第40話:vsヘビーリザード
どもどもべべでございます!
夏のホラー企画ですか……さて、参加するか否か。
ホラーは書いててもなんか変な方向にいっちゃうしなぁw
ま、それはそれとしてご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~
肥蜥蜴の反射神経は、けして悪くない。相手の気配に敏感故に、不意打ちは難しい。
現に、フロキアが突貫した時には、既に3匹ともこちらに顔を向けていた。つまるところ、真っ向きっての総力戦だ。
「ヴォル、右を頼む!」
「フシッ」
お相手は合計4匹、奥の1匹がどこに突っ込んで行くかわからない分、速めにケリをつける必要がある。
こういう時は、火力のあるフロキアが1匹相手に集中し、俺が2匹を抑えておけば良い。
フロキアもそれは承知していたらしい。わずかに離れていた左奥の肥蜥蜴にヘイトを向けていた。
「さぁハノンさん、魔法の準備をっ」
「は、はいっ」
後ろでもレクチャーが始まってるな。ならば、俺はその授業をうまく回す手伝いといくか。
あえて攻勢にはでず、目の前の2匹に対して威嚇する。挑発をすることで、後衛に興味を持たせなくすることは大切だ。
「シャアアアア!」
肥蜥蜴が、歯をむき出しにして突っ込んでくる。こいつらにとっちゃ、魔物である角兎だって立派な餌だからな。
だが、それは予想通りと言わざるを得ない。単調な突進、噛みつきなんぞ、見てから回避余裕である。
「フシッ!」
突っ込んで来た肥蜥蜴の噛みつきを、頭上スレスレに跳躍して回避する。背中の毛に牙が掠ったが、このくらいの距離が反撃には丁度いい。
空中で前転し、その瞬間に【身体強化】を発動。噛み合わさった肥蜥蜴の平たい顔面……眉間の位置に、思い切り踵を叩き込む。
「……!?」
骨が砕ける感覚。肥蜥蜴は尻尾を跳ねさせて痙攣している。
だが、ここで一息もつけないし、追撃もできない。何故なら、挑発した2匹目が迫ってきているからだ。
相手の牙が目の前まで来ているため、体を転がして避ける。避けた攻撃は……当然、近くにいる奴に向かう事だろう。
結果として、肥蜥蜴の攻撃は、痛みで悶える相方の脳天を食い破り、楽にしてやる結果となった。俺1人の火力じゃあ、殺しきれんかったからな。助かるぜ。
「チッ……こちらに来たか」
左奥では、フロキアがムスッとした声を上げている。
どうやら、見えなかった1体はあちらに向かったようだ。ちらりと目を向けると、片目が潰れ、血を流している肥蜥蜴と相対しているフロキアがいる。その近くに、もう1匹の肥蜥蜴。
本来ならば、フロキアが追撃を放っていた事だろう。しかし、もう1匹が邪魔をしてきたため、距離を置いたようだった。
「『清浄なる水をここに。我が敵を打ち倒す槍となりて、天翔け突き進まん』……ウオータースピアっ!」
ハノンのウォータースピア……ウォーターボール? は、目の傷ついている肥蜥蜴に向かっていく。
しかし、肥蜥蜴は傷つきながらもこれにあっさり回避。パシャンという音を立てて、地面を濡らしただけに終わった。
魔法というのは、回避できるものと、抵抗しかできないものがある。ウォータースピアなどの、物理法則に乗っ取った攻撃魔法は、回避が可能だ。
フロキアがターゲットを取ってくれていたから、普通なら当たる所なんだがな……まぁ、あのウォータースピアに当る奴は、相当弱ってるか鈍重な相手だな。
「明確に敵を倒すことをイメージしていますの!? やらなければやられる! 味方が傷つきますわよ!」
「あ、うぅ……!」
ふむ、まぁ、しゃあない。
ここは、もう1匹の肥蜥蜴を仕留めてフロキアの加勢に急ぐとしよう。
と言っても、1発じゃ無理そうだがなっ。
「フシッ!」
「っ!?」
肥蜥蜴めがけて突進し、顔面まで接近した所で、身を屈める。
やっこさんの視界からしたら、俺が消えたように見えたろう。しかし、肥蜥蜴は物を見るよりも、舌で感覚を把握する方が過敏で速い。俺が目の前にいるってのはわかってるはずだ。
だから、俺はノンタイムで奴の懐にもぐりこみ、顎を蹴り上げた。
「……っ!」
背が反り、半身がわずかに浮く。だが、流石に相手も重量級。意識を刈り取るには至らなかったようだ。
反りが急激に力み、体を押し戻していくのを感じる。咄嗟に後ろに跳ぶと、俺がさっきまでいた場所に肥蜥蜴の前足が落ちた。
同時に相手は体を回転。薙ぎ払うように、尻尾を振り回す。
「ッシ」
剣などとは違い、しなる重い尻尾だ。角で受け流したら首がいかれちまう。
後ろに跳んだ勢いを活かして、更に地面を蹴る。体は空中で弧を描き、くるくると視界が縦に回る。
ま、目が回るなんてこたぁない。着地までモフンと決めて、完全回避だ。
さて、どうするかね……フロキアは今、1匹目を斬り伏せたようだ。これで後は、無傷なのが1匹。そして、俺の前に1匹。
フロキアの加勢に行きたいところだが……今の打撃から察するに、次の1撃でも落ちそうにねぇんだよなぁ。まぁ、後ろに行かないようにタンクかね。
そう思っていた、その時だ。
「『火よ! 火をもってきなさい! ありったけかき集めてアイツを燃やすの! これは命令よ!』」
っ……!
俺は、突っ込もうとしていた足を止める。
その瞬間、肥蜥蜴の足元から、火柱が上がった。
「シャアアアアア!?」
肥蜥蜴は、その身を焦がされて悶えている。
火魔法の、【フレアサークル】か。【ファイアボルト】などの魔法と違い、避けれない類の魔法だ。
こうなると魔法に抵抗するしかないんだが……うん、あれは無理そうだな。
「いいこと庶民。倒す意思とは、こうやるのです!」
「ふえぇ……」
オリアンティの魔法により、肥蜥蜴が動きを止めていく。
その身が完全に燃え尽きる前に、魔法が止まる。後は、火傷の継続ダメージでお迎えがくるだろう。
肉が剥ぎ取れそうなギリギリの加減だな。流石である。
さて……そうなると、後は1匹だな!
「ヴォル! 奴が逃げるぞっ」
「フッ」
無勢を悟ったか、最期の1匹は踵を返して逃げようとしている。
だが、そうは問屋が卸さねぇ。俺は地を蹴り、相手のルート上に身を躍らせる。
即座に肥蜥蜴が噛みついてくるが、これも跳躍で回避。頭を踏んで、バランスを崩させる。
奴は足を止めてしまい、追いついてきたフロキアにも囲まれることになった。
「すまない、思いのほか手間取った」
「フスッ」
ま、こいつらタフだしな。気にすんな。
「…………!」
肥蜥蜴が、威嚇してくる。しかし、もはやこの場でそれに対してビビるのは、ハノンしかいなかった。
俺の蹴りと、フロキアの剣が迫る。
結果、肥蜥蜴はその場に体を横たえる事となったのであった。
ちなみに、ハノンがもう一回魔法を唱えていたが、結局当らずじまいであった事をここに明記しておく。




