第25話:逃走(ハノン視点)
どもどもべべでございます!
今回はハノンくん視点! 作者は、弱い人間が試行錯誤で事態を解決する話が大好きです!
さぁさぁご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~!
ゴミ箱を蹴飛ばしたせいで、体がつんのめる。
野良猫が悲鳴をあげ、それに驚いたおかげで身が引き締まり、なんとか体勢を立て直せた。
必死に足を動かし、出口を目指す。
スラムの地形と違い、まるで汚い部分を隠すかのように作られた貴族街の路地裏は、とても入り組んでいました。入った事ないけど、ダンジョンってこんな感じなんでしょうか?
「はぁっ、はぁ……!」
「ぼ、坊ちゃん! 早くは走ってくんろ! 追い付かれるだよ!」
ガジルデさんに逃走を促してから、わずか数分。
その間に息は切れ、足は前進を拒絶してしまいました。立場は逆転し、今では手を引かれて助けられてしまっている始末。まったくもって、自分の体力の無さに腹が立ってしまいます。
「チィッ! 待てや!」
「!?」
後ろから、ガタンという音と共に、悪態が聞こえてきました。
同時に飛来してきた何かが、僕の腕を掠めます。
「い、た! 痛いっ、ひぅ……!?」
「き、来た、来ただよっ、今こけたの見ただ! アンタが倒したごみ箱でコケてただ!」
痛い、痛い、痛い!
斬られた、ナイフ、追手が投げた? 怖い怖い怖い……!?
逃げないと、逃げないと殺される!
「そっち、曲がりましょう! 視線、切らない、と……!」
「ん、んだな!」
僕らは恐怖に急かされ、慌てて体を細道に滑り込ませます。
ちらっと見ましたが、おそらく向かってきているのは、ヴォルさんに気絶させられた男の人だと思います。足元ふらついてたし、腕からナイフ生えてました。
まだ、武器もってる! 追い付かれたら、また……!
「あ、アンタ、血ぃ出てるだよ。大丈夫か……?」
「っ……!」
ガジルデさんが、心配そうに僕を見てくれます。
必死に足を動かしながら、僕を心配してくれている。優しい人なのでしょう。
「っ、だ、大丈夫、じゃないかもですけど、逃げましょうっ」
「お、おう!」
おかげで、少し冷静になれました。
怖いけど、さっきみたいに錯乱はしていない、と思いたいです。
多分、相手は無理矢理起こされて、僕らを追うよう命令されたんだと思います。
脳を揺らされていたので、足元がまだおぼつかないのでしょう。でなければ、僕らは既に捕まっているはずです。
だったら、逃げられそうなものですが……!
「はぁ、はぁ……出口、まだ、ですかね……!」
「うぅん、なんか余計に奥に入ってる気がするんだども……」
「えぇ……!?」
だとしたら最悪ですね!?
僕らは貴族街に疎い2人組。本来ならば数分で出られる所を、ぐるぐる回ってるんだとしたら……目も当てられない大ミスです。
「ハッ、はぁ、んぐっ、はっ、はっ……!」
痛みと緊張と恐怖で呼吸が浅くなってきました。足が震え、前に出ようとしなくなってきます。
ヴォルさんからは、命を優先と言われていたのに、体が諦めようとしています。
「っ、掴まれっ」
「ぁぅっ」
ガジルデさんの声と共に、体が浮遊感を覚えました。
前面に感じる、男性の硬い背中。ガジルデさんにおんぶされたのだと理解しました。
「お、オラ頭良くねぇけど、君より体力あっから! 君、考えてこの状況なんとかしてけろ!」
「あ、ありがと……ございます……」
ガジルデさんは、その間にも2回3回と路地を曲がり、相手からの視線を切ってくれていました。
しかし、追手の気配はなくなりません。むしろ、迫ってきているような感じです。
全力が出せないとはいえ、誰かに雇われた人というのは、僕らよりも色んな点で勝っているのが当然です。対して僕らは、土地勘含めてすべてにおいて劣っています。
どうする? このままじゃ、間違いなく追い付かれてしまう……。
「……撃退、するか……隙を作って、逃げないと……」
「へぁ!? そ、そったら事出来るわけねぇべ!?」
そうですよね。
僕らでは、あの追手には勝てない。それは間違いない。
でも、やらなきゃやられる状況なのも間違いない。
「ガジルデさん、は……元狩人、なんですよね?」
「そ、そうだども」
「僕、ナイフ持ってます……盾で、貴方を守りながら、なんとか相手の隙を作って……ガジルデさんが刺してもらえれば」
「ぼ、坊ちゃん一撃でぶっ飛ばされてたでねぇかっ、それに怪我してるべ! 無茶だぁっ」
たしかに、希望的過ぎる。ガジルデさんの言う通り。
でも、何か行動しないと、いつか追い付かれて終わりです。だったら、やるしかないのでは?
僕は自分の持ち物を思い出しながら、なんとかできないかと考えます。
装備はナイフ、ローブ、盾……持ち物は、採ってきた薬草。それと……
「っ」
ドクンと、心臓が跳ねました。
閃き、または天啓というのでしょうか? はたまた、掴もうとしている藁なのかはわかりません。
しかし、今思いつく中では、多分最上の手を思いついた、と思います。
「ガジルデさん……」
「な、なんだぁ?」
「狩人の知識、貸してください……」
思いついた策を、たどたどしく説明します。
最初はおっかなびっくりと言った様子のガジルデさんでしたが、それを聞いていくにいつれて、思案顔になっていきました。
おそらく、狩人の顔つきです。
「……正直、確実ではねぇけんども……」
小さく不安になる前置きを呟きましたが、そこはまぁ仕方ないと割り切りましょう。ぶっちゃけ、痛みでもう余裕がありませんし!
「けんども、今持ってる札ん中じゃ、そいつが一番強いはずだぁ……オラも現場でそれ使ったことあるし、なんとかなる、と思う……!」
「で、でしたら、僕が時間を稼ぎます……! 何とかして、間に合わせてくださいっ」
時間はあまりにもありません。
持てるだけの全てを、ガジルデさんに預けます。
「い、生き残りましょう、ガジルデさん!」
「お、おう!」
今、弱者の猫噛みが幕を開けるのですっ。
……胃が痛い……!




