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第120話:敵性勢力(第三者視点)

どもどもべべでございます!

さ、三下ぁぁぁ!

 

 ハノンとヴォルがパレードに向けての訓練を進めていた、その最中さなか

 アーケンラーブに潜む闇もまた、来るべき時に向けての活動を始めようとしていた。


「あぁん? ナローが護衛を雇っただぁ?」


 太く、低い声が室内に響くと同時に、ミチリと肉を引き千切る音が響く。骨の部分を手に持ち、そのまま肉塊にかぶりつくというのは、最高の贅沢の一つと言えよう。

 肉汁の香りが広がり、その人物の前に跪いた男たちは軽く喉を鳴らした。自分の置かれた状況を理解していてもなお、人間腹だけは減るものだ。


「へ、へぇっ、すいやせん、タールネスの兄貴!」


「あいつ、偶然やってきた冒険者と知り合いだったらしくてですね! 流石に4人に囲まれると、俺等も手が出せなくて……」


 そこにいるのは、例の三下2人組。自分たちがいかにどうしようもない状況だったかを、必死に伝えるために声を張っていた。

 対し、目の前の男は冷ややかな視線を向けている。

 一言で言えば、屈強。丸太が如き腕に、オーガと見間違えそうになる程の体躯。

 グランアインのオゴス程ではないが、それでもなお、正面から見れば相当な威圧感を放っている。

 片目は潰れているのか、眼帯をつけている。強面なのも相まって、完璧なまでの悪役顔となっている男だった。


「その場で暴れりゃ良かっただろうが」


「へぁ?」


 その男、タールネスがかけた言葉は、非情の一言。

 逃げ帰ってきた三下2人は、上司であろう男の言葉にぽかんとする。


「お前らなぁ、何のために自分たちが、ろくすっぽ状況も説明されないままに地上げ稼業やらせてんのか理解しろよ。そういう時に、いくら尋問されても最低限の情報しか漏れないようにしてんだろうが」


「や、あ、そんな! 俺達はアンタに認められてこの一派に……!」


「だから、認めてやってんだろ? 使い捨ての鉄砲玉としてよぉ」


 そこまで言って、タールネスはまた肉にかぶりついた。あまりに当然といった態度に、三下2人は唖然としてその様子を見つめることしかできない。


「んぐ、大体な、向こうは表立って事を荒立てるのを嫌う連中が集まってんだ。お前ら2人が暴れるってぇ状況すら、向こうにとっちゃ都合が悪い。……だから、せいぜい派手にやれって命令したんだぜ? 理解しろよな」


「な、な……」


「でなけりゃあ、よそから流れて来たテメェらを使う理由なんてねぇだろう。せっかくナローを知ってて気に入らねぇって言ってたから、試しに使ってみたんだぞ?」


 小さくため息をつき、身の無くなった骨をしゃぶりながらため息をつく上司に、三下2人は激昂する。

 そも、グランアインから流れて来たごろつきであったこの2人に声をかけてきたのは、他でもないタールネスだったのだ。自分たちの腕っぷしを見込まれ、舎弟にしてもらったと彼等は思いこんでいた。

 しかし、蓋を開けてみれば何のことは無い。彼等の存在は、盗賊ギルドの下っ端以下の扱いであったのだ。


「ふ、ふざけるなよぉ!?」


「金払いが良かったから大人しくしてりゃあ、調子に乗りやがって!」


 勢いよく立ち上がる2人組に対し、タールネスは無言。

 味のしなくなった骨を見るのと同じ視線を、2人に向けるのみである。


「その態度は、俺に逆らうって事でいいんだな?」


「逆らうだぁ? 俺らをこけにした報いを受けてもらうだけよぉ!」


「へへへ、こっちは2人いるんだ。今更後悔しても遅いぜぇ!」


 懐に隠し持ったナイフを取り出し、その腹を舐めて威嚇する男たち。


「ひゃひゃはぁ! 死にやかぺっ」


 だが、余裕は長く続かなかった。

 三下2人組、その片方の頭が無くなったからである。


「……は?」


「お前なぁ、考え無しにも程があるだろう」


 崩れ落ちる相方の胴体を見て、汗が一気に噴き出してくる。

 視線をタールネスに向けると、彼は懐から一本の筒を取り出していた。その筒は、真っすぐ自分に向けられている。

 この状況。流石に頭の悪い三下だろうと理解する。

 自分の相方は、あの筒によって命を奪われた。そして、今度はその凶器が自分に向けられているのだと。


「これはな、特定の魔術をため込んで置けるマジックアイテムだ。アクアビットなら水筒代わりになるし、ライトなら暗がりの探索に便利なもんでな。まぁ、攻撃用の魔術を組み込むと、当然武器代わりにもなるんだよ」


「あ、ぅ……」


「ちなみに、今ため込んでるのはエアロバレットだ。このサイズでも、後2発は撃てる。……今お前の頭に狙い定めてるけど、避けてみるか? 2発躱せれば、生きる目があるぜ」


 風の弾。本来ならば空気を濃縮する過程が視認でき、弾速もそこまで速くはないため、躱すのは割と不可能ではない攻撃だ。

 しかし、このアイテムは既に完成した魔術を込めている。手間はかかるが当然無詠唱であり、事前のタイミングが一切計れない。

 いきなり飛び出してくる半透明の弾丸を避ける事は、容易ではないだろう。


「た、頼む! 見逃して、いえ、許してください! 俺、なんだってしやす!」


 回避は不可能に近い。そう判断した男の対応は、即座の土下座であった。


「身の振り方間違えて、許しては都合が良くないか?」


「す、すみませんでしたぁ!」


「まぁ、お前なんぞでもまだ使おうと思えば使えるしな。駒を減らしたいわけじゃないんだ。使ってやるからありがたく思えよ?」


「はいぃ! ありがとうございますぅ!」


 土下座する男の頭に足を乗せつつ、タールネスは思案する。

 このゴミを有効活用するには、どのような配置が良いか。

 やがて、その思考は止まり、一つの結論に至った。


「おう、お前。ちと劇場行ってこい」


「げ、劇場、ですか……?」


「そうだ。そこに座長がいるはずだから、一丁斬りかかってこい」


 魔の手は、時を待たずして牙を剥く。

 パレードまでは、後2日。水面下の抗争が、いよいよ激化を始めようとしていた。

 

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[一言] ひゃっはあああ!!!! ナイフ美味えええ!!!!(ペロペロペロペロ)
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