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第67話:警告

どもどもべべでございます!

レビュー貰ったら連日投稿! ふんす! ふんす!

というわけでご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~!

 

 そもそも、なんでこんな目立つ奴を一度も見かけてなかったんだ?

 知ったのは最近で見たのは竜の息吹亭の中だけ。俺はこの町に住んでて長いが、器族うつわぞくがいるなんて知りもしなかった。

 冒険者登録までしてて、ギルドでも見ていないなんて、あり得るのだろうか。


 そんな俺の疑問は、竜の息吹亭を出て納得に変わった。


「……えと、ヘナさん。このまま、持っていけばいいの?」


「は、はい……」


 俺の横を歩く、ハノンの手の中。

 そこには、真っ黒な異物が握られていた。

 手のひらサイズで、かつポケットに入っても目立たなそうな楕円形だえんけい。まるで磨かれた石のように艶やかだ。

 しかし、よくよく目を凝らして見れば、ある違和感に気付けるだろう。

 その黒い何かは、まるで毛糸玉のように丸く巻かれた、毛髪だったのだ。軽くホラーである。


 そう、もうお気づきだとは思うが、これはヘナだ。

 器族は姿形を変えると聞いてはきたが、こんなに小さくなれるとは思っていなかった。

 なるほど、これなら気づかんわな。宿の外に出る時には、この形態で誰かに携帯されて移動していたわけだ。

 納得と同時に、ハノン以上の念の入れように諦めに近い感情が芽生える。

 こいつ、本当に誰かと親しくなれるんかね? 今後の動きにもよるが、こいつに覚悟がねぇ限りどうにもならねぇ気がするな。


「しかし、便利なものだな。器族というのは」


「……ぜ、全部が全部、できる……わけでは……」


「ふむ、そうなのか」


 その後、沈黙。

 はぁ、仕方ないな。器族は狙われやすいと、ベローナさんも言ってたからな。こいつがここまで警戒するっていう事は、過去にそういう事態になりかけたのかもしれん。

 ベンダの爺さんが、キャリアと実力を持ちながらあまり目立った活躍をしていなかったのは、こいつを守っていたからだろう。フロキアも納得してるのか、肩をすくめただけで終わったな。


「とにかく、町を出よう。後ろの山までは距離があるから、朝と昼の内にどれだけ近づけるかが肝要だ」


「そうですわね、その為に事前に準備していたのですもの。……とりあえず、川岸を沿っていくルートでよろしいのですわよね?」


「あぁ、近さで言えば森を突っ切るルートなんだが、森は小さな敵との遭遇が多い。体力を温存するなら、川岸だろうな」


 ふむ、経験上2人ならそう選ぶよな。俺もまぁ、賛成だ。

 けど、最近のモンスターの出没頻度によっては、ルートを考える必要があったんだよな……そこんとこの噂は出回ってなかったから、大丈夫だとは思うんだが。

 俺個人で情報収集できないのが辛いとこだぜ。


「おや~? 誰かと思えばハノンくんじゃないか。久しぶりだね~」


 と、そんなふうに話しながら町の出口に歩いていると、後ろから声をかけられた。

 俺達がそちらを見てみると、そこには確かに久しぶりな顔があった。


「あ……と、盗ぞ……」


『ハノン』


「あ、いやっ、なんでもっ」


「あはは、えらいえらい。軽いお口は嫌われちゃうからね?」


 眠そうな瞳に、くすんだ金髪。見てくれは良いんだが、雰囲気も相まって2.5枚目って感じのルックス。

 着ている服が上等じゃなかったら、雑踏の1人物って印象の男。

 しかし、こいつが過去にハノンに会った場所は、盗賊ギルドのグランアイン本部である。つまり、そういう仕事の奴って事だ。

 フロキアはわからんが、オリアンティとは確実に面識がないだろう。ここでこいつの立場をハノンがばらしたら、どんな報復がくるかわからん。


「どうも、初めましての人もいるから挨拶しとくね? 俺はギーメイって言います。よろしく~」


「……フロキアだ」


「オリアンティ・フォン・ゴールですわ」


 もう少し捻れよ。明らかに偽名だろそれ!

 まぁ、そういう事言ってこちらの反応楽しんでるような奴だし、仕方ないとは思うが……。


「しかし、パーティを組んだとは聞いてたけど、まさかあの一匹狼と組むなんてねぇ」


「あ、いえ、その……」


「んぅ? どうしたの、顔色悪いよ? 今隠した何かが原因なのかなぁ」


「ち、ち、ちが……!?」


 ハノンは、咄嗟にヘナをポケットに突っ込んで会話を続行していた。

 盗賊ギルドのメンバーに、ヘナの存在を知られないようにという配慮だろう。空気は読んでくれて嬉しいが、明かに挙動不審になっている。

 そんなハノンを見て、オリアンティがため息をついた。


「ハノンさん、隠し事ができないなら、せめて堂々としていなさいな」


「ひぇ……!」


「あはは、そうだねぇ。何隠してるのかなってワクワクしちゃってたよ?」


「あぅ……」


「もちろん、貴方に言うはずもありませんが。ワタクシ達、これから依頼で町を出ますの。用事が無いならもう行ってもよろしいかしら?」


 おぉ、こういう時オリアンティは、やっぱ強いな。というか、こいつから狸の匂いでも感じ取ったか。

 隠し事があるとはばらしつつ、それ以上の情報はピシャリと遮断して、ハノンが下手をこかないようにしてくれたのはありがたい。


「うぅん、誤解させたようで悪いけど、俺はたまたまオフの日に知った顔に会えて声をかけただけだよ? 別に何を調べようとかそんな事はなかったから安心してね」


「それは失礼いたしましたわ。ですがワタクシ達は、先ほども言ったように依頼ですので。ハノンさん、フロキアさん。行きますわよ」


「そうだな」


「は、はい……あの、ギーメイさん。すみません、そういう事で……!」


 えぇ、まだ全然お話ししてないのに~。という奴の声を、オリアンティはばっさり無視する。

 まぁ、こいつにはハノンが情報収集を頼んでたから、もうそろそろ何か掴んでそうな気がするが……先にベローナさんから依頼を受けたのは俺達だ。優先順位は、冒険者として間違えちゃいかん。


「うん、バイバイ。……あぁそれと、ハノンくん」


「っ、はい?」


 フロキアとオリアンティを追いかけようとするハノンを呼び止め、そいつはニコリと笑う。


「川沿いのルートはやめておいた方がいいよ。ついさっき、山から魔山羊イビルゴートが降りてきたって情報がきたから、冒険者ギルドに流すつもりだったんだ」


「え……」


「その点、森のルートはゴブリンが環境荒らしてたから、危険な魔物はあまりいないよ? まぁ襲撃がないとは言わないけどね~」


 魔山羊か、そりゃ厄介だな。

 見た目は人間の倍近いサイズの山羊だ。しかしれっきとしたモンスターであり、これが中々に強い。

 一説では、悪魔デーモンの使い魔だなんて言われてるが、それは単なる迷信である。単純に、魔法使って後衛をぶん殴ってくる、機動力がある山羊だな。

 うん、かなり厄介だ。


「え、えと、その……あ、ありがとうございますっ! あの、お金……」


「いいよいいよ、今回はサービス。これ教えたってあの御貴族様に伝えて、俺の心証を良くしてくれると嬉しいな~?」


「あ……わ、わかりましたっ」


「んふふ、それとね……帰ったら、俺んとこにも来てほしいな?」


「え、それって……」


 だが、そいつはそれ以上なにも言うことなく、「じゃあね~」と踵を返し冒険者ギルドの方角に歩いていってしまった。

 まったく、依頼前だってのに、揺らぎそうな振りを見せやがって……だがまぁ、あいつからの情報なら信用できる。

 ここは、素直にルートを変えておくべきだろうな。


「……ヴォルさん、どうしましょう……」


『まぁ、少なくともこのメンバーで魔山羊はちと面倒くさい。ルート変更をおススメするぜ』


「わ、わかりましたっ」


『……詳しく聞くのは、終わってからな。今は集中だ』


「うぅ……は、はいっ」


 そこまで話した所で、「ハノンさんっ! 何をしていますの?」 と声がかかった。御貴族様が待ちぼうけらしい。


「あ……す、すみません……!」


 その後、ハノンは先ほどの情報を2人に提供。森のルートに変更することを提案した。

 オリアンティは訝しげだったものの、魔山羊の厄介さは知っていたようで、ハノンの提案を飲む。

 フロキアもまた、二つ返事でOK。ヘナにも聞いたが、小さく了承の声が聞こえてきたため、俺達は急遽森を進むことになったのであった。

 

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