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第35話:双方の実力

どもどもべべでございます!

飯テロの後は戦闘だー! 良い所じゃんじゃん摘まんでいくんだから!

そんなこんなでご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~!

 

 腹も満たした、風呂にも入った。

 その後はフロキアと一緒にパーティの申請をギルドに出して、晴れてハノン達はコンビとなった。

 銀貨級の軽戦士と、鉄貨級の従魔師という格差パーティ。しかもどっちも顔がすこぶる良いとあって、周りの物珍し気な視線がめちゃくちゃに痛かったな……。

 後は、フロキアが例の約束で魔法使いに渡りを付ける手紙を送って、約束を果たしてくれた。これで、いずれハノンの元に魔法使いがやってくる事だろう。

 そこまでやった所で、その日は就寝。本格的な活動は、さっぱりしたのに汚すのはもったいないってフロキアの意見が通った形だ。

 んで、翌日……。


『なんでこうなった……?』


「あの、なんでこうなったって、ヴォルさんが……」


「ふむ、何でかと聞かれれば……純粋な興味だな」


 昨日と同じく、訓練場にて。

 俺はいつも通り、ハノンに稽古をつけるつもりでいたのだが……一緒に来ていたフロキアが、なんでか俺と一本打ち合いたいと言ってきたのだ。

 んで、あれよあれよという間にセッティングが進み、俺とフロキアは向かい合った形になっている。

 フロキアは細身の木刀を振って、握りを確認しながらやる気満々そうだ。


「前々から気になっていたのは君も知っているだろう? 同じパーティになったからには、ようやくその実力がどれほど私の上を行っているか知ることができる」


「フス……」


 なるほどな……確かに、フロキアは俺と一緒にゴブリンとやり合った時から、なにかと知りたそうにしていたのはわかってたさ。

 一緒に訓練場に来たのは、俺の実力を測るためか。


『別に、俺はお前より強いなんて思ってないんだが……』


「だ、そうです……」


「それは強者の余裕だよ、ヴォル。私は君が戦う姿を見た時から、君に勝てるヴィジョンが見えないからね。……しかし、それでも、自分がどこまでやれるのかを感じておきたいんだ」


『ふむ……』


「それに、ハノンくんの念話越しとはいえ、そんなにも理知的な角兎ホーンラビットは見たことがない。君という存在をもっと深く知るためにも、ここで剣を合わせておきたいのさ」


 はぁん、なるほどね。

 だがまぁ、フロキアの言う事もわかる。今後肩を並べるんだからな。

 互いの実力を知っておくことは悪い事じゃねぇ。その点に関しては、やり合うのが一番ってのは理解できる。わかりやすいしな。

 だが……ちょっとやりづらい理由があるんだよなぁ。


「おい、おいっ、フロキアさんが角兎と打ち合うってよ!」


「え~? 弱い者いじめ~?」


「いや、その割にはなんか、フロキアさんが覚悟決めた顔してねぇか?」


 周囲には、ギャラリーが何人かいるわけよ。ちなみにさっきのは、いつもの銅貨級三人組だな。

 昨日から、この2人が目で追われてるのはわかってたが……こうなるとプライバシーも何もあったもんじゃねぇな。

 ……ま、いいか。せっかくだし、ハノンが鉄貨級だからって舐めてそうな連中にも見せつけるつもりでやり合おう。


『んじゃあ、相手に参ったと言わせりゃ勝ちってことで、いいか?』


「だ、そうです……」


「あぁ、それで構わない」


 スタートの合図はハノンにしてもらう事になった。

 冒険者達がなんだなんだと見守る中、俺は気軽に屈伸などの準備運動をしている。

 フロキアは、精神を研ぎ澄ませてる感じ……こりゃマジでかかって来る気だな。


「え、えと……それでは……」


 さて、肉体の性能から言って、フロキアの一撃を貰ったらヤバそうだ。

 角兎の肉体は、けして弱くない。しかし、さして強くもない。フロキアレベルの相手だと、一撃で動けなくなる可能性がある。

 ……せっかくだし負けたくはないなぁ。


「用意……」


 ハノンが手を上げた。

 フロキアは、突きの構えで完全に臨戦態勢。

 ……ま、やるだけやってみるか。


「始めっ」


 今、戦いの火蓋が切られた。





    ◆  ◆  ◆





「シッ……!」


 合図と同時に動いたのは、フロキア。

 やはりというかなんというか……距離を詰めて渾身の突きを繰り出すという、短期決戦を仕掛けてきた感じだな。

 それは本来、角兎の戦術なんだがね。


「フシッ」


 突きの軌道を見て、顔を横にずらす。わずかに耳を掠めて、空間が穿たれた。

 軽戦士のレイピア使いなら、この時点で隙が出来るもんだが……。


「ハッ!」


「っ」


 へぇ、躱されたと認識した瞬間、膝を飛ばしてきやがった。

 顔面は嫌だから、後ろに飛んで回避する。こいつ、武道の心得もあんのな。


「み、見えたか?」


「あ~……突きの後に、膝だろ? いや、見えてたって避けれる自信ねぇけど……」


「え~? スカウトのアンタが避けれないんじゃ、私達3人誰も避けれないじゃない~っ」


 外野が吠えてるが、確かにこれはやりづれぇ。

 距離をとっちまったってことは、またフロキアの突きの射程に戻されたって事だ。相手が避けたとしても、攻撃のチャンスを作るという、上手い誘導だな。


「まだまだ!」


 俺の着地を待たずして、フロキアは突きの溜めに入った。こいつならノーモーションでも穿てそうだが、溜めるってこたぁ余程速いのぶっ放そうって腹かね。

 ……やられっぱなしってのは、少し癪に障るな。やり返すか。

 足が地面に付く。その瞬間に、【身体強化】を起動。

 つま先に力を込め、前に向かって大きく蹴り出す。


「っ!」


 俺が後ろに飛んだ体勢からいきなり迫ってきたのが予想外だったのか、フロキアの顔に焦りが見える。

 しかし、突きの姿勢は崩さない。タッチの差で穿てるというのを察したか。

 正解だな。事実、俺が攻撃の間合いに入り込むよりも速く、こいつの突きが飛んでくるだろう。

 だが、俺の狙いは攻撃じゃねぇ。


「はぁぁ!」


 フロキアが、必殺とも呼べる突きを放った。俺が攻撃に転じた瞬間を迎撃するための、カウンターに寄せた一撃。

 だが、その一撃は空を削る。

 俺がフロキアの目の前で、更に地面を蹴り加速したからだ。

 それだけなら当りそうなもんだが、俺は勢いを利用して腹滑りを披露し、フロキアの股下を通り過ぎたのである。


「な……!」


「フシッ」


 惜しかったな。あれが当たってたらまず意識は無かったろう。

 敬意を表しつつ、相手の背後を取った瞬間に、前足に力を込めて急停止。即座に跳躍。

 後頭部付近まで来た所で体を回転させ、回し蹴りを繰り出す。


「ぐっ!」


『あれま』


 だがしかし、その一撃は躱されてしまった。

 あのタイミングで当んねぇか。素直にフロキアの反射神経を褒めるべきだな。

 しかも、キレは無いとはいえ、剣を振って牽制してきやがった。それは角で受けて逸らし、互いに仕切り直しになる。

 う~ん、いい感じに入ったつもりだったんだがな。もうあの手は使えんな。


「「は、はぁ? なんだあの角兎!?」」


「ぼ、ボクの契約獣だよねぇ~? なんであんな動きできるの~!?」


「え? えと、その……」


 外野がなんか言ってるが、まぁまぁ、集中集中。

 次の手を考えねぇとな。


「はぁ、はぁ……まさに井の中の蛙だったな」


 フロキアは息を整えている。やっこさん、余程今の攻防で仕留めたかったらしいな。

 ってことは、あそこまでの攻撃が何度もくる訳じゃねぇか。どれ、次はこっちから行くか?


「フスッ」


 相手が消耗してる時は押す。これは基本である。

 もちろん何事も見極めは肝心だがな。


「フッ!」


「チッ……!」


 左右に飛んで狙いを反らしつつ接近し、すねに向けて足払いを放つ。

 武道に心得があるフロキアは、これを回避。同時に攻撃に転じようとするが、そうはさせない。

 相手が回避に行動を使った時には、俺はもう跳んでいた。今はフロキアの頭上である。

 俺の影が顔にかかった事で、ようやく気付いたのだろう。フロキアは慌てて剣を使い、顔をガードする。

 その防御に、俺の体重を乗せたかかとが撃ち込まれた。


「っぐ……!」


 鈍い音と共に、木刀が歪む。

 踵を受けられたと感じた瞬間に、俺は体を回転させて牽制の蹴りをこめかみ狙いで打ち込み、突きが打ちにくい近さで着地した。

 蹴りが掠ったのだろう。フロキアはわずかにふらつきながらも俺をめつける。

 本物のレイピアなら、ガードは出来なかったな。あの武器は構造上、防御には向かないからな。

 ここの木刀は、魔術で防護されていたものだから受け切れたようだ。


「うおぉぉぉ!? あのフロキアさんが防戦一方じゃねぇか!?」


「お前、どこであんなヤバい角兎見つけてきたの!?」


「教えなさいよ~ぅ!」


「えぁぁぁ……!?」


 さて……どうかなフロキアくん?


「……はぁ……はぁ……」


 俺と目を合わせたフロキアは、小さくため息をつき、木刀を捨てる。

 奴ならこの段階で、武器が折れたとしても拳で勝負できるだろう。だが……


「……参った」


「フシッ」


 そうだな。

 あの時、武器が折れなかったのは木刀だったからだ。本来ならばレイピアは折れ、俺の踵はフロキアの顔面に入っていただろう。

 その後こめかみを蹴れば……まぁ、意識はないだろうよ。実践だったら、確実に終わってる展開だ。

 まぁ、フロキアのレイピアが衝撃に強い魔力加工されてたらそうはいかないんだろうがな?


「まったく、自分の小ささが再認識されたよ」


「フスッ」


 いやいや、こいつの突きを一発でも受けてたらヤバかったけどな。


「あ、ちょ、すみません……そ、そこまで!」


 ハノンの声と共に、俺はフロキアに前足を差し出す。昨日と同じく、フロキアはその足を取ってくれた。

 うん、この力でハノンを守ってくれたら、嬉しいもんだな。

 

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