第34話:湯上がりグルメ
どもどもべべでございます!
レビューを貰ったら勢いをころしちゃいけません!
というわけで連日ご投稿です!
どうぞ、お楽しみあれ~!
新しい仲間か……懐かしいな。
俺も新人の頃には、こうして肩を並べられる奴らと出会って、一緒に冒険したもんだ。
時に別れ、また出会い、それを繰り返しながらひた走ってきた。
かつての仲間達がいなければ、今の俺はないと言って良い。そんな仲間を、ハノンが得られたのは僥倖だ。
「な、なんか熱くなっちゃいましたね。出ましょうかっ」
「あぁ、そうだな」
ハノンが照れを隠すように立ち上がり、フロキアもそれに続く。
2人が出た後、俺は全身をブルブルと震わせて水を振り飛ばした。
あいつらが組んだ事で、やれる訓練の幅が増える。魔法の練習もさることながら、魔物に対する実践訓練だけでなく、人間に対する実践訓練も可能だろう。
ハノンの力を、あいつは今よりずっと高めてくれるはずだ。
そうなると……俺は素直に、あいつの契約獣ポジションに集中できるようになるかね?
……いや、まだだな。まだまだアイツにしてやれる事はある。
何より、このコンビはアルバートが放っておかないだろう。今は自力を付ける事に集中したい。あいつの相手は俺がしよう。
「ここの料理は絶品だと聞いている。楽しみだよ」
「そうなんですっ。もう頬っぺた落ちちゃいそうで……」
「……店主が危険な人物であるという事は理解した」
「あ、あの、比喩、ですからね?」
何を言ってんだアイツらは……。
服を着ながらすっとんきょうな会話をしている2人に苦笑しつつ、ゴロゴロと体を擦りつける。
……いや、これだと遅いし、【ドライ】にするか。
角に魔力を巡らせる。ハノンとの訓練での数日間で、俺もまたやれる事が増えた。
それが、魔法の使用だ。
「フスッ」
角に籠った魔力を、小さく開放する。それだけで、魔力は小さな風となって俺を包んだ。
これは、初級の【生活魔法】、ドライだ。小さな風を呼び出す魔法だが、せいぜい濡れた体を乾かす程度にしか使えない。
その分、使う魔力は小さくて済む。俺は生前、魔力が雀の涙程度しかなかったからな。こういう生活魔法しか使えなかった。
まぁ、それでも冒険者としては、生活魔法を覚えているかいないかでだいぶ違うんだぞ? 水を生み出す【ウォータークリエイト】や、火種を生み出す【ライター】なんかがあるとかなり野営が楽になる。
ハノンにも教えてやりたかったが……残念ながら、魔物の感覚と人の感覚は魔力の練り方から違うらしい。そもそも魔物は声が出せないから、こういうのは無詠唱になるしな。
俺も、ここ最近ようやくできるようになった感じだからな……戦闘にも使えないから、強さ的には変わらんし。
だからこそ、フロキアの申し出が有難かったわけだ。
「……角兎が生活魔法を使うなんて、初めて見るんだが……」
「フシッ?」
俺の体が元のふわふわボディに戻った頃に、フロキアが語り掛けてきた。
まぁ、そうだろうな。角兎が魔法使うなんて情報が広まったら、危険度が繰り上がるだろう。
だが、あいつらに魔力はあれど、魔法を理解する頭は無い。そんな頭があったら、あの日俺の体は死んでなかっただろうさ。
「本当に、よくわからない個体だな……」
「あ、あはは……ヴォルさんはその、特別……な、個体です、はい」
「だろうな。ここまで奇異な角兎は見たことがない」
ま、それでもこれからは仲間だからな。
ハノンの頭の上によじのぼり、フロキアとの高さを詰めて視線を合わせる。それでもまだ見上げてるが。
「フスッ」
「……よろしくって事か」
俺が出した前足を、フロキアは躊躇なく握った。
「頼りにしている。これからよろしく頼む」
「フスッ」
「あはは……」
ま、確認はこんなもんでいいだろう。それより、飯だ。
ハノンを促し、俺らは食堂に向かう。
良い仲間には、美味い飯で歓迎。これが冒険者ってもんだ。
◆ ◆ ◆
黒鉄の網が、ジュウジュウと音を立てる。
網の上には、大振りの肉が所狭しと敷き詰められていた。
炭を盛大に使用し、赤熱したそいつらから発せられた熱が身を焦がす。余分な脂がその度に溢れ出し、炭に落ちて小さな炎を生み出した。
油が抜けると、その身は引きしまって歯ごたえを増す。更には旨味も閉じ込められ、噛めば噛むほどに味が溢れ出す逸品となっていくのだ。
肉の質からいって、おそらくは鳥だろう。しかし、そのでかさが違う。
胸肉やモモ肉、その1つを使ってステーキにするとしても、ここまでどでかいものにはならないはずだ。
それもそのはず。今日のメニューは、アダマンバードの地鶏風ステーキ。
山岳地帯を、飛ばずに走り回る巨大な鳥だ。こいつらの体内ではアダマンという鉱石が見つかるため、そう呼ばれている。
非常に発達した足で蹴られたら、一撃で内臓を持って行かれかねない危険な相手だ。
もちろん鉱石も大事だが、なにより肉が美味いのがその特徴。
こうしてステーキにして、シンプルに食べるのが一番だ。
「あわわわわ……」
「ほう……」
「フスゥ……」
ていうか早く食べさせてくれませんかね!?
もはや限界なんだが! 腹の虫が鳴り響いてるんだが!
「はっはっは! 2人と1匹でだらしない顔するんじゃないよ!」
食堂の手伝いをしているベローナさんが、俺達を見て呵々大笑している。
いや、これはしょうがないだろう! お預けも良い所だ!
油が落ちる度に、鳥の香りが食堂中に広がるのである。もはや拷問と言って良い。
「…………」
オゴスのおっさんは、俺達に2つの可能性を提示してきた。
ガーリック? or レモン?
なんちゅう2択だ。決められるとでも思ってるのか?
ㇰッ、レモンでさっぱりするか、はたまたガーリックでガツンといくか……悩ましいったらありゃしねぇ。
「ガーリックで」
意外だなフロキア!?
「あ……れ、レモンで……少し、交換して食べません、か?」
「あぁ、もちろんだ」
「えへへ……」
ハノン、天才だったかお前。
確かにそれならどっちも食べられる……!
「も、もちろん、ヴォルさんも、ね?」
「フスッ」
そういう事なら、俺は塩だけをチョイスだな。これだけでも充分美味い。
「…………」
おっさんが、言われた通りの味付けをした所で、ようやくの完成。
俺らの前に、どでかいステーキが並べられる。
「い、いただきますっ」
「いだだこう」
「フシッ」
俺達は、挨拶もそこそこに、慌ててかぶりついた。当然熱いが、止めれるか!
ドラゴンステーキとはまた違い、さっぱりと淡白な肉。だが、それ故にうまさも違うってもんだ。高温を口内で冷まし、ようやく感じる旨味を堪能すれば、濃厚な肉の味が鼻孔を抜けていく。
どうしようもなく美味ぇ……!
「うん……本当に美味いなここは。やみつきになりそうだ」
「えへへ、本当……ですねっ」
「そっちも、いいかな?」
「はいっ、どうぞ!」
こうして、俺らはパーティ結成記念を、チキンステーキで彩った。
最高の出だしと言って良いだろうな。
ちなみに、だが……フロキアはもう一枚、追加でおかわりしていた。流石の俺も驚愕である。




