第58話:常道の策
どもどもべべでございます!
4600文字とか、いつもの倍くらいあるんだがw
長かったらすみません~。
というわけでご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~!
敵と正面から対峙し、カイルを救出せしめた俺達。結果、敵大将1人に対して、俺達3人と1匹で取り囲むという最上の展開となった。
全ては、ハノンの策……というか、ちょっとした思い付きのおかげであると言えよう。
どんなものだったか? じゃあ、ネタ晴らしをしてから続きと行こう。
時は、僅かに遡る……
◆ ◆ ◆
「えっと……つまり、カイルくんを救出しさえすれば、逃げていいんです、よね?」
冒険者ギルドの一室にて。
ハノンは、手を股の内に差し込んだ状態でもじもじしながら、上目遣いに俺達を順番に見やる。
その姿に自信というものはないが、どこか確信があるかのようにも見える。なんつうややこしい態度だ。
「あぁ、しかし、暗殺者というのは厄介だ。用心深く姿を隠し、見えない場所から奇襲する。もちろん、人質も有効な状況になるまで隠しておくだろう。……仮に私達が別動隊で動いたとしても、隠れている相手を探している間に、人質が殺される可能性は高い」
フロキアのこの言葉は、つまるところ、ハノンは囮にならないと言っているのだろう。
それは、するだけ無駄な話だと。
「えぇ、その、だから……カイルくんを確保してる人を探す、んじゃなくて……カイルくんを確保してる人の所に、直接行けば……時間は短縮できますよね?」
「……それは、まぁ、そうだが……」
……あぁ、そういう事か。
「ハノンさん? それは、その角兎の探知能力を活かすという事ですの?」
「は、はい。あれなら、割と遠くから……探せます、よね?」
俺の【広範囲知覚】だな。
確かに、資材置き場は結構入り組んでいる。風の通り道も多いため、ダンジョンのように制限された空間に近い。
広範囲知覚を使えば、通常よりも広い範囲を知覚できるだろう。開けた空間で使うより、ずっと効果的だ。
『だがハノン、これ使うにも限界があるぜ。相手の懐に飛び込んで使わねぇと、まず見つけらんねぇ。暗殺者相手に隠れて知覚で探すなんて、無理な相談だ』
そう、けしてこの広範囲知覚は、無限に情報を拾える訳ではない。
風の反射や音の反響などを選別して、目を閉じた状態でも空間や人を把握するのがこの力だ。俺の知覚範囲外の場所は、どうにもぼやけてわからずじまいだろう。
つまり、この力を使うには、資材置き場に入り込む必要がある。もちろん、相手には見つかるだろう。
「ふむ……確かにそうだ。どうするのかね? ハノン少年」
アルバートもまた、俺と同意見らしい。というか、俺この力はお前に教えてないのに、何で把握してるみたいに話進めてるの? こわっ……!
「えと……なので、僕が資材置き場をうろついて、ヴォルさんに調べてもらいながら……カイルくんが見つかったら、待機してる皆さんに……救出に向かってもらえば、いいかなって……なるべく、指定された場所には迷うようにいきますので……」
「なるほど。ですが、離れていたら連絡する手段もないのではなくて?」
「あ、いえ……【念話】なら、けっこう遠くまで届くので……ね? ギルドマスターさん」
「……私に協力を要請するつもりという訳だな?」
「え? は、はい」
はっきり言ったな!
いやぁ、ここまで見事にギルマス頼りに行くのは、冒険者では珍しい。
それ以前にこいつに借りを作りに行く冒険者が珍しい!
「ふむ……しかし、私の立場上、直接手を下すと面倒くさい連中が多くてね。組織が縮小している現状、私が動くのは少々遠慮したいのだが」
「で、でしたらパメラさんでも、いいですよ……! 念話、使えますもんね……!」
「そうなのか? 受付嬢なのに、意外だな」
「で、で、救出は、他の冒険者の人たちにも依頼しましょう……! そうすれば、手数はこちらの方が上です、多分……!」
ううむ、なるほど。
冒険者としての立場上と、現状の行動制限上、なんとなく俺らパーティ内で解決できないかと考えていたが……確かに、変にこだわる必要は無かったな。
手が足りないなら、雇えばいい。ここは、冒険者ギルドなんだから。
「……ふむ……」
アルバートが、僅かに思案する。
このハノンの策を、練り上げている所なのだろう。
「人質を救出できそうな手合い、そして、あまりこの件を口外しないような、口の堅い……もしくは、脅しに屈しやすい連中か。3人程、心当たりがあるな」
『脅しってお前』
「だが、パメラもなるべくなら動かしたくない……本当に面倒なんだ、立場上」
「ね、念話を受け取って、お伝えするだけです……! いわば伝書鳩みたいなもので、こ、この件に深くは関わっていません、よね?」
そこで全員の目が丸くなる。
数秒の沈黙。
「……ぷっ」
ハノン、お前……最高だぜ。
「ふ、ふふふ……ギルドマスターを、伝書鳩扱いか……ハノンくん……!」
「オォーッホッホッホ! 庶民にしては痛快な言葉だこと! 褒めて差し上げますわ!」
「え? え?」
『ぶはははははは!! 伝書鳩! でんっ、ひ~! アルバートが、伝書鳩……ひっ、ひひひ!』
「……むぅ」
あ~、いいな!
ギルドマスターを伝書鳩扱いする鉄貨級なんて、どこ探したってこいつだけだろうさ!
いい。日頃から腹周り黒くしてるこいつにこんな顔させてるだけでも、この作戦はやる価値があるぜ!
「ご、ごめんなさい! 僕、そんなつもりじゃ……!」
「……はぁ、良い。私も立場にこだわり過ぎていた。確かに、伝書鳩となんら変わらんな」
アルバートが指を鳴らすと、ドアから職員が入ってくる。その手には、一枚の羊皮紙が。
念話で持ってこさせたな? 中身は……資材置き場のリストと配置場所か。
「これを見て欲しい」
「あ~、笑いましたわ……これは、資材置き場ですわね?」
「本来ならば、別の町で活動している貴女には見られたくないが……やむを得ん。指定された区画は、この開けた空間だ。そこに行くまでのルートで最短なのが、ここ」
資材置き場は、なるべく四角形を崩さないように拡張している。
広場はそこのほぼ真ん中。ここを開けさせておくことで、迷いづらくなるんだ。
んで、町から資材置き場に入るルートだと、北西の道から入る事になる。
「まず、この周辺に見張りが何人いるかをヴォルに知覚してもらう。その見張りの目を欺くように、突入組を配置する。……そうだな、私とパメラで、左右に分けよう。フロキア青年とミス・ゴーンは、パメラと一緒に行動してくれ」
「あら、結局受付嬢も動かしますのね?」
「敵がどんな罠を仕掛けているのかわからん。人質に近い方が救出に、遠い方が罠対策に動くのが確実だ……ただし、私とパメラは伝書鳩だ。鳩は戦わん。いいな?」
「えぇ、充分です」
ギリギリの譲歩だな。
俺とハノンが中心を通り、知覚。罠やカイルの場所を探して、右翼と左翼にいるパメラとアルバートに連絡……その結果で2つの部隊を運用か。
中々様になった策だが、結果ハノンが囮ってのは変わりない。
『……ハノン、本当にこれでいいのか?』
「ハノンくん……本当に、これでいいのかい?」
俺とフロキアの視線が、ハノンに向く。
ハノンは、僅かに震えている。仕方ない事だ。危険な立場であることは変わりない。
「……はい」
しかし、今回のハノンはぶれない。
どんなに怖くても、どんなにしんどくても。引く気が無いのが見ててわかる。
そんなに恩人が大事なのか? 自分の命を天秤にかける程に?
その疑問は、これまでのハノンを見れば、もう意味がないと解るだろう。
スラムの連中に匿われていたという理由で、汚染便所の掃除を完遂した。
フロキアが代わりにゴブリン討伐に行く事になったのを気に病んで、危険な依頼を遂行した。
俺にノウハウを学んだからと……限界まで冒険者を続ける道を選んでくれた。
ハノンは、恩を決して忘れない。
かなり危険な信念だ。気が弱く、自衛できる強さもないハノンが持つには、相当に不相応な芯だ。
だが、だからこそこうなった時のハノンは、強い。
肉体ではなく、心が強い。
ならば、弱い肉体を守るのは、契約獣の仕事だろう。
「……わかった」
「フスッ」
今この瞬間、俺とフロキアは、真の意味でパーティとなっただろう。
オリアンティは、扇子越しにこちらを見ている。こいつもまた、何かを決めたように笑っている。
「ならば、私は全力で君の敵を排除しよう。ヴォル、ハノンくんは任せたよ」
「フシッ」
「フロキアさん……」
「あぁら? ワタクシもまだまだ、貴方に教える事があるんですのよ? 勝手に死ぬのは許しませんからね、庶民?」
「オリィさん……!」
くぅ、若いねぇ。オジサン当てられちまうよ。
こうなら、とことんまで全力出さないとな!
「決まりだな」
アルバートが立ち上がる。
「これより、君たちに依頼を出す。内容は市民の救出、ならびに脅威の排除だ。報酬は1人銀貨30枚。危険手当は報告と証拠によって検討しよう。いいかね?」
「はい」
「は、はいっ」
「えぇ」
「うむ、私はあの銅貨三人組に依頼を出してくる。君たちは、準備に取り掛かりたまえ」
こうして、俺達3人と、周囲を巻き込んでの作戦が決行された。
ハノンの柔軟な感性が紡ぎ出した、周囲を巻き込んでのこの事態。
必ず完遂させてやる……そう、俺は心に誓ったのであった。
◆ ◆ ◆
「……へへ……こりゃあ……参ったね……!」
そして、時は現在。この展開。
カイルは右翼側で捕らえられていた。結果、礼の銅貨3人組が救出に向かい、これを完遂。合図が成功を物語っている。
そして、ハノンや俺を狙っていたであろう狙撃部隊は、オリアンティとフロキアがぶっ潰した。
まさに、完封。ハノンの作戦勝ちである。
「大人しく武器を捨て、投降しろ……と、立場上言ってみるが、どうかな」
フロキアは、武器を構えながら男を見やる。
言葉の割に、何かやらかしそうなら即座に突き穿とうという気迫だ。
ハノンもまた、オリアンティの前に立って盾を構えている。連携が出来てきたな。
「降伏……そうだよなあ。貴族の爺にはこだわりねぇし、さっさと見限ってお縄につくのが、正解だよなぁ」
「……やはり、貴方の後ろにいるのはセゴー・テム・カムセですのね?」
「あぁ、いろいろ狡い仕事押し付けられてたよ。あの爺、水面下で地味な事しかしねぇ……ゴブリンを街にけしかけるってぇ時には、ワクワクしたんだけどなぁ」
決まりだな。
こいつを証人として確保すりゃあ、ゴブリン騒ぎの下手人も捕らえられる。
現状こいつは詰んでるんだ。諦めてくれるのが一番だが……
「だがなぁ……ここでお前と決着つけたいんだけどなぁ、角兎ぉ」
……まぁ、だよなぁ。
だったら、気絶させるしかないか。
「本当ならよ、この手は二度と、使いたくなかったんだが……まぁ人生何が起こるかわからんからよ。一応持ってたのさ。……いや、使う気なかったのは本当だぜ? でも、持ってる時点で言い訳にはならんわなぁ」
男が、懐に手を入れる。
その瞬間、フロキアが穿ちにかかった。
必殺の突きを繰り出すも……男は、肩でそれを受け止める。
こいつ、躱すでも弾くでもなく、止めやがった。
「ってぇなオイ! あ~ぁ、もう知らねぇ。知るか、全部知らん! なぁオイ角兎! ここからが本番だ! こいつ倒さねぇと、全部死ぬぞ!」
懐に突っ込んだ、無事な方の腕を引き抜く。
そこに握られてたのは……おいおい、マジかよ。
「【魔呼の符】!? 違法の召還道具じゃありませんの!」
「こぉいつのせいで人生壊されたのよ! だったら、最後までこいつに振り回されてやらぁなぁ!」
男は、手に持った札を起動させる。
眩い光に、フロキアが後退。武器を引き抜いてハノンの前に立った。
光は、一瞬。目を焼くほどではないが、夜にはきついそれが止んだ時……
『…………グルル…………』
目の前にいたのは、
「……悪魔……」
神に愛された人類にとって、不倶戴天の敵であった。




