第128話:模擬戦
どもどもべべでございます!
久しぶりすぎてごめんなさい……ヤバい、二週間ぶりとかやばい。
ちょっと考えてあげないと……
「話は終わったか?」
俺らが気持ちを引き締めた、その時。不意に、声がかかった。
声の主に、一同の視線が集まる。
「大体の流れは決まったようなら、ワシの意見も聞いてはもらえんだろうか。んん?」
ずっと沈黙を続けていた、大男。この町の領主である……たしか、アレクって言ったか。
ようやっと、そいつが口を開いた。頭をぽりぽりとかいている姿はコミカルだが、声に威厳があってなんともアンバランスな光景だ。
「えぇ、もちろんよアナタ。聞かせてちょうだい?」
「うむ。まぁ……なんだ。何のかんのと言ってはいるが、根本的な問題を確認せんことには、作戦決行を良しと言えんものでな」
「根本的な問題、ですか?」
「我々の保有する戦力がいか程のものか、よ」
アレクの視線は、ハノン――いや、俺の方に向いている。
先ほどの反応といい、この前置きといい、何を考えているかは……うん、なんとなくわかってしまうな。ハノンはピンときてないみたいだが。
「なるほど、パレードに参加するにあたり、角兎を従えた従魔師ならば自然かつ警戒もされずに手元に置ける。それは良いのだが……襲撃が起こった際に、本当に戦力となるのかが不安よなぁ?」
「……アナタ、あの角兎は……」
「むぅ、皆まで言うでない」
「ふふ、そうですか」
うぅ、とハノンが唸るのが聞こえるが、なんのことはない。
あのおっさんのキラキラした目を見れば、俺等の実力を疑っていないことなんか明白だ。
むしろ、これから何を言いたいのかが、確信に変わってしまった。まったく、領主の癖になんて血の気の多さだ。
「つ、つまり、どうすればいいんでしょうか……」
「なぁに、簡単よ。ワシと一手、試合って見ればよい。その角兎とお前の実力を見れば、納得がいくというものだ」
「えぇ!?」
「フス……」
やっぱりか。
オリフィリアの「やれやれ仕方ない」みたいな顔からして、相当見境ないんだろう。相手の実力を測る目を持っているくせに、その上でやり合ってみたいと感じてしまう気質のようだ。
「んん? どうだ少年。この老いぼれ一人を相手にできんようでは、到底今回の依頼を認めることなど許されんぞ?」
「……領主様。一応この子は、ボクが認めた戦力でもあるんですが……」
「はっはっは! 矜持に傷が付いたのなら謝ろう。だがせっかく味見できる機会……もとい、己が目で確かめん事にはなぁ?」
「ど、どうしましょう、ヴォルさん……?」
『雇い主はアノンだ。アノンに判断を委ねるしかねぇよ』
ハノンの視線がアノンに映り、アノンは小さくため息をつく。
そして小さく、「諦めてくれ」と呟いた。その瞬間、おっさんの筋肉が怒張したのがわかる。
「彼の実力を見るというのなら、明日に響かない範囲でお願いしますね」
「おぉ、おぉ! ははは、もちろんだ! よぉし少年、屋敷の裏手に行くぞ。そこに訓練場があるのだ」
「ええぇ……! ほ、本当にやるんですか?」
「そこの角兎ならば遅れは取らんだろう? ワシも最低限のルールには則る。心配は無用よ!」
「い、今の言い方! ヴォルさんの強さに気付いてますよね? 実力見る必要、な、ない……!」
「おぉ? そうだったか。いやなにすまん、歳を取ると物忘れが激しくてなぁ!」
「あぁぁっ、ひ、引っ張らないで……!?」
結局、ハノンはおっさんに引っ張られて行ってしまった。
俺も後を付いて行くが……なんだかな。
どうにも、あのおっさんに当てられたらしい。全身の筋肉に、ふつふつと火が付き始めているのを感じる。
絶対強いもんな、あのおっさん。ほぼ同年代だろうし、お互い年甲斐もない事しそうだ。
ハノンには悪いが、命の危険はないんだ。荒事が発生する前に、少しだけ楽しませてもらう事にしよう。




