第19話:消えた森人
どもどもべべでございます!
TRPGにおいて、強い敵と1Lv帯で戦わせるわけにはいきません。
そういう時に便利なのは、やはりシティアドベンチャーですねぇ。
大きな事件を解決するきっかけになったのは、実は裏で働いていた低ランク冒険者のおかげっ……滾りません?
という訳でご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~
結局、ハノンはアルバートからの依頼を受ける事にした。俺としては断ってもよかった気がしたが、町の危機に自分だけ何もしない、という負い目がハノンを動かしてしまった形だな。
まぁ、ゴブリン共の巣窟にハノンを連れて行くよりかはずっとマシだ。受付でポイズンモスの糸を届け、金を貰った後、そそくさとギルドを後にする。
後日聞いた話だが、俺らが出た後にアルバートからゴブリンの話が伝えられたらしく、冒険者達は大慌てだったそうだ。そりゃまぁ、そうだわな。
俺とハノンは、町を歩きながらガジルデの人相描きと情報を見る。まだゴブリンの話題が漏れていない故に、町中は平和なもんだ。
なんのかんの、アルバートならこの平和を維持してくれるだろう。信用というか、実力的にな。
「ん~……この人が町に居たら、すぐバレちゃうような……」
『まぁ、特徴はがっつり見てわかるわな』
ガジルデの口元から、頬にかけて広がる、裂けた傷跡。こいつが町にいたら、確かに多少の聞き込みで場所が把握できるだろうな。
情報では、元狩人らしい。獣にこの傷をつけられ、それにより怖がる人々が増えた。んで、町の居心地が悪くなったという事で、領主からこの森人職を斡旋されたという事だ。
人間ってのは酷いもんだなぁ。見た目で人のなんたるかを判断し、態度を改める。まさに魔性の生き物だ。
そう、俺の人間時代もそうだったさ。俺の頭を見て、毛生え薬を押し売りしようとしてきた連中が何人いたか……! しかも全部効きやしねぇ! 頭がかぶれるものまであったんだ! クソッ、くそっ!
「ヴ、ヴォルさん落ち着いて! 僕の頭の上でシェイキングしないでぇっ」
「フスッ」
し、しまった。怒りのあまり微振動を起こしていた。
いかんいかん、今の俺はふかふかのモフモフなんだ。そう、過去は過去、今は今さ。
……復活前に、毛根の移植なんかもしてもらおうかなぁ。
『と、とにかく、受けたからにはガッツリ本腰入れるぞ。良いなハノン?』
「は、はい!」
俺達は、依頼帰りのその足で、また町中を練り歩くという苦難に突っ込んだ。
まぁ、外ではゴブリンとの大一番だからな。時間が無い分、出来る内に出来ることを、だ。
ハノンもまぁ、初めての森で体力は使っただろうが、本人にもやる気はあるんだ。ここはペースを見ながらやらせてやろう。
こうして、俺達は聞き込みを開始したのであった。
◆ ◆ ◆
「ダメです、見つかりません……!」
「フス……」
捜索を開始して、2刻。ギルドがある下町を聞き込みしたり、貧民街の連中を頼ってみたが、事態の発展は見込めなかった。町中でガジルデを目撃した人物は、この区画ではいないって事だな。
う~ん、まぁそうだよなぁ。こんな目立つ人物が、人目につくよう行動してるわけないんだよなぁ。
「えぇ……そこわかってて、なんで僕に探させるんですかぁ……」
『おっと聞こえてたか? まぁ、捜査の基本は可能性を潰すことって事だ』
「可能性、ですか?」
そうとも、可能性だ。この場合、ガジルデはどんな理由で森から離れてるかの推測って感じだな。
森から離れている可能性は、何通りかある。食料や日用品の買い込み、獲物の売買など様々だ。
『しかし、そういう理由で行動するなら、おのずとここ、下町では目に付く行動だ。傷跡を隠すにしても、顔半分を隠さにゃならん。そういう特徴の人物も調べて、いなかった』
「……なるほどぉ。つまりこの段階で、ガジルデさんは日常的な理由で町に戻ったんじゃない、と……」
『まぁ、アルバートの早とちりの可能性を潰したって感じだな。これで残りの可能性が浮き彫りになる』
「……つまり、わかっててゴブリンを見逃して、雲隠れした……」
その通り。推測の域は出ないが、濃厚になったって事だ。
ハノン、いい感じじゃないか。この歳でここまで頭が回るなら、上等だ。
『となると、絡むのは後ろ暗い連中だ。そういった連中に会いに行けば、情報を握れるかもしれん』
「……えと、それって……」
『……ぶっちゃけ、お前をそこには連れて行きたくないんだがな』
俺は少し考えた後、小さく息を吐く。
仕方ない。ハノンも装備を整えたし、冒険者として見れる程度の見た目をしている。今ならまぁ、あそこに行ってもいいと、判断しよう。
『【盗賊ギルド】だ』
「うひぃ……!」
盗賊ギルド。代々伝統としてこの呼び名が使われているが、何も全員が盗人って訳じゃない。
このギルドは、町の裏事情を牛耳ってる暗部なのだ。後ろ暗い情報や依頼、金でしか解決できない案件などを担当する所だと思って良い。
俺ら冒険者とも、金で繋がった関係だとも。そして、娼館ギルドともずっぷりだ。とにかく、情報が集まる場所としてはこれ以上の場所はそうそうない。
まぁ、頼りすぎは禁物だけどな。消されるし。
『場所は俺が知ってるし、すぐにでも行けるんだがな……問題は、ハノン。お前の演技にかかってるぞ』
「えぇぇぇ!? そ、そんな!」
『そりゃあ、俺がカウンターの上に乗ってフスフス言う訳にゃいかんからな。今からお前に色々手順を教えてやっから、頑張ってみな』
「あぅあぅあぅ……」
さて……行くと決めたかたには徹底しよう。ハノンが情報屋を求めていたんなら、こいつ等を頼る可能性だって十分にある。というか、この町の情報屋はだいたい盗賊ギルドが絡んでるからな。今の内に対応を覚えさせよう。
ちとスパルタだが、さっきも言った通り、ゴブリンの巣に叩き込まれるよりはマシさ。死ぬ可能性は、こっちのが低い。
俺は、ハノンを引きずって下町を歩き出したのだった。
……んで、しばらくの場所。
「……こ、ここ、ですか?」
『そう、ここ』
「え、でも、ここ……」
ハノンの視線の先には……冒険者ギルド。
いや、流石にそんな灯台下暗しじゃないからな? ハノンがそっちを見ているだけだ。
俺らの目の前には、昼間でも開いてるダメ人間受け入れ所があった。
そう、酒場だ。
先日もここで、バカ騒ぎが繰り広げられていたよな。俺らはすぐに、竜の息吹亭に入ったが。
『まぁ、盗賊ギルドは冒険者ギルドと同等の古参だからな。この下町から始まったグランアインなら、本部も下町にあるってもんだ』
「だからって、なんでギルドのほぼ隣を拠点にするんですかね……」
『先代のギルマスと、盗賊ギルドのギルマスが、大層仲良かったんだとよ。今はわからんが』
「えぇ……」
『さ、こっからは手順の通りだ。何かあったらフォローしてやっから、盛大にやってこい!』
「ふえぇ……!」
涙目になりながらも、ハノンは腹を括ったようだ。本当にこいつ、臆病なくせして大胆な所あるんだよなぁ。ま、今はそれがうまく働いてくれることを祈ろうじゃないか。
いざ、盗賊ギルドへ。




