第17話:vsゴブリン
どもどもべべでございます!
戦闘シーンは書いてて楽しいです。しかし、やはり描写をもっと勉強せねばなりませんねぇ。
というわけでご投稿!どうぞ、お楽しみあれー
俺の乱入で、場は騒然としている。いや、騒がしいのは3匹のゴブリンだ。
フロキアは、俺の動きを見て油断できないと察したのだろう。ゴブリンを牽制できるように剣を構えつつ、ジッと見つめてくる。
まったく、ギルドで俺の事を一度は見ていただろうに。観察眼はまだまだだな。
「ゲギギィィ!」
仲間の仇とばかりに、一体のゴブリンがショートソードを振り上げてくる。残りの2匹はフロキアを押さえるつもりなのだろう。
この時点で、フロキアの生存はほぼ確定した。見立てではあと2体が限度だったからな。俺が1体を押さえておけば、あいつならまぁ生き残れるだろうさ。
ならば、問題は今突っ込んできているコイツだな。
「フスッ」
上段からの隙だらけな一撃。本来ならばすんなりと弾き返して攻撃に移りたいところだが、この体だとそうはいかん。
ゴブリンと比べれば、角兎の筋力なんてたかが知れている。打ち合いの鍔迫り合いなんて展開はまっぴらごめんだ。
幸いな事に、武器を扱えると言ってもこいつらの練度は低い。こういった大振りならば……
「フッ」
「!?」
少し体を横にずらせば、あっさりと回避できる。
これで相手は、武器を地面に叩きつけて遊んでいる真っ最中だ。そういうコミカルな動きは命取りですよという意味を込めて、その横っ面まで跳躍し、こめかみを思い切り蹴りつけてやる。
「フシッ!」
「ゲギャア! ゲ、ブッ!?」
この時、気を体に巡らせて【身体強化】をかけておくのも忘れない。というか、殴る瞬間に強化するのはもはや精神が覚えたルーチンと言っていい。
身体強化した蹴りで、人体構造上急所と呼べる場所を一撃。たとえ角兎が非力でも、これならばゴブリン相手に後れを取ることはない。
総合的に人間よりも強いとされるゴブリンだが、構造は他の亜人種同様二足歩行の頭でっかちだ。
無力化するのに、体力の限界まで殴りあう必要はない。確実に動きを止められる所を小突いてやればいいのだ。
そうすれば、この通り。気絶してうつ伏せに倒れるオブジェクトの出来上がりってわけだな。
「っ、本当になんなんだ、あの角兎は……!」
ゴブリン2匹の攻撃をいなしながら、フロキアがぼやいているのが聞こえた。
困惑しているようだが、その動きには幾分か余裕が戻っている。心配はいらなそうだな。
うん……気配も、これ以上は感じない。ハノンの隠れている場所にも余分な気配はない。クリアリングもOKだ。
後は、明確にこの2匹をのせば勝ちってこったな。
「フスッ、フシッ」
フロキアに呼びかけ、左のゴブリンを指差し、俺は右に突っ込む。
それだけで色々察したのだろう。フロキアは左のゴブリンと、俺に対してのみ警戒を向ける。
うん、良い選択だ。俺が怪しいのは変わりないからな、警戒は怠るな。
「ゲヒィ! ギギギィ!」
(うっせぇ)
仲間が一瞬で意識を刈り取られ、気絶したのを見て焦っているのだろう。ゴブリンはめちゃくちゃにショートソードを振り回している。
近づくなってかい? 兎一匹に大した評価だ。
気にすることなく、左右に跳躍しながら翻弄しつつ距離を詰める。ゴブリンは涎をまき散らしながら後ろに下がり、体力の続く限り武器を振るう。
「ヒッ、ヒッ、ヒィ!?」
角兎は、弱い。それは事実だが、何故弱いかと聞かれると、皆誤った認識を持っていると思う。事実、俺も角兎になってみるまで誤解していた。
アイツらが弱いのは、ひとえに身体的能力と生態がちぐはぐだからだ。
感知能力や敏捷性の高さは、狩りか逃げるためにしか使われない。力が弱いのに、角突き出して突っ込んでいく戦闘スタイルしか取れない。
それじゃあ弱くて当たり前だ。
感知は見切りに、俊敏性は回避に。大いにアドバンテージを取れる資質をこいつ等は秘めている。
そして、この角の本質は武器じゃない。
「フシッ!」
「ゲェ!?」
ギャリン! という音と共に、ゴブリンの持つショートソードが横にぶれる。
相手の斜め切りに合わせて、角を差し込み剣をそらしたのだ。
そう、この角は盾として大いに有用だ。こと反らすという行為に関しては、非常に高いポテンシャルを持つ。
基本は回避に専念し、翻弄。角を使って攻撃を反らし、一気に攻める。
こういう戦闘行動が取れれば、角兎は非情に厄介なモンスターと認識されていた事だろう。
「ガボェァ!?」
相手が体勢を整える前に懐に飛び込み、顎を蹴り上げる。
脳を揺らされたゴブリンは、本人も気付かないまま膝を折り、地面に突っ伏した。じたばたともがいて立とうとしているのだろうが、体が言うことを聞いてくれないみたいだ。
こうなったら、後は焦る必要などない。もがくゴブリンが回復しないかどうかを警戒しつつ、先ほど気絶させたゴブリンに近づく。時間的に、こいつが起きてもおかしくないからな。優先はこっちからだ。
耳をピクピクと動かし、呼吸や動きを確認。……うん、気絶してるな。
あとは簡単だ。相手の耳をくわえて、一気に引っ張り頭を回せばいい。
ゴキンという鈍い音。これで2匹。そして、3匹目もすぐだ。
「ガ、ガ、ケヒィ、ヒ……」
もがくゴブリンと目が合う。その顔は、恐怖に歪んでボロボロだ。
悪いな、これも生存競争って奴だ。頭の中でこっそりと謝っておいて、俺は同じように処理をした。
「ギャアアアアア!?」
同時に、フロキアの方でも終わったのだろう。ゴブリンが悲鳴と共に血飛沫を散らし、倒れ込む。
フロキアに目立った外傷はない……あの至近距離で斬りつけておいて、返り血がつかないってのも無駄な技術だな。
「…………」
「フス」
両者、一瞬の沈黙。
フロキアは3匹のゴブリンをちらりと眺め、俺に対して剣を構える。
……まぁ、もういいか。
『ハノン、出て来いよ』
「は、はいっ!」
俺の念話を聞いたハノンが、ガサッと立ち上がり顔を出す。
フロキアが一瞬肩を跳ねさせたのが、見ていてなんとも小気味いい。俺から剣を反らさないまま、ハノンを見て目を丸くしていた。
「君は……」
「ど、どうも、先日ぶり、です」
「……なるほど、この角兎は君の契約獣だったのか。気付かなかった」
ハノンが傍に来た所で、フロキアは小さくため息をつき、ようやく警戒を解けた様子だった。積もった緊張と疲労が一気に来たらしく、僅かにふらつく。
それをハノンが支えると、素直に礼を述べていた。なんつうか、基本歯に衣着せないってだけで、悪い奴じゃねぇんだよな。
「……昨日、あれだけ大口を叩いておいて、私が助けられてしまったな。すまない」
「い、いえっ! 僕が何かした、訳では……全部ヴォルさんのおかげですし……」
「彼は君の手足のようなものだろう。君が命じたから、私は助かった。後生だから礼くらいは言わせてくれ」
「あ、あぅ……」
「あのままでは、私は奴らにやられていただろう。本当に、ありがとう」
顔を赤くして俯くハノン。うんうん、良い光景だ。
さて、それは良いんだが……
『ハノン。フロキアに聞いてくんねぇか』
「ん?」
『ゴブリンは、あれで全部じゃねぇだろう?』
おかしいと思った点がある。それは、奴らが逃げなかった点だ。
ゴブリンは狡賢い。残り2体くらいになった時点で、逃走を図ってもおかしくはなかった。
しかし、結果はあれだ。増援が角兎一匹ってのも原因かもしれねぇが、勝てないと見て逃げないって事は、理由は一つ。
追われちゃ困るって存在がいるってことだ。
「……と、思いまして……」
ハノンには、俺の言葉をハノンの言として伝えてもらう。角兎である俺がこんな疑問をつらつら述べたら、余計に怪しまれるしな。
「その通りだ。元々、ゴブリンは6体いた。……私を取り囲んだ後、奴らの内1体は、森の奥に走って行ったよ。追う余裕は、見ての通り無かった」
「……そ、それって、つまり……」
「あぁ、自分たちの巣穴が、人間にバレたと奴らは思うだろう。至急ギルドに戻って、ゴブリン襲来に対する警告を出さないといけない」
やっぱかぁ。
ん~、見回りが6体編成って事は、それを八方に飛ばせるとして最低でも48体。巣穴の中にはもっといるって事で……最低でも100体以上のゴブリンがいてもおかしくないって事か。
こりゃあ、ちょっとした町壊滅の危機だぁな。
「い、急いで戻りましょう!」
「あぁ、このままでは大変な事になる」
事の重大さが理解できたのか、ハノンも青くなってギルドに走る。
しかし体力が無さ過ぎて、最後にはフロキアにおんぶされて町まで戻ったのは、ご愛敬ってやつだ。




