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第129話:vs領主

どもどもべべでございます!

うごごご、やはり時間が開いてしまう……頑張ろう。

では、おやすみなさい

 

「ここならば、大抵の物を壊しても構わん。さぁ、こい!」


「えぇぇ……来いって言われましても……!」


 俺たちが連れてこられた訓練場は、確かにかなりの広さを誇っていた。

 この館、土地をほとんど林と訓練場に割り振っているらしい。屋敷自体はそこまで大きくない代わりに、実戦的な訓練が出来るように作られているそうだ。


 模擬戦の範囲も、これまたリアル。適度に背の高い木が数本生えており、互いの間に遮蔽として存在している。

 野外での戦い方を見越して、どんな手を使っても良いという気配がありありだ。


『ハノン、今更しり込みするなよ。あのおっさん、やる気満々だからな』


「で、でも領主様相手にだなんて……」


 やはりというか、ハノンは踏ん切りがついていないみたいだな。

 本来ならば、正しい反応かもしれん。相手は貴族で、その上領主。少しの無礼で首が飛んでもおかしくない身分差があるからな。

 ハノンの盾になっているヘナもまた、どうすれば良いかわからないみたいだ。……だがお前ら、そんな場合じゃないからな?


『ほれ、来るぞ!』


「え? っ、げうっ!」


 俺を見ているハノンに、影がかかる。同時に、俺も跳ぶ。

 ボケっとしているハノンの盾を蹴り飛ばし、横に吹き飛ばすと同時に、轟音が響く。

 元々ハノンがいた地面が、割れた音だ。つまりは俺の目の前なんだが、小さなクレーターが出来ている。


「来いと言うてもこんかったら、ワシから行くしかあるまいよ。うははは!」


「う……わ、わ、地面が……!?」


 アレクのおっさんの手には、いつの間にか巨大な剣が握られていた。ハノンだったら両腕を使っても持ち上げられない程の大剣を、その辺の木の枝みたいに軽々と振り回して地面を抉ったのだ。

 なんとも、見た目通りかそれ以上の膂力だな。金貨級でもここまでの火力を出せる戦士はそういねぇぞ。


「ちょっと領主様! ハノンくんを殺す気ですか!?」


「いかにも殺す気で振るったが、そこの兎が黙って見ている訳があるまいよ。なぁ?」


 脇で見てるアノン達と言い合いをしているが、まぁ太刀筋に殺気は無かった。

 俺が何もしなくても、大怪我程度で済む一撃だっただろう。腕の一本でも飛んだだろうが、命に別状がなければ、神官なりを呼んでどうにでもなる。

 だが、これでハノンも目が覚めただろ。


「う、う……!」


『ほれハノン、反撃するぞ。相手の一撃見ただろ? まともに受けようなんざ思うなよ』


「は、はい!」


 立ち上がり、盾を構えるハノン。その横で俺も、威嚇をする。

 アレクの右眉が持ち上がり、満足そうに頷くのが見えた。大剣の腹で肩を叩き、迎え撃つ姿勢を見せている。

 迎撃がお望みなら、応えるしかないだろう。また突っ込んでこられても困るしな。


「フスッ!」


「よぉし来い来い!」


 真っすぐ突っ込んで、相手の足元で跳躍。

 顎の高さまで跳んだところで、意識を刈り取る為に蹴りを放つ。

 アレクは軽く腕を持ち上げ、剣の柄でその蹴りを防いで見せた。顔を逸らしての回避だったら、追撃の角をぶち込むつもりだったが……この距離で防御を選んだって事は、読まれたな。


「ほう……」


「『清浄なる水をここに。我が敵を打ち倒す槍となりて、天翔け突き進まん』……ウオータースピアっ!」


 一瞬遅れて、ハノンが先端の丸い水槍を3発ぶち込んでくる。

 感心したような表情をしていたアレクだったが、その攻撃を見るとつまらなそうに眼を細め、もう片方の腕を振るってウォータースピアを撃ち落とした。

 その腕に巻き込まれないよう回避し、着地。一定の距離を取って、ハノンとアレクの間に立つ。


「ふぅむ、契約獣の攻撃に合わせて魔法を放つ連携は、まぁよし。だがいかんせん、こうも軽くては魔法の価値が薄いなぁおい? まだ本物の槍を投げた方が威力があるのではないか?」


「うぅ……『水よ、命の源よ。主を守る盾となりて、潤いを持って事を成さん』……ウォーターシールド!」


 俺の周囲に、水の盾が3つ展開される。ハノンは近づかない事を徹底する事にしたんだろう。

 用心深くヘナを構えて、アレクの動向を伺っている。

 貰ったからには、全力で相手せんとな。


「ほう、ウォーターシールドが3つか。支援には優れておるようだな!」


 相手は余裕こいて行動を遅らせている。その間に再度接敵し、攻撃をしかける!

 蹴りからの追撃は読まれたからな。一気に責め立てて威力を出すしかねぇ。そうなると、こいつが一番だ。


「おぉ! こやつ、魔術を使うのか!」


「フシッ!」


 アイアンシフトを使い、ヴォル・ヘッジホックスタイルへと変身する。これで防御能力も攻撃能力も大幅に向上した。

 回避は下がるが、そこはハノンのウォーターシールドを信じて突っ張ってやる。跳躍と同時に体を丸め、ボール状になってアレクに突撃をかます!


「ぬぅ、これは遊べんな!」


 アレクは、大剣を構えて迎撃の体勢。今なら刃物も怖くはないが……膂力が違うからな。一番やられたくない。

 激しい金属音が響き、体が押し返される感覚。このままだと弾き返される。


「ぬぅ!」


 だから、俺はここで回転を止め、大剣の腹を足場にした。

 この金属の橋を渡れば、相手の顔面はすぐ目の前。一気に押し込み、背中の棘を使ったえげつない一撃を叩き込む!


「ぐ……ぬぅん!」


「フス!?」


 おいおいまじか。

 このおっさん、顔面抉られる寸前で俺の体を掴みやがった。掌を棘が貫通するが、痛手には程遠い。

 逆に、俺が行動を制限されちまう。


「さぁ、どうする角兎ホーンラビットぉ!」


 アレクが思い切り腕を振りかぶり、俺を地面に叩きつけようとしてくる。

 ダメージを受けない方向で行動するなら、ヘッジホックスタイルを解除して離脱が正解。だが……


「ぬぅりゃあ!」


 俺は、あえて離脱を放棄した。

 地面に叩きつけられる寸前、3つのウォーターシールドが俺の前に割り込んでくれる。

 3ついっぺんにシールドが潰れ、勢いを殺していく。普通なら血袋みたいにはじけ飛ぶような威力だろうが、これならば最小限のダメージで済む!


「ふはは、良い判断だ!」


「『清浄なる水をここに。我が敵を打ち倒す槍となりて――――」


「流石にさせんぞ!」


「っ!?」


 俺を無理矢理引き剝がしたアレクは、詠唱の途中だったハノンに突っ込んでいく。

 回避を放棄したのは失敗だった! 距離を離し、ハノンの間に立っておくべきだった。

 俺も食い下がるが、相手の行動の方が速い。この速度じゃ、クイックマッドも間に合わん……!


「くらえぇい!」


 アレクの大剣が、ハノンに襲い掛かる。

 ハノンは詠唱をやめ、盾に変化したヘナを構えて防御を計る。しかし、いくらヘナでもあの剣を耐えられるか……。


「うぅっ、あぁ!」


「くぅ……!」


 ヘナの髪が大剣を受け止め、衝撃を吸収する。

 同時にハノンも、決死の形相で攻撃を逸らし、なんとか受け流そうとしていた。

 ブチブチという音が響き、ヘナの髪が散っていく。ダメージは大きそうだが、なんとか堪えてくれているようだ。


「っあああ!」


 ヘナが堪え、稼いでくれた時間のおかげで、ハノンの受け流しが成功する。

 大剣は、振り下ろされた勢いのままに地面に着弾。土や石を弾け飛ばし、地面に穴を開けるに留まった。

 ハノンはその衝撃で体勢を崩し、横に飛ばされるが、大丈夫。大きなダメージじゃなさそうだ。


「フシッ!」


「ぬ……!」


 そのタイミングでクイックマッドを使い、アレクの足元をぬかるみに変える。抜け出すだけなら、アレクなら容易だろうが……後ろを振り向いての迎撃は、かなりバランスが悪いんじゃないか?


「これは……抜かったな」


「フッ!」


 アレクの背中に、思い切り棘を突き立てる。

 肉を引き裂き、骨を断つ気で。

 ……しかし、俺の攻撃は届かなかった。

 俺の体は、見えない壁にぶつかり、弾き飛ばされていたからだ。


「そこまでです!」


 凛とした声が響く。

 誰なのかは、まぁ、わかるな。


「アナタ、満足しましたね?」


「むぅ、あの攻撃を防ぐ必要などなかっただろう」


「そうはいきませんもの。……この試合、ハノン少年の勝ちです!」


 オリフィリアが試合終了の合図を出す。

 内容からしてみれば、俺の攻撃でトドメを刺せなかった場合、血祭りにあげられそうだが……まぁ、贅沢は言わないさ。勝ちは勝ちだからな。

 同時に、この試合で確信できた。

 パレードでは、俺らみたいな護衛が必須だわ。このおっさん、市民がいる空間での戦闘は不向き過ぎるぞ。

 

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