第119話:背徳の訓練
どもどもべべでございます!
少しずつでも、なんとか投稿。できれば何かしらの短編もあげたいなぁ。
では、お楽しみあれー!
一体どうしてこうなった。
もう一度言う。一体どうしてこうなった。
「ハノンくん! そこでターンだよ!」
「は、はひっ」
「足運びがなってない! もう少しキビキビ動く!」
「は、いっ、んん!」
「喘がない! ボクはそんなにエッチじゃないよ!」
「え、えっち?」
俺達は今、アノンの指導下でパレードに向けての特訓をしている。人目がつかないように裏口から入り、劇場の訓練施設を借りて行われている。
本番まであと2日。それまでに、最低限の振り付けをマスターしないといけないのはかなり大変だ。
当然、パレードは先ほどの衣装を着ないといけないのだから、ハノンは女装したままで踊る事になる。不本意な女装で頬を赤らめながら踊るハノンには、一定の需要があるんだろうと思ってしまうな。
「ほらヴォルくん! もっとお互いにくっついて!」
「私を領主様だと思って、肩に乗ったまま頬ずりし合っててくださいね」
「フス……」
「フス、フス」
だが、俺だって今は大変だ。ハノンにばかり気を配ってはいられない。
まさか、3日続けてこの嬢ちゃんとくっつき合うとは思わねぇじゃねぇか。どんだけ縁があるんだ俺ら。
『あ、あの、そういう事なので……失礼しますね?』
『お、おう』
俺の頬に、嬢ちゃんの毛皮が擦り合わされる、元々柔らかな柔兎だ。俺の体はその身に呑まれ、むにむにとした感触を味わわせてくれる。
その肉厚と柔らかさたるや。娼館で一番の姉ちゃんとのハグだって、ここまでの心地よさを味わわせてはくれんぞ。
無表情な姉ちゃんの肩に乗り、体を擦りつけ合うのはなんとも背徳的だ。落ち着かせようとしてた獣性が、またぶり返しそうになってくる。
「フゥ、フゥ……」
「フシ、フス」
「……ヴォルさん、発情してます?」
「フスッ!?」
「ハノンくん! 腰使いはもう少し大人しく! それじゃ風俗と変わんないからね!?」
「え、ぁ、は、はいっ!」
どうにも、ハノンは無自覚な動きがパレードには向かないらしいな。
生まれ持っての癖は、矯正しづらいもんだ。これは中々労力がいるかもしれん。
俺も、理性と本能とのせめぎ合いに耐えながらの訓練だ。お互いに頑張ろうぜ、ハノン。
「……ん?」
「はぁ、はぁ……どうしました?」
「いや、気のせいかな。視線を感じたような気がしたんだけど……うん、誰もいないね」
視線? 正直そんなの気にする余裕が無かったが、気配に敏感であろうアノンが気のせいだと言うんなら、気にする事はないだろう。
そんなこんなで、俺たちは祭を楽しむ余裕もなく、訓練に明け暮れた。
それはもう、一日を費やしての突貫だった。アノンは偽りの身分とはいえ、劇団の座長。かなり厳しい指導でハノンをしごいていたため、ハノンもみるみる上達していったな。
厳しさの甲斐あって、我ながら素晴らしい出来になっているはずだ。もはや俺とハノンに、隙は無いと言っていい。
今なら完璧に、影武者と護衛の両方をを努める事ができるだろう!
「えー、結論から言うけど、君たちエロ過ぎるんだよね!」
「乱れすぎです、ハノンさん、ヴォルさん」
「フス……」
「「えぇ(フス)……?」」
どうしてこうなった。
もう一度言う。どうしてこうなった。
俺とハノンは、女性2人の前で正座させられて説教を食らっていた。訓練で疲れた体で正座とか、ここには鬼しかいないのか。
いや、柔兎の嬢ちゃんだけは心配そうにこっちを見てるな。癒しはここに存在していた。
「ヴォルくん、君は発情をまったく隠せてないよね! パレードに支障が出るなら、その子とスッキリしてきなさい!」
こいつ、なんて恐ろしい事を宣いやがる! しかも本人の目の前で!
可哀想に、せっかくの癒しであった嬢ちゃんは、毛皮越しにわかる程に真っ赤になってプルプル震えている。
『あ、あの……不束者ですが……』
『いや手ぇ出さないからね! 俺ってば中身人間だからね!』
『そ、そうですよね。えぇ、そうですものね……』
くそぅ、しょんぼりするなよ。脈あり過ぎてどうしていいかわからなくなるだろ!
あぁそうだよ、白状するよ! 訓練中もおっさんの下衆な欲望で感触を楽しんでましたよ!
「そしてハノンくん! 君の仕草が一々エッチになるのは何の意志が介入しているのかな!?」
「そ、そんなこと言われましても……! ぼ、僕はアノンさんの言われた通りに……」
「振りつけは物覚えも良くて実に見事だけどね! けど表情と微妙な動きの柔らかさのせいで絶妙にエロいんだよね! 誘ってる? 誘ってるよね!?」
「え、えろ……そんな事言われても、僕、わかりませんっ」
「あぁもう、このエロエロコンビはどうしたものかなぁ」
エロエロコンビって言うな!
しかし、どうにも参ったな。一日訓練しての評価がこれじゃあ、本番までには間に合いそうにない。
まさか、エロさのせいで作戦に支障が出るなんて、誰が予想出来ただろう。……いや、まぁ若気の至りで色々やらかした事は結構あるんだけど、それは今言う事ではないな。
「どうでしょうアノン様。この際、アノン様が後々そういう雰囲気の芝居をするという事にして、今回はこのままパレードに参加させるというのは」
「え、ボクはこれからエロの化身として生きていかないといけないの? そんなの耐えられないよ! ボクはハノンくんとは違うんだよ!?」
「ぼ、僕だってエッチじゃないですよ!?」
どうしたもんかな……ハノンのエロさを抑えながらパレードに参加させる方法か。
本来なら、一発娼館にでも連れて行ってどうこうすれば抑えられそうなもんだが、ハノンは娼館ギルドにも狙われているらしいからな。
町が違っても、ギルドの横の繋がりは侮れない。これまで通り、あまりその辺には近づけない方が良いだろうな。
「はぁ……仕方ないなぁ。今は祭りの5日目だから、あと1日あるよね。その1日で、なんとか見れる程度にまで矯正するしかないか」
「角兎の方も対処が必要ですね。……少し考えがありますので、明日実行に移しましょう」
考え、ね。
俺の発情を抑えてくれる何かがあるって事だろうか。だとしたら万々歳だ。
是非なんとかしてもらいたい所だから、明日を楽しみにしていよう。
「いいかいハノンくん。明日以内に完璧に仕上げるから、そのつもりでよろしくね!」
「わ、わかりました。僕がエッチなんかじゃないって、証明してみせます……!」
「正直、その辺りはボク以上だと思うから証明できないと思うけど……」
「え?」
「いや、なんでもないさ! ……はぁ、せめて外部から矯正できないもんかな……」
……ん? 外部から、矯正か。
なるほど、その手があったか。もしかしたら、ハノンのエロさを隠す事ができるかもしれん。
そうと決まれば、早速今晩でも相談してみるとしよう。俺たちはその後、風呂を堪能して早々に宿屋に帰ったのだった。




