第60話:ひと段落
どもどもべべでございます!
なんとか20万字に収めたぞ!
まぁまだ蛇足書くけどね!w
ハノンくんたちの冒険は、まだまだ終わりません。
次の章からは、ちょっとした事件の無い日常パートやっていきますかね~。
そんなこんなでご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~!
夜が、じわじわと深まる。
本来ならばこの時間、闇を照らす物はこの資材置き場にはない。しかし、今夜のこの時間においては、複数の灯りが中心に近づいていた。
そこにいるのは、冒険者。
ただ一晩の激戦を、協力し合って切り抜けた連中である。
さて、悪魔という予想外の存在もあったが、なんとか暗殺者集団は全員捕縛した。
銅貨級の3人組が途中で合流してくれたのが助かった。カイルを冒険者ギルドに保護してもらった後、返す脚で俺達の元へ駆けつけてくれたらしい。おかげで全員を短時間で捕縛できた。
今回は、ハノンの策にこいつらが乗ってくれなければ、ここまでの戦果にはならなかった。今度埋め合わせしてやろうと、ハノン達と誓い合う。
「ひとまず、コイツらはギルドに連行だな。兵士に預けたら、変に権力を働きかけられかねないからね」
「ですわねぇ。あの性悪エルフなら、証拠を握ってる存在を逃したりはしないでしょう。ワタクシもそれに賛成ですわ」
流石はオリアンティ。この短時間でアルバートの底意地の悪さを理解してるな。
ハノンも頷いてるし、このメンバーは意見の一致が多くて安定してるのがいい所だ。
「な、なぁ……そいつ、本当に大丈夫なのか?」
「悪魔、呼び出したんでしょう〜? 今すぐ飛び上がって襲いかかったりとか、しない〜?」
「お、俺たち、流石に悪魔は相手できないぜ!?」
銅貨3人組が言ってるのは、フロキアが雁字搦めにして担いでる、あの暗殺者の事だな。
「魔呼の符は既に取り上げているし、武器の類も全て取り上げた。仕込み靴を懸念して裸足にもしている。……体内に短刀でも隠していない限りは、まぁ大丈夫だろう」
『あー、暗殺者あるあるな。縛られてもゲロッと出していつの間にか脱出してるやつ』
「ええぇ……何それ怖い……」
まぁ、仮にアイツがそれを仕込んでたら、俺の蹴りの段階で何かしら突き刺さってそうだよな。例え包んであったとしても。
「まぁ、それなら良いけどよ……それより、流石はフロキアさんっすよね。悪魔を退治しちまうなんて!」
「本当よね〜。悪魔を倒したなんて報告したら、相当報酬上乗せされるんじゃない〜?」
「ふむ、私の手柄が全てではないのだが……全員の報酬が上がるのは良い事だな」
そうだな。たとえ下級でも、悪魔を倒したってんなら報酬は跳ね上がるだろう。
魔呼の符を提出すれば、神殿からも報奨金出るだろうし、今回の総額は大きく期待して良いと言える。
「……その、彼は……どうなるんでしょう?」
「少なくとも、貴方が考えるよりも重い罪にかけられるでしょうね」
「し、死刑、とか……」
「いや、彼らは死ぬ事も許されない」
「え?」
「フシッ!」
俺は、そこまで言ったフロキアを睨みつける。
流石に、これ以上は今のハノンには酷だと判断したからだ。
「……そうだな、済まない。忘れてくれ」
『ハノン。お前が詳細を知るには、流石に早い。ここは俺の顔を立てるつもりで、聞かないでおいてくれ』
「……は、はい。わかりました……」
今日は色々ありすぎたからな。これ以上はハノンが受け止めきれねぇだろう。
『それより、早くカイルに会いに行ってやれ。きっとお前を心配してるぞ?』
「そ、そうだ、カイルくん……皆さん、行きましょうっ」
「丁度馬車も来たようですし、確かにワタクシも帰って休みたい気分ですわ」
「そうだな……」
「フスッ」
銅貨3人組も同意し、馬車の接近する音が響く方向へ向かう。
アルバートが派遣したのは、護送用馬車であった。これならば、全員入ってもお釣りが来る。
暗殺者共を詰め込んで、俺たちはギルドに向かって進んで行った。
ハノンは終始ソワソワしっぱなしだったが、他の面子は流石に警戒を分かっている。護送用馬車に異常がないかを、終始見守っていた。
まぁ、例え指や腕の骨を外そうと抜けられないように縛ってたからな。大丈夫だとは思う。
ご丁寧に、睡眠誘発効果のある香を流し込んでたしな。しばらくは全員目覚めないだろう。
そして……何事もなく、俺たちはギルドに到着した。
「し、失礼します……!」
ハノンが慌てたように、馬車から飛び降りる。
俺もそれについて行き、フロキアとオリアンティもそれに続いた。
銅貨3人組が「え? 俺ら後片付け?」みたいな顔してたけど、そこはそれ、少年達を許してやんなって。
「っ、カイルくん……!」
ギルド内、ロビー。
そこに、カイルはいた。
体を毛布で包み、手にはヤテンの茶が淹れられたコップが握られている。
側から見て、細かい傷は見える。が、どうやら五体満足のようであった。
「……ハノン……」
「カイルくん……良かったっ」
「ハノンくんっ!」
ハノンに向かってくる、小柄な影。
その少女、シルは、ぶつかるようにハノンに抱きつき、涙を流した。
「お兄ちゃん! かえってきた!」
「う、うん……」
「ありがどぉぉ!!」
装備をびったびたにしながら泣き叫ぶシルの後ろで、カイルが立ち上がる。
ハノンはその仕草一つでビクッと跳ね、視線を逸らす。
「受付のねぇちゃんから、きいた。お前、かなりむちゃしたんだってな」
「……そ、その……今回カイルくんを巻き込んだのは、僕を狙っての犯行だったって……」
シルの頭を撫でる仕草は、ちょっとした逃避だろう。
「……っ……! ご、ごめ……」
「あやまんな!」
「っ!」
カイルの顔が、急接近する。
鼻と鼻とが軽く触れ合い、必然的に視線を無理矢理合わせられる。
目を丸くするハノンに対し、カイルは真剣そのものだ。
「ありがとう!!」
「ぁ……」
「先に、これを言わせろよ!」
「……ぁ、ぅ……」
『……ハノン、礼、言われてんぞ』
俺の進言に、僅かに後退したたらを踏んだハノンは、指を合わせながら視線を下げる。
しかし、すぐに首を振り、小さく息を吸うと、カイルに向き直った。
「……無事で……良かった……!」
「おうっ」
その瞬間、ギルドが湧いた。
これぞ冒険者。これぞ友情だと、皆がアルコールのないジョッキを合わせた。
フロキアがハノンとカイルを抱き上げ、誇らしそうに受付へ向かう。
オリアンティが、いつもの高笑いを上げる。
シルも、いつの間にか笑っていた。
(……仲間、か)
そんな喧騒を後ろで眺めつつ、俺は少しだけ思い出す。
冒険の成功を願い、ジョッキをぶつけ合ったアイツら。
何かにつけて俺に突っかかってきた、アルバート。
アルバートとの喧嘩を、遠巻きに見てため息をついてたアイツら。
死んだ奴を蘇生させるために、全員で借金した事もあったっけな。
ドタバタした道中だったが……結局最後は、皆が笑顔の日々だった。
(……やっぱ、手放したくはねぇなぁ……)
「ヴォル、さん!」
「フス?」
だが、そんな俺の夢想を、アイツの声が吹き消した。
伸ばされる手。
確かな微笑み。
それは今、俺一匹に向けられている。
「報告、しましょっ」
「……フシッ」
あぁ。
あぁ、そうだな。
未練なんざぁ追ってる暇、今の俺にはない。
弱くて、目が離せなくて……しかし、優しくて頼れる。こんな最高の相棒を、育てていかにゃならんからな。
当然、元に戻るのは諦めない。だがしかし、今は戦いの中で芽を出したコイツを、思い切り褒めてやらんとな。
『しっかり、アルバートの奴からふんだくってやろうぜ』
「そ、それは……ふふ、です、ね?」
カイルとシルを保護しつつ、受付の奥に俺達は向かう。
きっと今頃、アルバートが書類の整理をしつつ、報告を待っているだろう。悪魔をネタに、がっつりむしり取ってやらねばならん。
その後は、そうだな。
酒場で、ジョッキをぶつけ合おうか。




