さくなった……です」


 ふむ、そういう事か。

 ゴブリンが一時的に生態系に君臨した事で、森の食糧事情が大きく崩れてしまった。

 それ故に小動物が減り、それを捕食する動物も減った。

 結果として、モンスターの規模も縮小し、割と襲撃も落ち付いてるって事だな。確かに、その見込みなら多少のリスクは確保して、森の最短ルートを通った方がいいんだろう。

 ハノンが通れないような環境的苦難じゃなく、数が少ないモンスターへの対応の方がこちらとしてもありがたい。


「…………ん」


 ふと、ヘナが立ち止まる。

 俺達が何事かと周囲を見る中、ヘナは軽く屈むと、うぞぞっと髪を動かし始めた。こいつ、こういう事も出来るんだな。


「何をしているんだ?」


「っ……に、苦虫、捕ってます。……乾燥させて、砕いて、撒く……ま、魔物の鼻、くしゃみさせます……」


 そりゃいい。モンスターの動きを止めたりして、逃げるのにも攻勢に出る時にも使えるな。

 乾燥には時間がかかるだろうし、休憩の時にドライをかけて手助けしてやろう。


「ほわ……髪の毛動かせるなんて、ヘナさん凄いです……」


「っ、っ、そ、そんなこと、ない……」


『まぁ、その分器族うつわぞくは、武器や防具を使えないと聞くな』


「武具を使えない、ですか?」


「……ぅ、ぅん……」


 苦虫を確保した後、ヘナは進みながら説明してくれた。

 器族は、その体を武器にすることができる種族だ。機能は個体によって様々なのはさっきも言った通りである。

 だが多くの個体は、その代わりのように武具に嫌われ、手に持とうとも弾かれてしまうのだという。

 武器に嫌われて装備が使えないとは、初耳だったな。


「でしたら、貴女は野外探索以外は役に立たないと思ってよろしくて?」


「お、オリィさん……!」


「あら、戦力になるかならないかを聞くのは大事ですわ。それがワタクシ達全員の生存確率に繋がりますもの」


「……い、今までは、自衛……だけ、してて……魔物から、は、逃げてた……です」


 一度動かした所を見せてしまえば、後はもう抵抗はないのだろう。ヘナは髪を周囲に伸ばして危険が無いか探知しつつ、進んでいる。

 あの髪それぞれに探知機能があるとしたら、かなり効率的なクリアリングだな。


「……だから……戦えって、言われても……正直、無理……というか、不可能……」


「ふむ、わかりましたわ」


「あぁ、ヘナは戦闘の際には、ハノンくんの近くから離れないでいてくれ。彼は後衛を守ってくれる頼もしい少年だからね」


 フロキアの言葉に、ヘナの眼球がハノンを見つめる。

 ハノンは照れて赤くなりながら、盾で顔を隠してしまっていた。


「……じ、自分の身は守れるから……その、うん……防御は、得意……無理、しないで……」


「い、いえ。ヘナさんがいるからこうして進める訳ですし、僕でよければ……その、守らせてください」


「……ぅ……」


 髪が粟立ち、波を作る。

 小さくコクンと頷いて、そこで2人の会話は止まってしまった。


「あぁもう、じれったいですわね!!」


「「うひぃっ」」


「フスッ、フスッ」


「止めないで頂戴な角兎ホーンラビット! ワタクシこういう煮え切らない空間苦手なんですの!」


 おいおい、余計に話がこじれるじゃねぇか。止めてくれ。

 せっかくいい感じのやり取りだったんだけどよ。まぁ、もう少し会話しろよとは思ったが!


「ふむ……まぁ、今は彼女も探索中だ。あまり会話にかまけて、作業を疎かにするよりはずっと良い」


「いいえ、親睦は会話なしには深まりませんわ! 何を求め、何をもって己とするのか。それを話し合う事が重要なのではなくて?」


「それを言ったら、我々とて個々の目的は知らないさ。だが、こうして背中を預け合っている」


「でしたらっ、この際良い機会ですわ。お互いの関係性を、全員で高め合いましょう?」


 オリアンティがスパァン! と扇子を広げ、ふふんと笑う。

 自信満々だが、どこか不安を誘う空気。茶目っ気というよりはサドっ気に見えてしまうのは、損だよなぁ。


「本日の野営時、皆で語り合う場で、互いの認識を深め合いましょう? その方が、より一層仲間として輝けるというもの……そうでなくて?」


「ほう? ……ふむ、その通りだな」


「ぇ……」


「えぇ、また急に、ですね?」


 ふむ、こりゃ面白いかもしれんな。

 フロキアの強さはどこからくるのか。オリアンティも貴族でありながら、何故冒険者をやっているのかは気になる所だ。

 まぁ、俺の事は話せないにしても……ハノンが何を語ってくれるかも興味が湧く。

 なにより、冒険者の野営は、そういう親睦会みたいなところがある。ハノンやヘナが、そこで少しでも仲間意識を強めてくれれば、それに越したことはない。


「オォーッホッホッホっ、決まりですわねっ」


「やれやれ」


 元々方向性が散り散りのパーティだ。オリアンティがその辺りの話題性を引っ張ってくれるのはありがたい。

 ま、ハノンはそういうの初めてだろうし、どうなるかね。


「……っ」


 そんな会話をしていると、ヘナが髪の横から腕を出して、俺らを制した。

 おお、こいつ腕あったんだ……という感心をした俺の耳も、ピクリと反応する。


「フスッ」


「……ヘナさん?」


「ま、魔物……じゃない、けど、厄介なの……静かに、ね」


 腰を低く落とし、全員にしゃがむよう合図する。

 フロキアもオリアンティも、素直にそれに従った。


『……近づいて来てるな』


 ハノンが息を飲む。小さい体をより小さくして、口元を抑えている。

 ヘナは、髪の中で何かをごそごそ漁っている。

 その間に、気配の主は森の奥から姿を現した。


(……ウルフ、ですわね)


 オリアンティが小声で確認する。

 そこに居たのは、3匹の狼であった。黒に近い灰色の毛並みは、針金のように硬そうである。

 

(狼か。負けないとは思うが、先兵かな)


(おそらくは。仲間を呼ばれたら、厄介ですわね)


(で、でも、匂いでバレちゃってますよこれ……こっち探してます……)


 そうだな。狼は俺達異物の気配を察してるんだろう。鼻を小刻みに振るわせて、こちらの場所を把握しようとしている。

 これは、戦闘は避けらんねぇかな。


(……こ、これ……)


 だが、武器に手をかけるフロキアや盾を構えるハノンを置いて、ヘナだけは行動が別だった。

 髪の中から、一本の捻じれた植物紙を取り出して皆に見せる。


(獣避けの……匂い紙。火、つければ、臭さで、追い払え、ます)


(あら、用意がいいですわね)


(狼、は……怖い、から)


 ここで火口箱を使ったら、着火音でバレそうだな。

 俺が【ライター】で火をつけよう。ハノンにそう伝えてもらうと、ヘナが匂い紙を近づけてきた。

 ……俺、この臭い嫌いだな。鼻が痛くなるキツメの薬草みたいな感じだ。

 え、これに火ぃつけたら、周りにこの臭いが充満するのか?

 嫌だな……でも、やんなきゃ駄目だよなぁ。


『えぇい、ままよ!』


 嫌だが、チームの安全には変えられん。意を決して魔法を使い、紙に火をつける。

 うぅ、ぅ……。


「フブ!?」


 うげぇぇ! ハノン、はのーん!


(わ、ヴォルさん……!? や、ローブに入んないでっ、くすぐった……!)


 痛って、鼻、いってぇぇえ!?

 やべぇ、ハノンのローブから出られねぇ!?


「ぁ、んっ……ふぁぁ!」


(……行ったな)


(行きましたわね)


(……これで、安全……)


 どうやら、狼達は臭いに観念して逃げ出したらしい。

 気持ち、わかるぜ……こんな刺激、耐えきれねぇよ……。

 その後、煙が晴れるまでの間をローブの中で過ごした俺は、かなり批難的な目でハノンに見られることになった。

 よくわからんが、不可抗力だと声を大にして、言いたい。

 

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