第53話:決着
どもどもべべでございます!
ひゅー、筆が進むぜぇ!
でも出勤時間ギリギリだからもういくぜぇ!
というわけでご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~
オークは、脅威度で言えばゴブリンに一歩劣る魔物だ。
膂力はゴブリンと比べてはるかに上だし、体力もかなり高い。しかし、戦闘方法と生態という観点で言えば、ゴブリンが勝る。
まず、ゴブリンは一体一体の戦闘力が高い上に、非常に高い確率で群れる。それこそ、両の手の指で足りるか怪しい単位で群れるから、絶望しかない。
対して、オークもまた複数でまとまる習性はあるものの、全体の個体数で言えば、ゴブリンには劣る。結果として、ゴブリンの群れよりも脅威的とはみなされない。
そして生態も、オークは人を食う事があるため、そこそこの脅威度が設定されている。女性を捕らえて犯す事はあるが、こいつらは子作りの為に生殖行為を必要とはしないからめったにそういう事はない。
オークは基本、ダンジョンで生み出された存在だからだ。ダンジョン以外では滅多に見ず、ダンジョンから出た後も、個体が増えるという事がないのである。
だが、ゴブリンは狙って人を襲い、捕らえて子作りの道具にするし、非常食にもする。この劣悪さが、ゴブリンの脅威度に拍車をかける。
結果として、オークはゴブリンよりも脅威度が低く、それ故にオークを狙って活動する冒険者は多い。
しかし、しかしである。これはちょっとした罠というか、ややこしい所がある。
オーク一体の戦闘力と、ゴブリン一体の戦闘力。これを比べると、はるかにオークが勝るのだ。
確かに、オークは遅い。攻撃は銅貨級でも避けられるし、囲めば割と楽に倒せる。
だからこそ油断されがちだが、戦闘とは何が起こるかわからない。
敵の会心もあり得るし、こちらの痛恨も視野に入れねばならない。条件が同じであれば、ゴブリンよりも油断できない相手だと言える。
「「グオォォォォ!!」」
「フスッ、ッ!」
「ちいっ」
そう、現状の俺達のように、思わぬ苦戦を強いられることもあるのだから。
思い切り振り回された棍棒を、後ろに跳んで避ける。この棍棒は範囲があるため、軌道にはフロキアも含まれていた。
それをちゃんと把握していたフロキアも、すんでの所で回避に成功するが、反撃に繋げる事はできない。もう一匹が、フロキアを狙っているからだ。
その連撃を阻止するために、俺は攻撃体勢のオークに向かって跳躍。その顔面に蹴りを入れる。だが、オークは咄嗟に動き、腕で蹴りを防いで見せた。
まるで丸太を蹴ったみたいな衝撃。当ったのが腕では、たいしたダメージにはならないだろう。
「オォォ!」
「っ!」
狙いを蹴ってきた俺に変更したオークは、着地した俺を棍棒で押しつぶしにかかる。
だが、この攻撃は振りかぶっての叩きつけなため、初動が遅い。そこは余裕を持って回避できた。
……そう、回避はできるのだ。
「やはり、後ろにやらずに戦うという条件では……火力が足りないな」
フロキアが小さくぼやく。まったくもってその通りだ。
オークの強みは体の頑強さ、そしてこのタフさである。剣を武器とするフロキアはコンスタントにダメージを稼げているが、いかんせん細剣では一撃の痛痒はそこまでではない。
「はぁっ!」
「グギィィ!?」
故に、こうして相手の腱や筋を狙い、じわじわと行動を制限していく戦いを強いられる。一撃を貰えば巻き返されかねない状況で、この戦い方は神経をかなり使うから消耗も早いだろう。
対し、俺もまたダメージを稼げるかと言われると、これはフロキア以下である。
まず、いくら【身体強化】を乗せた所で、オークの頑強な肉体を崩す事は難しいのだ。
所詮この体は、角兎だ。人間やゴブリンなどの、防御の薄い存在には強気に出れても、こういった手合いには明確な種族差が出る。
もちろん、顔面などの有効部位を狙えばその限りではないが……先ほどの結果を見ればわかる通り、いつもその方法でやれるわけではない。肥蜥蜴のように本能で動く存在とは違い、オークには戦闘に置ける基盤があるからだ。
結論から言って……俺とフロキアでは、後衛を守りながらオークを殲滅するのは難しい、という事になる。
ならば何故、オークなんて依頼を受けたのか、という話しになるが……
「さぁ! 後はオークだけでしてよ!」
「っ、はい!」
まぁ、仲間がいるしな。
どうやら、オリアンティとハノンは、上手いこと大蝙蝠を討伐できたらしい。これならば大いに目はあると言える。
「ふう……形勢逆転か」
「フスッ」
そう、オークを倒すのは、元々俺らの仕事ではない。
魔法職であるオリアンティ頼りであり、なにより、ハノンの訓練の為に依頼を受けたのだ。ここはしっかり決めて欲しいもんである。
「『水よ、命の源よ。主を守る盾となりて、潤いを持って事を成さん』……【ウォーターシールド】!」
ハノンの詠唱の後、フロキアの周囲に水の盾が展開される。
まだ盾は一つだけだが、これでフロキアも多少は強気に出れる事だろう。
「ありがたいな」
クスリと笑い、レイピアを構えるフロキア。
腰を落とし、突きの姿勢だ。一気に距離を詰め、オークに肉迫する。
「っ、オォォ!」
慎重だったフロキアが、いきなり突っ込んで来た事に虚を突かれたのだろう。オークは咄嗟に腕を振るい、弾き飛ばそうとする。
しかし、浅い。雑に振るわれた一撃は、フロキアの間に割って入った水球に受け止められ、さらに勢いを軽減させられた。
「ぐっ……!」
結果として、オークの一撃はフロキアの肩に命中こそした。が、先ほどまでの痛打からは程遠いものだ。
腱を斬られ、いつも以上に力の入らない状態でもある。フロキアの勢いを殺せるものではない。
「っ、はぁぁぁ!!」
そして、ギリギリまで勢いをつけて走り込んだフロキアから、会心の突きが放たれる。
その一撃は、無理な迎撃で体勢を崩されたオークの胸へ、真っすぐに吸い込まれていった。
「――――――――」
フロキアが、得物を抜く。
たとえ頑強なオークとて、心臓を一突きされればひとたまりもない。口から一筋の血を流し、奴は背中から倒れていった。
「ッ……グォォォォ!」
残されたオークは、相方を殺した存在に向けて歩を進め始める。
しかし、そうは問屋が卸さねぇ。さっまでお前の邪魔してた、ちっぽけな兎を忘れてないかい?
「フシッ!」
「っ!」
相手の視界の高さまで跳躍し、蹴りを放ってやる。
怒りに任せていたオークは、この一撃をかわせない。顎を蹴られ、僅かにふらつき、足が止まる。
そう、足さえ止まれば、ダメージなんて関係ねぇ。
「『ここは少々寒いわ……今すぐ体を温めるものを準備なさい』」
なんでって、コワイ御貴族様がいるからな。
「『無いなら貴方が薪になりなさい! さぁ、点火ですわ! 早くなさい!』」
オークの足元に、魔法陣が展開される。俺が範囲に入らないギリギリ。よくやるわ。
その魔法陣から、炎が舞い上がる。炎は、あっという間にオークを包み込み、その体を舐めた。
「グオォォォ!!」
熱さに悶え、暴れ回るオーク。魔法に抵抗できた様子は、ない。
無傷の状態じゃあ、この魔法でも仕留めきれるかは微妙だが……まぁ、軽いとはいえちまちまと削らせて頂いたからな。
多分、オークの基本体力からいって……
「……オ、ォ……」
ズシン、と、音が響いた。まぁ、耐えられないわな。
「ふ……ふふふ……オォーッホッホッホ! ワタクシに感謝する事ね、庶民の皆さん!!」
オリアンティの高笑いが、ダンジョンに響く。
こうして、俺達はなんとか、勝利をてにしたのであった。




