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第4話:そして契約後

どもどもべべでございます!

今回で冒険者登録し、次回からいよいよ冒険開始!

とは、なりません。

あくまでもシビアに、全力で少年を冒険者に導きますよーっ。

というわけでご投稿! どうぞ、お楽しみあれー

 

 あとは、前に話した通りさ。

 俺とハノンはめでたく契約し、主従となった。

 同時にハノンは冒険者の資格を手に入れるために必要な、技能を手に入れた。従魔師テイマーという技能をな。


『つう訳で、これからギルドの受付に行って、冒険者登録をしてもらう事になる。本当なら金がかかるんだろうが、今回は免除だとよ』


「はぁ……あんまり嬉しくない免除です、ね」


『まぁそう言うなって。アイツなりに落とし所を見つけるのに必死だったのさ。……内容はまんま脅迫だったけどよ』


 アルバートの部屋から出た俺たちは、念話で会話をしながら廊下を歩く。

 モンスターと契約を結んだ従魔師は、その契約相手となら意思の疎通が可能になる、それがこの念話だ。

 中にはアルバートのように、個人で念話が使えるやつもいるんだが、それは魔法使いとして熟練の域に達してこそ可能な技だ。

 従魔師ってのは限定的だが、そんな力の一部を使えるようになる。故に、魔法職として位置づけられている。だから、冒険者として契約が可能なわけだな。


 ちなみに、今俺はハノンの頭の上に乗っている。これが存外乗り心地がいいもんで、ついつい寝そべるように体を預けてしまう。

 周りから見たら、ハノンは角兎ホーンラビットの毛皮を頭にかぶった少年に見えるのだろうか?


『ところで、なんで冒険者ギルドだったんだ?』


「え?」


 せっかくだから、今廊下に誰もいないタイミングで聞いてみる事にした。

 この町の住人ならば、アルバートが冒険者ギルドのギルドマスターだって事を知らないってことはないはずだ。

つまりこいつは、他でもないアルバート本人を選んで保護を頼み込んだ事になる。そいつはなぜか?


『言っちゃあなんだが、アイツの評判は悪いぜ? 何考えてるかわからねぇ、人を駒みてぇに扱うエルフってよ』


「……えと……」


『ぶっちゃけ、【労働者ギルド】でも良かったんじゃないか? いや、お前さんが少しのプライドを捨てりゃぁ、【娼館ギルド】でもよかった。その器量なら、男娼になりゃ少なくとも食いっぱぐれるこたぁねぇだろうに』


「っ……そ、その2つは……嫌、だったんです……」


 ほう。

 明確に、その2つのギルドが嫌ってかい。


「娼館ギルドも……労働者ギルドも……怖い、ので……」


『怖い、ねぇ』


「……僕の、家族も……あそこには、関わるなって……」


 ……なるほど、家族ね。

 こいつが今一人であることを考えて、その言葉が何を意味するのかは想像に難くない。

 だったらまぁ、仕方ねぇわな。


『悪い悪い。もう聞かねぇよ』


「……いいん、ですか?」


『別にいいだろ。……それより、冒険者ギルドでも逃げたくなるくらいの理不尽に巻き込まれてるんだが、お前絶対不幸体質だろ?』


「うぐぅ! ……ヴ、ヴォルさんに、言われたくないです……! 今の姿見てよく言えますねそれ……!」


『お? 今のはクリティカルだぞオイ。やるかおぉん?』


「あぅっ、あぅっ、前足でほっぺ突かないでぇ、もふもふするぅっ」


 こいつが何を見たかなんてのは知らないし、言いたくないならそれでいいさ。そんな事より、こいつに基礎を叩き込んで死ななくすることの方が優先だ。


『ほれほれ、さっさとギルドのカウンターに行くぞ。アルバートが言ってた通りの6番な、6番』


「……ヴォルさんから話し振ったのに、理不尽だ……」


『大人はズルいもんなんだよ』


 軽口叩き合っている間にもハノンは歩を進めていき、やがて人の気配が濃密になっていく。

 廊下を抜けしばらく進んだ先には、一枚の扉。その扉を開けた先の喧騒は、先ほどまでの静かな空間とは一線を画す別世界と言える。

 武器を担いで歩く大男、掲示板の書類を眺める獣の女性。

 買取カウンターでは、4人のパーティーとギルド職員が、素材の値について喧々囂々と議論を交わし合っている。

 そう、ここは冒険者ギルドの総合受付。いわゆるロビーが広がっている空間だ。


「うぅ……いつ見ても、慣れない」


『今日からここが根城になるんだから、そういう軟弱な発言は控えるようにな』


 ま、とりあえず今は登録だ。

 アルバートに言われたカウンターは、6番。そこにいる受付嬢が対応すれば、無料で冒険者資格を発行してくれる。

 すなわちそれは、少なからずこちらの事情を理解してくれてる相手って事だ。


「えと、6番……あ、あった」


『……あぁ、やっぱりアイツだ……』


「うわぁ……綺麗な人」


 そこにいたのは、素直に見目麗しいと称賛できる女性だった。

 金色の髪、青い瞳。女性的な輪郭と肉体美。ギルドの制服を完璧に着こなしつつも、ワンランク下のサイズを着る事で己の身体を最大限にアピールしてやがる。

 なにより、その微笑みと唇が男を容易く篭絡できるコツと言わんばかりに劣情を責め立てる。

 結論から言って、なんか雰囲気エロい女がそこにいた。


「いらっしゃい坊や、冒険者ギルドへようこそ。受付を務めております、パネラと申します」


「は、はいっ。 あ、あの、ハノンって、いいます! 登録をしたくて……」


「えぇ、聞き及んでおりますよ。書類を今すぐお持ちいたしますね」


 なんかエロい女……パネラは、ニコリと微笑みながらてきぱきと受付を始める。

 その一つ一つの動作で、ロビー内の男どもの大半が視線を右に左に誘導されちまってるのが情けない。

 振り向きざまに一瞬髪をかき上げる仕草など、一々男の視線を集めようとしているようだが……って、ハノンもなんかぽ~っとしてるな。うぅん、こりゃいかん。


『おいハノン、あんまりアイツの色香には惑わされん方がいいぞ?』


「うぇ!? そ、そんなこと……」


『あんななりしてるけどな? アイツは俺よりも年う————』


「おう小僧、女っ子の年齢をばらすなんて感心しないねぇ?」


「フスッ!?」


「ヒッ!?」


 俺たちが視線を向けると、そこにはうっすらと笑みの向こうでこちらを狙ってる蛇の如き眼光が視認できた。

 相変わらずの化け物ババアだ……念話まで盗聴できるのかよ……!?


「せっかく若い燕から溢れんばかりのエキスをいただこうって時に、水を差さないでほしいもんさね」


『……へっ、あいにくと御主人様を守るのがしがない契約獣のお勤めでねぇ』


「形は随分と愛らしくなったが、軽口は相も変わらないのかい。死んだって人間は何も変わらないって証明されちまったね」


『うっせぇ。良いからさっさと手続きを勧めろよ』


 かたや念話、かたや他に悟らせぬ極小の声での殴り合いだ。周りには聞こえてねぇだろう。

 俺の下にいる、哀れな御主人様を除いてな。


「あ、あの、ヴォルさん……彼女は一体……」


『あぁ、こいつはパメラ。見てくれはまぁ褒められるくらいに良い女だが、中身はとんでもねぇ化け物だ。今は隠居して受付嬢やってるが、元は冒険者やってたババアだよ。俺の事情をアルバートから伝えられてる、数少ない相手の一人さ』


「本当に減らない軽口だねぇ……まぁそういう事さ。これから坊やの世話も請け負ったからね、依頼だのなんだのはアタシの所に持ってきな」


「あ、ぅ……は、はい……」


 ハノンが頷くと同時に、パメラは「よろしくお願いします♪」と歳に不相応なリリカルスマイルを発動して俺らを黙らせた。

 これ以上年齢関連の事を言うとヤバい。そう本能が語り掛けてくれている。ありがたくそれにすがろうじゃないか。


「それじゃあ、早速登録といきましょうか。書類はこちらで既に作っておりますので、ハノンさんは名前を書き込むだけで構いませんよ?」


「えぁ、そ、それだけですか?」


『んなわけねぇだろ……本当なら技能の詳細や使用する武器などを事細かに書かなきゃならん。この書類は、周囲を納得させるためにアルバートが用意したもんだろうよ』


 ちらりと覗くが、従魔師が技能の欄に書かれており、経歴などは適当にでっち上げられているのがわかる。魔法使いとしての素養を見出され修行中とか、まったくの出鱈目じゃねぇか。

 とはいえ、メンドクサイ上に金までとられる手続きを10秒で通せるんならありがたい話ではある。


「大丈夫ですか? 文字、書けます?」


「は、ハイっ、わかります」


「まぁ素敵! じゃあ、このペンでお書きくださいね?」


 パメラが羽ペンを渡す瞬間、少しばかりハノンの指を撫でたのがわかった。一瞬ビクッとなったし。

 お盛ん過ぎるぞババァ。自重しろや。


「……フンっ」


「フーっ」


「あ、あの、書けました……!」


 俺たちがにらみ合っている間に、ハノンは名前を書いて書類を提出する。

 うん、綴りも間違ってねぇな。この歳にしちゃしっかり勉強できている。


「……はい、ありがとうございますっ。では、冒険者カードを発行いたしますね?」


 奥に引っ込み、待つことしばらく。

 俺たちがこれからについて話している間に、パメラは一枚のカードを持って帰ってきた。


「はい、お待たせいたしましたハノンさん。改めて、冒険者ギルドへようこそっ」


 手渡してくるそのカードには、ハノンの顔が念写されており、その顔の横には【ハノン】としっかり名前が明記されていた。


「あ、ありがとう、ございます……!」


「んふふ、頑張ってくださいね?」


 こうしてハノンは、晴れて冒険者になったのであった。

 それはもう、あっさりと。

 

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