第26話:迎撃(ハノン視点)
どもどもべべでございます!
ん~、伏線回収とか、納得とか、できるのかなこの手……。
どうにも不評だったら改定考えよう。
そんなこんなでご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~!
もはやどこともわからなくなってしまった路地裏。T字路を左に曲がった、奥にて。
一応の逃げ道を確保した一方通行に、僕ら二人は陣取っていました。
僕は今、ガジルデさんを守るように立っています。
ガジルデさんは足を笑わせ、怯えながらも懸命に立っています。素人2人でプロを相手にするわけですから、恐怖は当然と言えるでしょう。
もちろん僕も震えています。盾を握る手がかじかんでいるように冷たいです。まぁ、死後硬直みたいにガッチガチに握っているから、逆に盾を飛ばされないで済むかもしれません。
今ここに、ヴォルさんはいません。おそらくは、2人の足止め……もしくは、僕たちを探しに奔走しているか……。あと一つの可能性は、考えないようにします。
「準備、出来ただよ……」
「は、はい」
道がわからない以上、相手が回復したら追い付かれるのは必至。
ならば、ここで相手の動きを止めるしかない。そう結論付けたのはいいものの……正直、やはり怖いですね。
こんなことならば、ヴォルさんに基礎訓練してもらうべきでした。最初は冒険者の空気を学んでから、という名目で簡単な依頼を受けていたはずなのに、トントン拍子にこの有様です。
僕とヴォルさん、どっちの運が悪いのやら……うん、ヴォルさんですね。貧乏くじを引かせたら天下一品です。
「チッ、手間取らせやがって……」
通路の奥から、顔を隠した男の人がやってきました。
僕らが二度三度と視線を切ったせいで、ここまで僕らを捕捉するのに時間を取られた様子。おかげさまでギリギリ準備が間に合いました。
「あ、あの、ホント、やめてくれませんか!? 何でこんな事……!」
「うるさい。これ以上痛い目に会いたくなければ、さっさとその男を渡せ」
「ひぃ!?」
呼びかけに対し、男はガジルデさんを要求してきました。
ということは、交渉の余地はギリギリあるのでしょうか……目撃者は殺すというスタンスでしょうが、リスクは避けるといった感じに思えます。
「……い、嫌だと、言いたい、のですけど……」
「ならば、殺すしかないぞ? ……あの角兎もいないが、お前にやれるのか?」
……会話を引き伸ばしている?
痛む傷口を庇いつつ、警戒を怠らないよう、相手の言葉に耳を傾けます。
「お前に恨みはないが、どれだけお前が強かろうともはや詰んでいるんだ。俺が投げたナイフには毒が塗ってある。思うように体が動かせないだろう?」
毒! なるほど、だからこの人は会話をしているんだ。
僕が動けなくなって、楽に殺せるようになるタイミングを待っているんですね。
そうです、この人は一撃でヴォルさんに意識を刈り取られていましたから、僕が素人の弱い人間だというのは見ていないんですね。
だから、弱いと言われている角兎をあそこまで育成している、見た目によらず熟練した従魔師だと思っているのかもしれません。
「解毒剤は、ここにある。お前がその男を渡すというのなら、交換しよう。どうだ」
「……っ……」
しかも、角兎と契約した人間の特徴を知らないようです。
え、暗殺者にそういう事ってあり得るのかな……でもまぁ、この状況は利用しない手はありません。
使えるもの使って、強かに。スラムの人達が教えてくれた事です。無駄にはしません。
「……交換は、同時ですか?」
「あぁ、互いに損得無しだ」
「えぁ!? 坊ちゃん!?」
相手は僕を、過大評価している。そして、交換ならば十分に引き付けられる。
その瞬間が、一番好機なはずです。
「ガジルデさん、悪く思わないでください……僕だって命が惜しいです」
「そんっ! ひ、ひぃ!?」
かじかむ手を必死に盾から引き剥がし、ガジルデさんの手を掴みます。
思わず逃げようとするガジルデさんですが……
「っ! い、嫌だ! 離してけろ! いやだぁ!?」
その気になれば、僕なんかすぐに引き剥がせるのをガジルデさんは知っています。だからでしょう、必死に抵抗する【ふり】をしてくれました。
よかった。僕の意図を汲んでくれたようです!
「っ、はやくしてください。痛くて敵わない!」
「あぁ、同時に交換だ」
ガジルデさんが、僕の腕を掴み、引っ張ってくれます。
そのおかげで、踏ん張って後ろに下がれました。少しずつ、引き付けて……!
後3歩……!
「さぁ、男を寄越せ……!」
2歩……!
「っ、痛い……!」
「シッ!」
1歩、って、
「うぁぁぁぁ!?」
ガキィン! という音と共に、僕の盾が叩き落されました。一気に踏み込んできた男が、ナイフで攻撃したのです。
相手もまた、不意打ちを狙っていたんだ! なんで気付けなかったんだ!?
「死ねぇ!」
「ひ……!?」
男がナイフを振り上げてきます。その光景はどこかゆっくりに見えましたが、体が動いてくれません。
僕の顔めがけて、ナイフが振り下ろされてきます。
「坊ちゃん!」
「っ!」
瞬間、急な引力。
僕の体は後ろに動き、ナイフが空を切りました。ガジルデさんが、引っ張ってくれたのです。
「こんんんのぉぉ!!」
「チッ! 大人しく死ね……」
視界がぐわんぐわんと揺れる中で、ガジルデさんの雄叫びと男の声が聞こえてました。
その視界の端に移る、1個の物体。ガジルデさんが仕掛けた、枝のしなりを利用しての投擲罠!
「な、うわぁ!?」
僕らの背後、視界の邪魔をしていた方向から、男に向かって白い物体が飛んでいきました。
その物体は、塊から急激に拡散。まるで網のようになって覆いかぶさってきます。
硬度があり、適度に粘着質なその物体に包まれたことで、男は慌て、体をよじってしまいました。その結果、網は余計に体にくっつき取れなくなっていきます。
「なん、だこれ!? クソッ!」
「や、やっただ! 坊ちゃん、逃げるだよ!」
「は、は、はひ……」
ようやく体勢を立て直し、盾を拾って、僕は立ち上がりました。
うまくいってよかった……【糸絡め作戦】。
僕らはもがく男を置いて、路地の一本道を走っていきました。
また何度か曲がり、今度はガジルデさんが塀を覗き込んで方向を確認。出口と思われる方向に進んでいきます。
追われてなければ、最初からこうしたのに……。
「いんやぁ、上手くいって良かったなぁ。坊ちゃんがポイズンモスの糸さ持ってたおかげだぁ」
「い、いえ……ガジルデさんが、糸の加工方法知ってたから……ですよ」
僕らが使った手は、余ってたポイズンモスの糸を使っての足止めでした。ほら、必要数は2個で、3匹分手に入れてたじゃないですか。後一個は売らなかったんです。
その糸を使えば、相手を足止めできるんじゃないかと思って相談してみた所、ガジルデさんも狩人の頃に、ポイズンモスの糸を網として使った事があるという知識を持っていたので、実行に移してみました。
そのおかげで、なんとか追手からは逃れられそうです……本当に良かった。
「ん~……あの角の向こうが路地裏から出れそうだぁ」
「い、行きましょう。早く人のいる場所に……」
ガジルデさんが道を確認し、そちらに向かおうとした……その時でした。
「っ!」
「え?」
反対側の角から、別の男が飛び出してきたのです。
最初に、僕の盾を弾き飛ばした、あの男でした。
「あ――――」
「ひっ」
男の手には、ナイフが握られており……その切っ先は、先導してくれていたガジルデさんに向けられています。
その先の未来が想像でき、思わず僕は目をギュっと閉じてしまいました。
直後に悔恨。何故庇わなかったのか……! 体が逃げるのを選択してしまった!
「あがぁ……!?」
悲鳴が、上がりました。
あぁ、そんな……あと少しだったのに、こんなのって……!
せっかく、2人で凌ぎ切ったのに!
鈍い打撃音と共に、地面に体を擦りつけつつ倒れる音が……打撃音?
「……っぷは! は、ひぃぃ!? し、死んだと思っただよぉぉ!」
「ガ、ガジルデさん!」
目を開けた僕の視界の先には、尻もちをついたガジルデさんがいました。よかった! 無事だった!
ということは、さっきの悲鳴は……
『っぶねぇ……なんとか間に合ったな』
「ぶぉるざぁぁん!」
そこには、気を失って倒れる男。
そして、足から血を流しつつ立っている、ヒーローの姿がありました。




