第16話:死闘観戦
どもどもべべでございます!
一週間ギリギリやでぇ……あれですよ、その……シャドウランが面白いのが悪いんや……!
そんなこんなでご投稿! どうぞ、お楽しみあれ~
近づくにつれて、剣戟は激しく、大きくなっていった。
もはや、何者かのけたたましい雄叫びすらも聞こえてくるような状況だ。ハノンは既に委縮しており、盾を構えて俺の後ろを必死についてくる。
すまんな、もう少し我慢してくれ。
「っ……見え、ました……!」
ふと、ハノンが身をかがめて口を押さえつつ茂みの裏に隠れた。どうやら、身長的に俺より高いもんだから先に現場を見れたらしい。
『つまり、この先だな。そのまま隠れてろよ。枝踏むなんてお約束はいらんからな?』
「っ、っ(コクコク)」
俺は、茂みの脇からそぅっと顔を覗かせる。
そこには、予想通りというかなんというか……数体の害悪が存在していた。
「ケヒィ! ケヒィ!」
「ギャギャギャギャ!」
けたたましく喚きながら、粗悪な武器を振るう、少年サイズの緑肌。
頭が異様に大きく手足は細い。その割には下腹が出ており、日頃の食生活が伺える。
頭身の比率が合っていない姿は、まるで気色の悪いだまし絵を見ているかのように、見る者の気分を悪くさせる。
ゴブリン。
人類含め、あらゆる亜人種の天敵と唄われる……先にも言った通り、害悪的存在だ。
何故こいつらが天敵と呼ばれるか。その理由は、生態にある。
ゴブリンは、種としての強さ、そして繁殖力を進化の過程で得た代わりに、雄しか生まれなくなっているからだ。
すなわち、こいつらが種を繁栄させるためには、他種族の雌を攫うしかないのである。
種類は選ばず、亜人種であればあらゆる雌を孕ませられるこいつらは、亜人種にとっては共通の駆逐対象だ。
しかし、駆逐と言っても甘く見てはいけない。ゴブリン一体一体の戦闘能力は、けして馬鹿にできるものではないのだ。
細い手足からは想像できない程に力は強く、小柄故にすばしっこい。本能に刷り込まれているのか、あらゆる武器を広く浅く扱え、小狡い思考を持つ。少し成長すれば戦線に立てる程、生まれながらの戦士なのだ。
ゴブリン一体に対して、銅貨級の冒険者が2人は必要であろうとギルドでは銘打っている。鉄貨級は当然、逃げて報告しに来い、というのがセオリーだ。
そんなゴブリンが……
「ギャ! オギャア!」
「グググ……!」
「ゲヒィッヒィ!」
「ヒャヒャヒャ!!」
「ホッホッホ! ホォッホヒ!!」
五体、か。
対して、相手している奴は、一人ときた。
「っ、はぁぁ!」
「ヒギィ!?」
「ケギャアア!!」
ガキィン! と、更なる剣戟の音。
相対者の放った斬撃を、ゴブリンが粗悪なショートソードで受け止めたのだ。
拙い動き故、ゴブリンはバランスを崩してしまう。そこを狙って相対者も追撃を行おうとするが、周りのゴブリンがそれをさせじと斬りつけてきていた。
うっとおしそうにしながらも、冷静に追撃を諦め、距離を取る相対者。なるほど、ゴブリン相手にも後れを取るような実力ではないようだ。
だが、いかんせん数が数だな。ゴブリン5匹は、流石に相手が悪いと見える。
そんな、実力者の名前は……たしか、
「……フロキア、さん……」
あぁ、そうだ。
昨日、ギルドでハノンに突っかかってきた、あの色っぽい兄ちゃんだ。
あの時、「明日の依頼」~うんぬん言ってたが……多分、森にゴブリンが沸いてないかの調査って所だったんだろうな。
「クソッ……想定外だな……5匹もいるなんて……」
小さく肩を上下させて呼吸を整えながら、フロキアはレイピアを構えている。
確かに、ゴブリン5匹はちと多い。外にこんだけいるんなら、出来上がった【巣】にはこれ以上居ると見ていい。何としても、ギルドに持って行かなきゃならん情報だ。
だが、そうはゴブ屋が降ろさなかったわけだな。囲まれて、戦闘せざるを得なくなったのだろう。
『……ハノン』
「っ!」
ついフロキアの名前を口にしてしまったものだから、怒られると思ったのだろうか。ハノンは慌てて口を押さえていた。
その瞬間、愚直に斬りかかってきたゴブリンを、フロキアがカウンターで迎え撃ち、突き穿つ。レイピアよって脳天を破壊されたゴブリンは、魔力切れの貴族用玩具のようにその場に崩れ落ちた。
これで4匹。だが、一切安心はできない事だろう。
逆に、ゴブリン達が仲間をやられて警戒を強くし、包囲を密にした。相手を逃がさず、時間をかけて体力を奪う方向に転じたのだ。あぁなったら、余計にゴブリンは厄介である。
『アイツの代わりに、報告に走るという選択肢もある』
「ぇぁ……?」
俺は、ここで選択を迫る事にした。
『この件はまず、ギルドに報告せにゃならん。それほどの情報だ。しかし、アイツは見る限り……もう逃げられん。そうなると、この情報を知っているのは俺らだけだ。……ギルドの事を考えるなら、ここで俺らは引き返し、報告に走るべきだ』
「……フロキア、さんは……」
極限に小さく、角兎の聴覚でなければ拾えないような小声で、ハノンが聞いてくる。まぁ、そこだよな。
『アイツの息の上がり具合と、状況を鑑みるに、あと2匹仕留めるくらいが限界だろうな。大したもんだと思うぜ』
レイピアと、ショートソードがかち合う。火花ではなく錆びが舞い、それを吸わないようにフロキアが身を引いた。
その瞬間、もう一体のゴブリンが突きを放つ。フロキアは身を反転させてこれを回避するが、その瞬間を見逃さずにゴブリン達は一歩引き、安全に包囲に戻った。
追撃せず、消耗させる。フロキアにとっては最悪だろう。
「…………ぁぅ」
『俺らは鉄貨級だ。ゴブリンとやり合えなんて言われはしない。ここで引くのは、間違ってなんかないぞ。……あいつだって、冒険者やってんだ。覚悟はしているはずだ』
さぁ、どうする相棒。
俺は契約獣だ。決定権は主人であるハノンにある。そして、先人としての意見はだした。
後は、ハノン任せだ。厳しいかもしれんが、これも経験だからな。
大人しく引くなら、良し。だが……
「……ヴォル、さん……」
『おう』
アイツを助けるってんなら……
「フロキアさん、助けられ、ますか……?」
『あぁ、できるよ』
後でゲンコツだ。
『確信を持って言う。俺なら、ゴブリンくらいなら何とかできる。油断はできんがね』
「じゃ、じゃあ、その……フロキアさんを、助けてください……っ」
『……良いんだな?』
「は、はやくっ」
『はぁ、わかった。お前はそこで隠れとけ』
フロキアの表情は、決死のそれに変わりつつある。おそらく、もう少しで突貫していただろう。
悪いな。お前の命の時間を使って、ハノンの授業しちまってよ。
心の中で謝罪しつつ、俺はハノンから距離を取った。
『いいか、絶対、動くなよ?』
「っ、っ」
何度も頷くハノンに念押ししてから、俺は目的の場所まで移動を始めた。
一体のゴブリンがいる、背後の茂みである。万が一取り損ねた場合、ハノンの存在をバレにくくするためだ。
余裕のないフロキア含め、誰もこの動きに気付いた様子はない。
だったら、ここを突かない手はないな。
俺は、脚力のままに身を躍らせた。
「フシッ」
「っ!」
向かい側のフロキアと目が合う。
驚いた表情をしているが、俺は何も言わない。最後まで俺の存在に気づきもしなかったゴブリンの頭を、しっかりと脚で挟む。
「ゲ?」
「フシ……ッ」
体重をかけ、体を反転。
それだけで、ゴブリンの身体が後ろに傾き、首が回転してくれる。
ゴキン、という鈍い音。これで一匹。
「な……角兎!? いや、なんだその動きは……!?」
「「「ギャギィィィ!?」」」
俺とフロキアで、残り三匹か。
なんだ……準備運動にもなりゃしねぇ。




