表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/130

第31話:修行

どもどもべべでございます!

この物語は、章別にしたほうが良いと思いましたので、新しく章をつけてみました!

ここからが新章開始です! どうぞ、お楽しみあれ~!

 

 一羽の鳥が、往来を見下ろしながら天空を駆ける。

 陽光を背にしつつ、舞うように旋回を繰り返すその姿は、己こそが真なる自由を手に入れた存在なのだとうそぶいているかのように誇らし気だ。

 彼の視線から見て、この町はどれほど窮屈に見えるだろうか。人が自由を得るために囲いを作り、その中で騙し騙され虎視眈々。

 生存競争に打ち勝つだけなら、手を取り合えば良いだろうに。

 

 あの激動の一日から、数日が経過した。

 グランアインの冒険者ギルドは、ゴブリンの大軍を相手に壊滅的なダメージを受け、今は活動を縮小している。

 犠牲になった数十人の内、銀貨級は預けている金を用いて全員が蘇生できる見積もりらしい。まぁ、数人は借金を抱えただろうが。

 問題は銅貨級だ。彼らは己を蘇生できるだけの稼ぎなど持っていない者がほとんどだろう。

 中には銀貨級まで後少しという者もいそうだが、それと金を持っているかは別問題だ。


 結論から言って、銅貨級のほとんどは蘇生が出来ない状況であった。預金と合わせて、規定内の借金で目標金額に届いた者ならば蘇生できるらしいが、それだけの金を稼いだ者は銅貨級では一握りだろう。

 ギルドで最も小回りが利くのが、銅貨級の面々だ。彼らが大打撃を受けている今、町の警備を警らを増員して賄っているのは致し方ない事と言える。


「ぐぅ……!?」


 ガキィン! と、音が響く。硬質な物体と、金属とがぶつかる音だ。

 同時に、高い声色が苦悶の声を洩らした。まだまだ基礎がなってないな。


『だから、受け止めるな! 直線からの攻撃は、逸らすように心掛けろ!』


「は、はい!」


 話を戻そう。

 打撃を受けた銅貨級だが、蘇生できるのは一握り。

 回収できるような五体満足の遺体は、まだ神殿の死体安置所に置かれているが……ほとんどは蘇生不可能として神の身元に送られるだろう。

 だから、これから必要なのは、作戦に参加しなかった鉄貨級の育成だ。


『足がふらついてるぞ! 基礎体力が出来てないのはわかるが、それにしたって消耗が早すぎだ!』


「す、すみません……!」


『大事なのは経験と反芻、そして基礎だ! しっかり体作りながら、突貫で慣れろ!』


「は、はいっ」


 故に俺とハノンは、冒険者ギルドの訓練場にて模擬戦を行っていた。

 あの時の依頼でもらった金を使い、体造りが可能な環境を借りるに至った訳だ。

 報酬は金貨が1枚。ハノンの危険手当を含めたらしく、まぁ納得のいく範囲でまとめてくれている。

 その後はもう、訓練と休憩の毎日さ。体力造りから始まり、模擬戦で感覚を磨いたりしている。


『前にも言ったが、俺は基本的な角兎ホーンラビットの動きしかしてないからな? ただ突っ込んでくるだけだ。良く見て受けろ、いいな!』


「よ、よろしくお願いしますっ」


 模擬戦場は、流れ矢などの対策を施された魔法陣が設置された所にある。

 その魔法陣は相当貴重だからな、誰かによからぬ細工をされないよう、ギルドの敷地内に存在するわけだ。そして、そこの利用には金がいる。

 当然、金を払ったからには誰かに師事する事も可能なのだが……ここしばらくは、俺がハノンを鍛えている。ハノンがそう頼んだからだ。

 人見知りも治していかねぇとな……。


「っ、ぐ……!」


 ガィン! という音と共に、俺の頭部に衝撃。

 ハノンがたたらを踏み倒れそうになるも、なんとか堪える。

 受け流そうとしたんだろうが、まだまだ体が付いて行ってねぇな。まぁ、当然だ。


『よし、今のは衝撃が少なかっただろ。少しでも勢いを殺せた証拠だ』


「あ、ありがとうございます……!」


『だがまだまだ甘ぇ! 今バランスを崩した分、敵が攻め込んでくるぞ!』


「は、はい!」


 まぁ見てわかる通り、模擬戦というよりは、完全に防御の訓練だ。

 ハノンには、大枚はたいて買わせた上等な盾がある。これを活かさずにいたら、命がいくつあっても足りねぇ。

 ハノンもまた、この盾に二度命を救われたが、そのいずれも一撃で叩き落されている。そうならない為に、徹底的に盾の扱いを学ばせる必要があった。

 俺が守ればいいって考えは、もう捨てた。今後は、ハノンが一人で敵の攻撃をいなし、生き残る事ができるように育成していくつもりである。


『最後、一突き行くぞ。それ終わったら休憩だ』


「っはい!」


 俺とハノンが、睨み合う。

 先ほどから俺は、盾の中心を狙って突っ込んでいる。本来ならばそんなお行儀のいい敵はいないんだろうが、うまく逸らす感覚をハノンが掴むためなら必要な事だ。

 ハノンがその事実に気付いているのなら、そろそろ対応しそうなものだが……。


「フシッ」


「っ」


 角兎の突進は、速く鋭い。それしか脳がないのだから、一芸特化は当然だ。

 突っ込んでくる俺の動きを、ハノンはしっかりと見ている。咄嗟にとはいえ、一撃のみとはいえ、暗殺者の攻撃を凌いだのだ。筋は悪くないはずであり、受ける側の動き方というのは様になってきている。

 だが、やはりまだ動きは硬い。ここを慣れで克服できれば、防御の点は及第点だろう。


 角兎は、盾持ちからしてみりゃそこまでの脅威じゃねぇ。突進は真っすぐだから受けやすく、逸らしやすい。威力も軽めだから、角兎で盾の扱いを掴む冒険者は結構いる。

 ハノンも、せっかく俺を契約獣にしているのだ。何かしらを掴んでくれればいいのだが……。


「フシッ!」


「ぐっ……!」


 ギャキン! という音。先ほどまでの硬質な衝突音と比べて、削るような高音だ。

 角からの衝撃も、さほど強くはない。左に軸がブレたような感覚がした。

 後ろに飛んで着地すると、口元を引き結んだハノンと目が合った。


「っ、ぷは……!」


『よぉしそうだ。それでいい! 全然重みが違うだろ?』


「で、ですね……なんだか、助かったって感じがしました」


『まぁまだ完璧とは言えんがな。今の感覚をよく覚えて反芻するんだ。掴んだからには離すなよ?』


「は、はい! あの……もう一回、良いですか?」


『ん~、まぁ感覚を掴んだからここが押し込み時ではあるが……休憩も大事だぞ?』


「でも、なんか休憩終わったら感覚抜けてそうで……あ、あと少しでいいんですっ」


 ふむ、理想の訓練時間からは少しオーバーするが……気持ちもわかる。

 何度も言うが、ハノンは防御の筋は悪くない。このまま反復練習すれば、盾持ちとして充分な基礎は身につくだろう。


『しかたねぇな……後5回だ。それ以上は許可しねぇ。いいな?』


「よ、よろしくお願いしますっ!」


 その後。俺とハノンは、5回の練習の後、簡単なストレッチをして訓練場を後にする。

 まぁ、当然というかなんというか……ハノンが受け流しの感覚を掴みきる事はとうとうなかった。

 こういうのは一朝一夕で出来るもんじゃねぇからな。じっくりと練習して本番で活かせるまで仕上げていこう。

 ハノンの場合は、故郷の情報を知るという目的もあるからな。それを知った後、この町を出て行くかもわからん。そん時、防御のすべを知ってるだけでかなり生存率は違ってくるはずだ。


「疲れた……です」


『自分で望んだ事だ、受け入れろ。ストレッチもしっかりやったし、筋肉痛もそこまで酷いもんにはならんさ』


「は、はい……ありがとうございました」


 冒険者ギルドの総合受付に出ると、鉄貨級を中心にごったがえしていた。しかし、減った人数を自覚してしまう程に、以前よりも活気がない。

 皆焦ったように依頼の掲示板とにらめっこしている。ゴブリン討伐以降、銅貨級優先の依頼が余る形になってるからな……鉄貨級達がそれを受けるか否かを悩んでいたりするわけだ。


「とりあえず、竜の息吹亭に帰ってお風呂入りましょうか……」


『その贅沢に慣れるなよ? とりあえずで出来る事じゃねぇんだから』


「あぅ……す、すみません」


『だが、今は昼飯時だから帰るのは賛成だ。ドラゴンステーキ食おうぜ!』


「あはは……そうですねっ」


 今、俺らはハノンの鍛錬に注力してるから、依頼には頓着していない。

 貰った報酬もデカかったからな。装備を少し整えるつもりでいくらか残し、後は竜の息吹亭に突っ込んだ。宿泊日数が伸びたため、余裕があるのである。


「……ハノンくん?」


「ふぇ?」


 ふと、痛む箇所をさすりながら歩いているハノンに声がかかった。

 きょとんとしながら振り返るハノンだが、声をかけた人物を見ると大きく目を見開く。


「フロキアさん……!」


「数日ぶりだな。お互い無事で何よりだ」


 その人物……フロキアは、能面のような顔をわずかに緩めてハノンを見ていた。

 互いに数奇な運命でのっぴきならない依頼を受けた身として、共感する何かがこの2人に芽生えているのだろう。


「訓練をしていたのかな?」


「あ、は、はいっ、そうですっ」


「そうか……では、今から昼食かな」


「あ、その前に、お風呂に……」


「風呂?」


 ハノンの言葉に、フロキアは数回瞬きをする。


「この辺りで風呂というと、竜の息吹亭だが……まさか君はそこにいるのかい?」


「あ……」


「……ふむ、失礼した。明言はしなくていい」


 こいつ、一瞬で空気読みやがった。

 こんだけ他人のフォローが出来て、なんで最初に会った時はあんなにつっけんどんだったんだ?


「しかし、そうだな……都合がいいのは確かだな」


「え?」


「いやなに、君には話したい事があってね。できれば個室を借りようかと思ってたんだが……風呂場というのは存外、そういう話しをするには良い場所だと思えてね」


 ん~、つまり、なんだ。


「丁度私も、どこか宿を借りるつもりだったんだ。少々贅沢に、竜の息吹亭にしてみよう。そこで少し、話しを聞いてもらえないかな?」


「えと……」


 裸の付き合いで折り入って相談って事だわな。

 

ハノンくんの防御術について、才能面を少し見直しました。


ハノンくんを、あまりに弱く見せすぎていました。申し訳ない話です。

今回は、盾の扱いに光るものがある、という方面に変更しています。

才能の開花が早まるだけなので、本編の大筋に変化はありません。

ご了承くださいませ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ