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第20話:盗賊ギルド

どもどもべべでございます!

令和! おめでとうございます~。めでたいのか? まぁいいやw

これからもどうぞよしなに、ご贔屓のほどよろしくお願いいたします。

という訳でご投稿! お楽しみあれ~


 よう馬鹿共。昼間から飲む酒は美味いかい。

 管を撒く数人を横目で見ながら、俺とハノンはカウンターへと進む。

 酒場の中は、簡素な造りだった。数台のテーブル席は仕切りで遮られ、カウンターは小さく、数人しか座れない。

 傷んだ木造の床はモップのかけたてで湿っており、歩く度にギシギシと音をたてた。

 どこにでもあるのだろう。観葉植物が隅に飾られており、赤い花を咲かせている。総じて、洒落てもいない貧乏飲み屋って感じだった。

 

「いらっしゃい……お客さん、ミルクをおススメするが、まさか酒がいいって言うんじゃないだろうね」


「っ……!」


 酒場のマスターは、それはもういかついオッさんだった。

 逆三角形が服着て歩いてるみたいな体格に、ちょこんと弦楽器ハゲの頭が乗っかってる、団子鼻のマスターだ。個性が服着てパンプアップしてるみたいな奴だとも。

 このマスターとかつての俺は、それはもう硬い絆で結ばれた間柄だ。いずれお前らもこうなるんだぞと、若い連中に言って聞かせてたのは良い思い出である。どこがこうなる、というのは、本人の名誉のために語らないでおこう。


 しかし、そんな酒場のマスターは仮の姿。

 その正体は、この町の暗部を支配する、盗賊ギルドの窓口である。

 盗賊ギルドに逆らっても、マスターには逆らうな。それはこの町の暗部を知る者にとっての共通認識と言って良い。

 そんなマスターが、ハノンを睨めつける。少年に対してもお構いなしか……いや、装備を見て色々悟ったんだな。


『ハノン、言った通りの注文だぞ』


『は、はい』


 互いに念話で語り合い、フォローはバッチリだ。

 後は、ハノンの交渉次第って感じだな。


「け、今朝川でとれた、魚のムニエル……ありますか?」


「……付け合わせは」


「ぶ、葡萄酒と、レモンのスライスで」


 当然、そんなメニューはこの酒場にはない。

 この合言葉を考えた奴は、絶対何かの影響を受けてるな……。


「……坊ちゃんは、こっちにしておきな」


 マスターはため息をつき、ミルクを差し出してくれる。

 ハノンが小さく会釈をすると、肩をすくめて奥に引っ込んで行った。人を呼びに行ったんだろうな。


『よしよし、まずはこれでいいな。ポイズンモスの依頼達成料金は、銀貨5枚だったよな?』


「そう、ですね……あと、余分に採れた薬草を売って、銅貨2枚……」


『3枚は顔見せに使え。ひとまず払うもん払っとけばOKだ』


「えぇぇ」


『見た目が餓鬼だろうと差別しねぇってことさ』


 そこまで話し、ミルク一杯が空になった所で、マスターが帰ってくる。

 そして、カウンターの横にあるドアを無言で指差した。


『っし、行くぞ』


「は、はい……!」


 ハノンはマスターに会釈し、ドアへ向かう。

 小さく息を整えて、そこを開けて、中に入って行った。無論、ここでも竜の息吹亭であったような、魔力の波長を感じられた。念入りなこったな。


「わぁ、すごい……」


 そこは、ぼろい酒場とは一線を画した廊下であった。

 見るからに値打ち物な絵画に、色紙を使った壁。

 ややセンスがけばけばしいのが難点だが、金をかけている空間だと解る。

 そして、廊下の向こうにまた、一枚の扉。

 ハノンは、きょろきょろと周りを見ながらもそこへ近づき、ドアに手をかけた。ゆっくりと開き、中を覗き込む。


「おう、いらっしゃい」


「こ、こんちには」


 簡素で窓の無い、四角の小部屋。

 そこに居たのは、なんとも軽薄そうな青年であった。

 眠そうな瞳に、くすんだ金髪。2.5枚目って感じのルックスだな。

 着ている服が上等じゃなかったら、雑踏の1人物って印象しかわかねぇ男だ。


「いやぁ、最年少ではないが、珍しい年齢の子が来たね」


「は、ハノンと言います」


「うん、俺は……教えてあげない。名前は大切な情報だからね」


「えぇっ、ず、ずるい……」


「ははは、いい授業になったろう? まぁかけてよ」


 気さくな笑顔を浮かべたまま、男は部屋に一つだけあるテーブルに促してくる。ハノンをドア側に座らせ、安心感も与えてくれているようだ。

 この部屋に出入り口は1つしか無さそうに見えるが……まぁ、あいつが座った後ろの壁にでもあるんだろうな。


「うぅ……」


「さてハノンくん、君みたいな子がこんな危ない所へ、なんの御用かな?」


「あ、そ、その前に……これ、その、お近づき、です」


「……ふぅん?」


 ハノンが銀貨3枚を机に乗せると、男は眉をわずかに浮かせる。

 さぁ、どう取る?


「いやぁ、お話しの早い子は好みだな。お互い仲良くやって行こうか」


「は、はいっ」


 思案は一瞬。男はにこやかに笑い、銀貨を受け取り懐に仕舞った。うん、やっぱりそうくるよな。

 そうとも、この子どもの後ろには、知恵がある大人がついてるぜ? 上手いこと転がしてやってくれ。


「あの、それで、ですね……知りたい事が、ありまして……」


「うんうん何かな? お金や交換条件次第だけど、言える事は言ってあげる」


「その……最近、ガジルデさんっていう森人さんが、町に滞在していませんか?」


「あ~、ガジルデくんかぁ。彼も災難だよねぇ? あんな怪我したばっかりに森人なんて寂れた仕事しか出来なくてさぁ。まぁポーションは高いからねぇ……平民の手が咄嗟に出る代物じゃない。仕方ない事だったと思うよ」


 長話の裏では、何故ガジルデの情報を求めるのか、それがいくらになりそうかを思案しているんだろう。男の口は止まらない。

 俺はハノンに、何も言うなと伝えておく。情報は出さないぞ、足元見られるからな。


「ん~……まぁ、初回サービスで一つだけなら教えてあげよっかなぁ?」


「ほ、ホントですか?」


 あ、馬鹿。


「うんうん、ガジルデくんね、確かに最近町で宿取ってたよ? 珍しいよねぇ。彼みたいな人が町に滞在するなんておかしいと思ってたんだ。しかもあんな場所に、さ?」


「ど、どこなんですか?」


 あ~あぁ……ま、アイツが言ってたみたいに、授業料だなこれは。


「ん~ふふ、はい初回サービスはここまで~! これ以上はお金、払ってくんないかな?」


「え、えぇっ、そんなぁ」


「だって、そんな反応見せられちゃったらもうダメだよぉ~。この情報が売れるって事だもんね?」


「うぅ……!」


「そんなんじゃ、悪~い大人に騙されちゃうよぉ? もっと勉強しなさいね~」


『うんうん、要勉強だな』


「うぅ……善処します……」


 まぁ、今回はこれでいいけどな。

 相手も、ハノンの後ろに何者かが居るって事は悟ってる。変に吹っ掛けるような真似はしないだろう。

 むしろ、反応からして好意的に取ってもらえたみたいかな?


「ひとまず、銀貨で何枚かな~? 俺の予想では、後2枚くらい懐にありそうだけど」


「っ……」


「んふふ、良いよ。沈黙は大事だ。でも面の皮も厚くしておこうね? 今度教えてあげるよ」


「よ、よろしくお願いします」


「うん、とりあえず銀貨1枚でいいよ。お近づきの印、ね?」


『ま、安い方だ』


「は、はいっ、あの、これ……どうぞ」


 ハノンが取り出した銀貨を見て、男は嬉しそうにそれを受け取る。

 俺と一瞬目が合ったが、んふっと笑うだけで大した反応はなかった。いやぁ、面の皮が厚い奴だ。


「毎度あり。さて、ガジルデくんだけどねぇ……」


 男は俺から視線をそらし、ハノンに向き直る。

 テーブルの下が引き出しになっていたんだろう、1枚の紙を取り出し、懐から出したペンでサラサラと文字を書き留めた。


「ここ。ここに宿を借りてたよ? 3日前の情報だから、場所さえ変わってなければ間違いないさ~」


「あ、ありがとうございます……え?」


 ハノンはその紙を受け取り、目を走らせる。

 そして、きょとんとした顔つきで声をあげた。


「宿……【雅の極み亭】……き、貴族街じゃない、ですか……?」


「そうだねぇ。彼みたいな貧乏人じゃあ、とても手が出ない場所だ。なんでだろうね~?」


 こうして、俺達の調査は新たな展開を見せた。

 目的の人物は、貴族街。

 この町で、最も発展している区画である。


「……ちなみに、だけど~。君文字も読めるんだね? んふふ、情報情報~」


「ふえぇ!?」


 おいおい、そろそろやめてくれ。ハノンが人間不信になる。

 

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