第36話:目ざとい長耳
どもどもべべでございます!
期日一週間以内! ギリギリセーフ!
いやぁ、インド人とかウニとか企画してたもんで!(よくわからない)
そんなこんなでご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~
「なるほど、良いものを見せてもらった」
俺たちの模擬戦が終わった辺りで、声がかかった。
おう、なんか久しぶりに聞いたな。そういやぶん殴ってやる決意固めてたっけか。
俺が警戒を露わにそちらを向くと、案の定あいつがそこにいた。
「あ、ギルドマスター!」
「すごいですよ~! すごい角兎がいるんです~!」
「俺らもうびっくりしましたよ! 銀貨級のフロキアさんを一蹴したんすから!」
そう、そこにいたのは予想通り、ギルドマスターことアルバートだった。
何やら不敵にこっちを見てるが……いつものごとく何かしら企んでんのか?
まぁ、だからって関係ないけどな。俺は今、仲間に稽古つけてやってるだけだしよ。
それにしても、直接顔を合わせるのはあの時の依頼を受けて以来だな。余程最近忙しかったとみえる。
「……すまない、通してもらっても?」
「あ、すみません〜。ほらほらあんた達、行くわよ〜!」
「「お、おう!」」
うぅん、なんつうか、こういう時あの3人は要領がいいな。
面倒くさい流れになりそうな雰囲気を察して、即座にこの場を後にしやがった。冒険者をやってく上では、こういう空気の読み方は割と重要であることも多い。
あいつらは万年銅貨ではあるものの、万年がつく程度に生き残れている時点で勝ち組だと言える。
「せいが出るな。ハノン少年、フロキア青年」
「ご無沙汰しています、ギルドマスター」
「こ、こんにちはっ」
しかし惜しいな。ここにフロキアがいなければ、蹴りを飛ばしてやったのによ。
流石に今やったんじゃ、フロキアにもなにか罰が下るかもしれねぇしな……だいぶ疲労もたまってるみたいだし、ここは自重だ。運が良かったな、長耳。
「ハノン少年、先日の活躍は聞いているよ。君のおかげでグランアインに蔓延る膿を取り除けるかもしれない。協力に感謝する」
「い、い、いえ! 僕は、なにも……」
「その謙遜は、契約獣に対して失礼だ。今だけは素直に私の労いを受け取ることを勧めるが」
「ぁ……」
一瞬ハノンと俺の目が合う。
いや、むしろ俺がお前に対して危険な目に合わせた事を謝ったんだから、気にしなくていいんだが……。
「わ、わかり、ましたっ」
こういうとこ、こいつ真面目なんだよなぁ。
「うむ、そして……フロキア青年。君がハノン少年と組んだという件は、私の耳にも先ほど入ったよ」
「……はい」
「彼はまだまだ鉄貨級だ。銀貨級の君とは一緒に行けない依頼も多いと思うが、大丈夫かね?」
「私もしばらくは、銅貨級以内の依頼をこなしていくつもりですのでご安心を。……私の肩書があれば、鉄貨級の彼も銅貨級までの依頼を受けられるでしょう?」
「ふむ」
……言葉の端に、『だから銅貨級以上の依頼を持ってくるなよ』という、フロキアの牽制を感じるな。
ナイスだフロキア。これならアイツが無理難題を割り込ませにくくなるだろう。
「その角兎の実力は私も評価している。そんな彼が銅貨級の依頼をこなしてくれるのであれば、私としても何も言うことはない。……銅貨の人手が、足りないからな」
「あ、あの、僕もがんばります……!」
「あぁ、よろしく頼むよ」
アルバートはハノンの頭をくしゃりと撫で、踵を返す。
最後に、チラリと視線だけを俺の方に向けてきたため、鼻を鳴らして前足を払ってやった。
しかし、まだ用はあったらしい。俺との間に繋がる魔力の気配……念話だ。
『ヴォルフガング……一つ忠告だ』
『あん?』
『しばらくは小さな依頼をこなして、存在を薄めておけ。……少なくとも、私の仕事が終わるまではな』
『なんだ、この前の貴族が俺らを狙ってんのか?』
ゴブリン関連に関わってたのは、ガジルデの話で考えれば、貴族で間違いない。
そして、その情報を握っていたガジルデを逃がしたのは、ハノンと俺だ。狙われてもおかしくないとは思っていたが……。
『それもあるが、な。どうもそれだけでは無さそうだ』
俺達から背を向け、離れながらアルバートは続ける。
『盗賊ギルドが、数人の間者らしき人物がいると報告してきた。探っているものが何かはわからんが、お前の存在がバレないにこしたことはない』
間者ねぇ。ゴブリンとやり合い、冒険者が減り、町の兵士たちが忙しくなって警備が薄まったタイミングに?
どうにも偶然が重なるもんだな。あぁ、もちろん皮肉だぜ?
『忠告ありがとよ。……ありがとついでに、俺が元に戻れそうな情報は見つかったか?』
「…………」
あぁ、芳しくない感じかね。
気にすんな、と前足を振ってやると、アルバートも軽くため息をついて切り替えてくれた。
『少し、荒っぽい方向をつついてみる。どうにも、正攻法では難しいかもしれん』
『あまり無茶はすんなよ。色々仕事増えてんだしな』
『ふん、全てこなしてみせるさ』
そこまで会話して、アルバートは去って行った。ホント、過労死しなきゃいいんだけどな。
さて、これで残ったのは、俺とフロキア、ハノンか……。
『んじゃ、訓練再開だな。次はハノンだぞ!』
「えっ? あ、は、はいっ!」
「ん、どうしたハノンくん」
「ヴ、ヴォルさんが、訓練再開って……」
「あぁ、結局まだ私との模擬戦しかしていないからな。防御の仕方に専念しているんだったかな?」
はい、と返事をするハノンに頷き、フロキアは木刀を握りなおす。
「それじゃあ、私と一緒に対人戦も学んでおこうか。武器をどういなすかも学んでおいた方がいいだろう」
あぁ、それはありがたいな。
武器を持つ存在を相手にして防御を学ぶのは、流石に今の俺じゃあ口しか出せねぇ。フロキアがそこんとこを埋めてくれるのは、ハノンにとっても良い経験になる。
一つ一つの経験が、良好な結果に繋がるからな。是非相手をしてもらうといい。
「え、えと……それじゃあ、よろしくお願いいたします……」
「あぁ、わかっているかと思うが、武器の軌道はそれぞれであり、動作が複雑だ。まずはその辺から学んでいこうか」
こうして、ハノンとフロキアの、対人訓練が始まったのであった。
その訓練は昼過ぎまで続いたが、ゆっくりとした基礎訓練と体力造り、後は武器それぞれに関する座学だったため、ほとんどハノンに疲れは無い。
うん……先に座学から始めるあたり、俺とはまったく教え方が違うな。俺は体力造りとストレッチの後、しょっぱなから受け止めてみろ! な実戦訓練だったからなぁ。
今の子って、こういう言葉から入る形のがいいのかね? 俺のやり方、もしかして古い……?
「? ヴォルさん、どうしました?」
『いや……な、なんでも』
最後の柔軟運動をしながらきょとんとしているハノンをはぐらかす。
う~ん、やり方変えるにしても、どうするかね。あまりハノンの負担にならんよう、実戦を減らすか?
「あ、そうだ」
『あん?』
「あの、明日の訓練……フロキアさんに教えて貰った事、やってみたいので……実戦、多めにしてもらっても、いいですか……?」
「…………」
「その、魔物と戦闘する時にも、使えそうな動きがあったので、体に覚えさせたくて……ヴォルさんと訓練すると、しっかり覚えられますので……」
そう、か。
そう思ってくれてるか、ハノン。
『……あぁ、良いよ』
「あ、ありがとうございますっ」
じゃあ、頭で考えるのは、フロキアに任せるかね。
おっさんはおっさんらしく、古臭くいこうじゃねぇか。
『じゃ、また明日だな』
「はいっ。……えへへ」
小さく笑い合い、俺達は体を同時に曲げる。
なんか少し、自信みたいなのを、この歳になって感じた。
少々、ヴォルフガングに戻れないかという行動を追加してみました。




