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第52話:vs大蝙蝠(ハノン視点)

どもどもべべでございます!

嬉しい事があったので、連日投稿!

どうぞ、お楽しみあれ~

 

 カサッ……と、靴が芝を噛みます。

 なるべく静かに、慎重に距離を詰める。向かう先は当然、あのオークと大蝙蝠ジャイアントバットの元です。

 僕は盾を構えながら、オリィさんと一緒に後方から徐々に距離を詰めるよう言われました。今は、ヴォルさんとフロキアさんが先行中です。

 ヴォルさんが突っ込んだら、魔法が届く距離まで走ってくるようとの事ですので、タイミングを逃さないように見ておきます。


「……いい事? けして無茶だけはしないように。わかってますわね?」


「は、はい」


 オリィさんの言葉は、かなり際どい時もありますが、基本的には他者を考えて発言しているのだとわかるものです。

 今もまた、僕を心配してくれているのがわかります。本人に言ったら、貴族として当然とか言うんでしょうけど。

 フロキアさんも、僕をなるべく危険に晒さないように動いてくれている……こうしてダンジョンに来ること自体が危険だとしても、最大限守るつもりでいるのでしょう。

 それは、とても嬉しい事です。


「……オリィさん、合図です」


「わかりましたわ。動きがあったら、すぐに魔法の射程まで走りますわよ」


「はいっ」


 だからこそ、僕も応えたいのです。

 一緒にいてくれるヴォルさんに。

 手を差し伸べてくれたフロキアさんに。

 教えてくれるオリィさんに。

 もちろん、それで無理をして、命の危険に晒されては本末転倒だと思います。僕はまだ弱いから……でも、オリィさんの手助けくらいなら!


「動きましたわ! 行きますわよ!」


「は、はい!」


 ヴォルさんが、オークに向けて跳んだのが見えました。同時に、フロキアさんも。

 オリィさんの掛け声に合わせ、僕も走り始めます。この時に呪文を唱えられればいいんですが、僕はまだ、止まって集中しないと魔法を使えません。

 だからこそ、ヴォルさんとフロキアさんが戦線を構築してくれるのです。ありがたくも情けない。


「さぁ、ここまで来たら問題ありませんわ! ワタクシを守る栄誉を与えます。誇りを胸に盾を構えなさい!」


「っ、はい……!」


 オリィさんの号令で、僕の心は僅かながらも奮い立ち、恐怖を和らげてくれました。まるで、吟遊詩人が唄うワンシーンのようでカッコいいです。

 あの時聞いた唄では、無双の騎士が千の兵からの連撃を盾で防いだという逸話でした……僕がそんな存在ではない事は明らかですが、今この瞬間だけは、オリィさんを守る盾でありたいと思います!


「すぅ……『水よ、命の源よ。主を守る盾となりて、潤いを持って事を成さん』……【ウォーターシールド】!」


 だからこそ、今ここで使うべきは、防御魔法。そして、指定相手は僕自身ですっ。

 ウォーターシールドは、指定した人物の周りに水の塊を浮遊させる魔法です。この水球は、魔法の対象になった人が害を受けようとした時、個数分だけ自動で動いて攻撃を受けてくれるというもの。

 僕はまだ一個しか出せないので、僕が受ける攻撃を、一度だけ防いでくれる盾を出したというわけですね。


 ただ、この魔法は維持が必要で、維持のためには集中する必要があります。習熟すれば水球を複数展開しながら攻撃行動に移れたりするそうですが、僕はまだその域には達していないため、この水球を出したままオリィさんを守るべく棒立ちになってる感じです。

 まさに、仲間がいないと取れない手ですね。維持したまま移動ならできるので、なるべく足手まといにならないようにしないと……。


「そのままウォーターシールドを展開していなさい。ワタクシは大蝙蝠を堕としますわ」


 オリィさんの体を、魔力が包みます。

 魔法は、魔力さえ持っていれば、覚えること自体は簡単です。僕なんかが複数個の魔法を覚えてる時点で、それはわかると思います。

 しかし、いざ使うのは、本人の素質に左右されるんだそうです。攻撃魔法を覚えても、僕みたいにヘロヘロになることもあれば、ウォーターシールドを一つも生み出せない人もいるらしいです。


 しかし、オリィさんは今まで見た限り、安定して強力な魔法を打ち込めています。これが経験によるものか、素質によるものかは、まだ僕には判断できませんが……抱いてしまうこの気持ちは、ヴォルさんに抱くそれに近いです。

 憧れ、そう、憧れなのでしょう。


「……チッ、こちらに来ましたか」


 魔力を練る過程で、オリィさんが舌打ちします。向こうの動きを見ていたから、僕にも何があったかはわかりました。

 ヴォルさんが、オークの気を引きながらも、大蝙蝠の一匹を蹴り落としたのです。これで、僕らの所に来るかもしれない存在が2匹に減ったのはかなりありがたい事でした。やっぱり、ヴォルさんは凄い!

 でも、それによって大蝙蝠は、ヴォルさん達を狙うのをやめたようです。残りの2匹は、真っすぐこちらに飛来してきます。


「予定変更ですわ! 『石くれの槍を持ちなさい! 土くれの盾を構えなさい! 突撃チャージ突撃チャージ突撃チャージでしてよ!』」


 呪文を唱えると同時に、石の槍が空中にバキバキと出現。

 大蝙蝠の一匹に飛来します。あれは、【ストーンジャベリン】だったかな。

 多分、離れてる間に2匹まとめて攻撃するつもりだったんだと思います。けど、早めに近づいてきたから、僕を巻き込まないように単体に切り替えた、のかな。


「ギ……!?」


 石の槍は、大蝙蝠の飛膜に直撃。血を弾けさせながら落下します。

 凄い……【ストーンバレット】よりも【ストーンジャベリン】のほうが難しいって言ってたのに、こんなにあっさり打てるなんて。

 っとと、今はもう1匹に集中しないと!


「キィィィ!」


 やっぱり、もう1匹がすぐそばまで来ていました。

 狙いは、僕……じゃなくて、オリィさん! 脅威と思われたのでしょう。


「っ」


 咄嗟に相手の前に出て、オリィさんを庇う……つもり、だったんですが、一瞬足が止まってしまいます。

 怖い、んです、やっぱり。

 でも……


「っ、あぁ!」


 オリィさんが、僕に栄誉をくれました。

 ヴォルさんが、フロキアさんが、僕のわがままを認めてくれました。

 皆さんに助けられて、受け止める回数は一回。そう、一回でいいんです。

 ならば、怖がっていてなんになりますか!


「ギィ!」


「うぐ……!」


 足を無理矢理動かして、相手の突撃の射線上に。

 水球が、大蝙蝠を受け止め、パァン! と割れます。

 そして、減速した攻撃は、僕の盾へ。


 ガィン! という鈍い音。僕程度が、吹き飛ばない一撃。

 盾の中心で受け止めきれず、体勢は崩れてしまいましたが……なんとか僕は、敵の攻撃を受け止める事に成功しました。


「よくやりましたわ! 褒めて差し上げます!」


 後ろでオリィさんの声が響きますが、今の僕は心臓バクバクで、答える余裕がありません。

 けど、この高揚感……! 仲間を、少しでも守れたんでしょうか……!?


「『槍を追加なさい! この一撃を祝福となさい! 騎士の誉れに応えなさい!』」


 オリィさんが、もう1発ストーンジャベリンを打ち出します。呪文が適当なのって、ズルい気がします。

 石の槍は、体勢を崩して空中に戻った大蝙蝠に直撃。飛膜を穿って地面に叩き落とします。

 大蝙蝠……3匹、全て倒せた……!


「さぁ! 後はオークだけでしてよ!」


「っ、はい!」


 そ、そう、まだダメ、安心しちゃ。

 ヴォルさん達を、支援しないとっ。

 

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