第121話:可愛くて
どもどもべべでございます!
やべぇ遅刻する! 行ってきます!
どうぞ、お楽しみあれー!
アーケンラーブ。モンスターの軍勢から土地を守り抜いた事で、交易を安定させ文化の最先端を誇るに至った町。
私の育った場所。誇るべき故郷。
しかし、煌びやかな文化を支える領主一家は、私を除いて全員が狂戦士だ。
厳格な両親に、ウォーモンガーな姉。習うより慣れろ、文武問わず、戦場には率先して出向け。
そして、何が何でも生に齧り付け。なんとも泥臭い格言だ。
言いたい事はわかる。そして、事実両親はそのようにして、大防衛を成し遂げたのだというのも理解する。
だが、平和を手に入れてなお、そのスタンスを貫くのはいかがなものか。私はそれが、ただただ疑問だった。
戦闘技術は、まぁ大事だよね。護衛術は最低限身に着けるべきだろうと思う。
しかし、少しくらいはこの町の文明に、更なる発展を見出す知恵も身に着けるべきじゃなかろうか。
そう思って、私はたくさん勉強した。
服飾のデザイン、特産品の開発。劇場の演目、脚本の執筆。
ありとあらゆる文化を、浅く広く学んだ結果……私は。
「うぇへへへ……やべぇです、この子にこの服は反則ですって! うぇっへへへ」
私ことオリーベル・フォン・ゴールは、年端も行かぬ少年少女に、あらぬ感情を抱くようになりました。
いや、どういう事か意味不明だという意見は理解する。しかし、考えてもみてほしい。
演劇の衣装をデザインし、自分の服がカワイイ子に着られ、その子が舞台の上に立つ。
そして初々しく役を演じきった瞬間の、あの笑顔に貫かれてごらんなさいよ。
はしたなくてもいい、言わせてもらう。私はその日、初めて自分で自分を慰めました。
「あぁ~、この子! この子に最新モデルの衣装着て欲しい~! よし唾つけよう、パトロンになっておこう。うぇへへへ……」
そして、私は演劇こそがこの町の文化を象徴するものだと確信したのです。
だから、私は暇さえあれば……いや暇が無くても劇場に足を運ぶのです。良い子を見つけて、いつか何かしらの権力を持ってハーレムを作るために。
……失礼。この街の発展の為に、劇場の点検を欠かさないのです。
「あ~えがった……んぉ?」
そんな私だったから、でしょうか。わずかな異変に気付けたのは。
防衛際4日目のあの時。劇場の警備が、微妙に厚くなっていたのです。
そこは、劇団員がレッスンに使う部屋に続いている通路でした。そこに、見張りともとれる人員が配置されている。
そういえば、今日は新人座長のアノンさんがいなかった。あの美貌とあの小ささを楽しみにしていた私は、がっかりしながらも他のかわいこちゃんに目移りしていたのを思い出す。
レッスン室の見張り。不在の座長。
つまり、アノンさんはあの向こうという事か。
「……さては、期待の新人でもしごいているのでしょうか」
気になってしまったからには、もうどうにも止まらない。
私は己の立場を最大限利用して、見張りの向こうに潜入する事に成功した。これでも領主の娘。やりようはいくらでもございましてよ。
「失礼しま~す」
声を殺し、気配を殺し。
扉の向こうを、少しだけ覗く。
「…………!」
その瞬間に、電流走る。桃源郷がそこにありました。
ふりっふりの服を着たアノンさんが、熱血指導を行っている光景。
しかし、その指導を受けているのもまた、アノンさん。双子にしてもそっくりな顔が並んでいるのだ。
一体どういう事なのか。いや、片方はエロい。なんか妙にエロい。腰つきとか指の反り具合とか、舞いは上手なのにめちゃくちゃエロい。
「あんなん、金の卵やん……!」
どうしよう、凄い光景を目の当たりにしてしまいました。さっきまで見てた子達もカワイイけど、あの子は一段階上を行ってます。
あぁ、あの子を手元に置く事が出来たら、どれほどの至福だろう……!
こうしてはいられない。あの子のパトロンになって色々とにゃんにゃんできるように、家に帰って手続きの準備をしなければ。
という訳で、私はそそくさとその場を後にします。いくらくらい積んだらいいかしら……。
◆ ◆ ◆
「アノンさん、五日目のレッスンよろしくお願いします! 今日は秘策を持ってきたので、もうエッチだなんて言わせませんよっ」
「ハノンくん、まずい事になったよ」
「はい?」
「領主様の娘さんが、君に会いたいそうなんだよね。見張りの子が逆らえなくて、昨日レッスンしてた君を見られたらしいんだよ」
「!?」
「という訳で、今日は娘さんが見に来るから……気をしっかりね」
「う、うわぁぁぁ! 心の準備がぁぁぁ!」




