第24話:凌ぎ合い
どもどもべべでございます!
戦闘シーンは勢いが大事! というわけで連日投稿です!
どうぞ、お楽しみあれ~!
突っ込んでくる部下。覚醒した部下。
優先すべきは迎撃だ。しかし、同時にやらなきゃいかん事もある。
『ハノン、そいつ連れて逃げろ! 路地裏出りゃ何とかなる!』
「っ!」
ガジルデを狙う部下を牽制しながら、ハノンに念話を飛ばす。
この2人を庇いながら3人相手にすんのは流石に無理だ。だから、離れてもらう必要がある。
厄介な【限界距離】はあるが、それはこっちが調節すればいい話だ。
『冒険者なら、命を一番に考えろ! ここにいたら死ぬぞ!』
「は、はいっ! ガジルデさん、行きましょう!」
「はひ、ひ、ひぃ!?」
凌ぎ合いで麻痺した頭が戻ったか、ハノンは慌ててガジルデの手を引いていった。向かうは、路地裏の出口。
そうだ、それでいい。後は俺も退がりながら……
「させねぇよ」
「っ!?」
突貫してくる部下に意識が行き過ぎた。再三飛来してくるナイフを、俺は寸での所で回避する。
その隙を狙われ、手を負傷した起きたての部下に脇を抜けられてしまった。くそったれ!
「よぉし、お前は俺と、こいつの足止めだ。いいな?」
「ハッ」
突っ込んできた男が、改めて俺に武器を向ける。ガジルデを狙ってたのは、ポーズか。
俺の隙を作って、もう1人にアイツらを追わせるのが目的だった、と……まったくもって、俺は頭の良い連中に踊らされるのが常らしい。
「フシッ」
「下がるなっての。遊んでいこうや!」
俺が後ろに跳躍すると同時に、リーダーが突っ込んでくる。その速さは、部下とは比べ物にならない。
しなる鞭の様に振るわれたナイフを、身体強化をかけながら角で反らす。しかし、カウンターにまで繋げる事は出来なかった。部下も突っ込んで来たからだ。
「っ!」
部下が突き出してきたナイフを、足で叩き落す。しかし、それがいけなかった。
ナイフを落とされる事は織り込み済みだったのだろう。部下はもう片方の手を伸ばし、俺の角を握りしめてきたのだ。
俺の動きを止める事が優先だったってことだわな。抜かった!
「よぉし、従順だ」
「っ……!」
腹部に、鋭い痛み。リーダーに斬られた。
咄嗟に体を捻ったため、なんとか薄皮一枚だが……あと少しで内臓までざっくりだったぞオイ!
「フ、シッ!」
憤りのままに、俺は捻った体をバネに、思い切り横に回転する。
「ぎゃ……!?」
角を握っていた部下の手が、摩擦によりジュウっと音を立てた。
わずかに拘束が緩んだため、首を下に薙ぐ。拘束は外れ、なんとか自由になれた。うん、めっちゃ回ったのに酔わねぇな。つくづく性能と生態のちぐはぐが勿体ない体だ。
なんて、安心も感心もしてられない。着地前にリーダーの追撃が飛んでくる。体を捻って回避したのを見られたからか、今度は横斬りだ。
「っ!」
「チィ!」
とはいえ、読めてはいたからな。空中で体の向きを変え、リーダーの手首に足を添える事ができた。後はその勢いのままに、飛ぶ。
振り抜きのスピードと蹴りの勢いを利用して、俺は後方に飛ぶことに成功したわけだ。
「挟み込め! 距離稼がせるな!」
「ハッ!」
リーダーが思い切り踏み込んでくる。俺の背後を取り、部下と挟み撃ちの陣形を狙っているのだ。
だよなぁ……従魔師の弱点をガンガン突くのは基本だからな。
先ほどから何となく察してもらってるだろうが、従魔師と契約獣の間には、限界距離がある。読んで字のごとく、互いが離れていられる距離だ。
この距離を超えた場合、どちらか【強い方の存在】の元へ、体が転移してしまう。今回の場合、当然ハノンがここに戻ってきてしまう訳だ。
従魔師のネックはここにある。体の弱い新参の従魔師ほど、鉄火場に立たないといけないというジレンマがあるのだ。
今回の路地裏の規模的に、限界距離の中でハノンが抜けられるかは、かなりギリギリ……いや、ぶっちゃけ無理だ。だから、俺は距離を稼ぐ必要がある。相手をノスなんて二の次だ。
それをわかってて、こいつらも挟み撃ちにしたいんだろう。ならば、俺の取る手は決まっている。
「っ、シ……!」
「逃がすな!」
相手してられっか。とんずら一択だ!
ハノンの居場所は、感覚と繋がりでなんとなくわかる。そっちに向かってダッシュする。
角兎の逃げ足舐めんなよ!
「ふざけんな、たかが角兎一匹にかき回されて失敗なんざ、認められっかよぉ……!」
「ギッ!?」
クッソ痛ぇ……! 投げナイフが足に当ったか!
早く身体硬化使えるようになんねぇとな……しかし、今は身体強化で無理矢理逃げる!
筋肉を動かしてナイフを外し、痛みを無視して俺は突っ走った。
「クソがぁぁぁ!」
背後でリーダーの慟哭が聞こえる。傷ついたとはいえ、角兎には追い付けないだろうさ。
いやいや、ぶっちゃけ今の段階であのクラスの使い手とマトモにやり合ったら死にかねん。悪いがマジでとんずらこかせてもらうぜ!
激痛を抑え込みながら、俺は全力で足を動かし離れていく。
男の声が小さくなっていくのを、二回三回と道を曲がりながら聞いていた。血で追われるだろうから、安心なんざ絶対しない。
「っ!」
ふと、俺の鼻が匂いを拾う。
俺のじゃない、血の匂いだ。
(……チッ、俺が抜かしたからだ。無事でいろよ……!)
ザワリと、毛が逆立った。痛む足に、更に力を籠める。
その匂いは……ハノンのものだと、確信したからだ。




