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第15話:vsポイズンモス

どもどもべべでございます!

ヒロインランキングって企画の文章書いてたから、一週間ギリギリになってしまった!

お待たせいたしました! どうぞ、お楽しみあれ~


 

 翌日。いよいよハノンを町の外に連れて行く。

 俺達が今いるのは、グランアインの町の正門。町の顔とも言うべきゲートだ。


『さてハノン。準備は良いか?』


「は、はいっ! あの、ポーションとかは無い、ですけど……」


『高すぎて買えねぇからな。道中で薬草を摘んでいく。異次元バッグに入れておけば劣化もしないし、いざという時に役に立つぞ』


 俺たちの今回の依頼は、【ポイズンモスの糸を採取】することだ。こいつら自身にはそこまでの強さは無いため、油断さえしなければ問題ない依頼だと言える。

 しかし、冒険者家業は何が起こるかわからない。当然ポイズンモス以外もモンスターはいるだろうから、出来る範囲の対策はとっておくに越したことはねぇ。


「君、身分証明書はあるのかい? 無いと場合によっては、出た後町に入れなくなるよ」


「ふぁいっ!?」


 ゲートについている衛兵が、ハノンに話しかけてくる。

 グランアインの町では、犯罪率低下のために身分証明となる物を提示してもらう事になっている。無い場合には魔術的な印をつけられ、町を出るまで見えない目に見張られることになるのだ。

 しかし、ハノンに関しては問題ない。


『ハノン、冒険者カード』


「え、ぁ、はいっ」


 俺に言われるままに、ハノンはおっかなびっくりカードを提示する。衛兵は、肩にかけた小物入れから羊皮紙の巻物を取り出すと、カードに当ててから紐解いた。


「うん……冒険者カード、本物だね。鉄貨級のハノンくんか。初めての依頼かい?」


「えぁ……ま、町の外は、初めて……です」


「そうかそうか。一応今回の手続きでカードの登録はすんだから、今後はカードを持っていれば普通に通れるよ」


「あ、ありがとうございますっ」


 衛兵はにこやかにカードを返し、俺達を見送ってくれる。

 冒険者カードを持っていれば、町の出入りも自由に出来るようになるのだ。もちろん、本人以外がカードを持っていた場合の対策も取れている。

 面倒な手続きをしなくていいってのは、実に楽なもんだ。


「無事に帰ってくるんだよ~」


 手を振る衛兵に何度も頭を下げながら、ハノンは町の外に出て行った。

 俺はハノンをどこからでも守れるよう、頭の上に乗っているもんだから、適度に上下して心地いい。


『さぁ、ここからは気を引き締めていけよ?』


「ぼ、僕は常にガチガチです、よ?」


『それなら丁度いいな』


 軽口のままに、俺達は第一歩を踏み出した。

 ここからは、名実ともに自己責任の世界。助けてくれる後ろ盾はなく、食うか食われるかのサバイバルが繰り広げられる空間だ。

 町を中心に、木々が切り開かれて出来た街道。ゲートを出てからそれが真っすぐ続いており、先人たちの開拓作業の偉大さを感じさせる。


 そして左を向けば、町からさほど離れていない場所に森が見えるだろう。今回の依頼は、あの森でポイズンモスを見つけるところからスタートだ。

 グランアインの町は、バランスよく資源が存在する立地だ。ゲートが南の方角で、東に森、北に山岳。西には運河が流れている。

 自給自足には事欠かないってもんだ。だからこそ、この町はそこそこに大きいのだ。

 まぁ、自然に囲まれてる分、交易がし辛い欠点があるんだけどな。


『さぁ森に入ってポイズンモスを探すぞ。戦闘は俺に任せて、ハノンは糸の回収に集中だ。いいな?』


「わ、わかりました……頑張りますっ」


『回収の手順は、今朝方教えた通りだからな。タイミングは経験で覚えていけ』


「はいっ」


 俺を頭に乗せたまま、歩き出すハノンの足運びは、明らかな緊張が感じられる。

 そう、それでいい。緊張とはすなわち警戒だ。外の世界に出たら、信じられるのは己のみと考え、常に警戒しているくらいが良いのだ。

 緊張を、いかに自然な警戒へと昇華させるか。それが課題だな……そう考えつつ、俺は頭の上で揺られるのであった。





    ◆  ◆  ◆





「フシッ!」


「…………!」


 角が躍る。翻る。

 突く、薙ぐ。振り下ろす。

 俺は、角兎ホーンラビットの基本的な戦闘スタイルを思い出しながら動いていた。俺が戦った事のある角兎は、どいつもこいつもこんな風に、角を主体に突っ込んできていた。


 俺の目の前には、傷ついたポイズンモスがいる。まだまだ繭になる前の幼体で、紫がかった体色が特徴的な芋虫だ。

 こいつは、成虫になったら非常に危険なモンスターだが、幼虫の内は鉄貨級でも楽に狩れるくらいの強さしかない。しかし、厄介な点が1つある。


「っ、っ」


 幼虫が、頭と思われる部分からズルリと角のような物を生やした。

 そのままじたばたと暴れると、その角は柔らかく左右に揺れて霧状の何かを噴出し始める。

 まぁ、わかりやすく毒液である。名は体を表すとはよく言ったもので、こいつらはピンチになると毒霧を周囲に散布するのだ。


 幼虫故に、死ぬようなものではない。吐き気や目の痛みなどを引き起こす類の、ようは逃げるための時間稼ぎだ。成虫になったら、個体によっちゃ致死性の毒を散布するようになるが……まぁ、どっちにしても今の俺には関係ない。

 角兎は毒に強い。それはこういう、体外からの毒にも強いのだ。なんでってお前、毒撒かれて動けなくなったら、逃げれないだろ?

 角兎は、生き残るために毒や病気を克服した種族だ。こと毒に関しては、負ける気は一切しない。

 それは即ち、俺と契約したハノンだって一緒って事だ。


『そろそろ来るぞ、ハノン!』


「は、はいぃっ」


 俺の合図に合わせて、ハノンが前に出る。その手には、拾った木の棒が杖のように握られていた。

 新手に気付いたポイズンモスは、いよいよ逃げられないと悟ったのだろう。最終手段に打って出た。

 すなわち、糸の噴出である。


「よっ、と……ぐーるぐーる……」


 ポイズンモスが吐き出した糸を、タイミングよく棒で受け止めるハノン。その棒を回して、吹き出される糸を絡めとっていく。

 ポイズンモスが糸を吹き出すタイミングは、本当に最後の最後なのだ。弱り、毒も効かず、逃げられない。そこまで察して初めて、敵の動きを止めるべく糸を吐く。

 故に、ポイズンモスの糸の採取は、毒への対策が必須となる。これもまた、俺という角兎と契約しているハノンが低いリスクで受けられる、裏技的依頼と言えよう。


「ヴ、ヴォルさん、できました!」


『上出来だ』


 鞄に入るギリギリの大きさまで溜まったら、棒を折って次に繋げる。ハノンは、こういう地道な作業が意外とうまかった。

 ハノンが、糸玉の出来上がりを伝えると同時に、俺はポイズンモスに飛び掛かる。

 そして突進の勢いのままに、角をそいつの横っ腹に突き立てた。


「…………!」


 ポイズンモスは吹き飛び、地面を転がる。

 未だ逃げようとしているのだろう。力無く数度痙攣し、少しだけ進んだ所で、力尽きた。


『ふぅ、これで4匹目……指定された2匹分は超えてるし、もういつ帰ってもいいな』


 俺達がこの森に入ってから、数刻が経っている。丁度今は昼飯時って所だろう。

 ポイズンモスはそれまでに4匹出遭遇したが、1匹はハノンも勝手がわからず、糸をダメにしてしまっていた。それ以降は、コツを掴んだらしく良い感じに回収できている。

 つまり、俺らが採取した糸は、これで3匹分って事だな。


「あ、あの、どうして、余分に狩るん、ですか?」


『んぁ? あ~、ポイズンモスの間引きの為だよ』


「間引き、ですか……」


『そうだ。ポイズンモスは成虫になったら、致死性の毒をまき散らすようになる奴が出てくる。しかも飛ぶ。これは厄介でなぁ……だから、俺はポイズンモスが多いと感じたら間引くようにしてるんだ』


 ポイズンモスの成虫を討伐するのは、銀貨級の依頼だ。だから、弱い内に叩いておくのが鉄板である。ついでに糸の採取もしておけば小遣い稼ぎになるからな。

 あとはまぁ、俺が角兎の戦い方を体験しておきたかったってのも理由だな。あいつら、いつも角を使って突っ込んでくる戦法とってるから、それを試してみたのだ。

 うん、やればやるほど、本能任せの非効率な戦い方だってのがわかったわ。俺は今後、この戦闘スタイルは取らないだろう。


「なるほど……なるほどぉ」


『ま、来る途中に薬草も採集できたし、初陣にしちゃ上出来だ。ハノンも、ちゃんとモンスターの前に立って行動出来てたしな』


「そ、そんな……ヴォルさんが守ってくれるから、ですよ?」


『持ちつ持たれつってやつだぁな』


 まぁ、一回目は取り乱してたけどな。

 無理矢理毒霧に顔突っ込ませて、大丈夫だって悟らせてやったのが効いたみたいだ。


『後は、どれだけ安全に帰れるかだが……むっ』


「ひっ」


 俺達は、そこまで会話した所で身をこわばらせる。

 今しがた、「ガキン!」という、明らかな剣戟を聞いたからだ。

 音自体は小さかったが、ハノンにも聞こえる程度には近かった。


「あ、あの、今の……」


『あぁ……何者かが戦っているんだろう。しかし、武器と武器が打ち合う音ってんなら、相手はモンスターじゃねぇかもしれんな』


 山賊か、はたまた……もしも、あいつらだったら、ヤバいな。


『いざという時には報告しなきゃならん。少しだけ覗きにいくぞ』


「えぇ……!」


『隠れて見るだけだ。もしも俺の勘が正しかったら……ギルドに駆け込む必要がある』


「うぅ……わ、わかりましたぁ」


 このまま緊張感が薄れても、こいつの為にならんしな。不慮の事態にも慣れさせておかにゃならん。

 俺はハノンを連れて、音の方向に向かっていったのであった。

 

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