第118話:ハノンちゃん
どもどもべべでございます!
お休みを利用して、なんとかご投稿です!
どうぞ、お楽しみあれー!
「うんうん、これはいい! 実に素晴らしいね!」
「いやはや本当に。よくお似合いで」
「アノン様だと、ここまで可愛らしくはなれませんね」
「はっはっは! よぅし表へ出ろ!」
盗賊ギルド組は、えらくご機嫌に笑い合っている。
ほくほく顔のおっさんに、無表情のまま水晶のアイテムを連写している姉ちゃん。そして笑顔で拳を振り上げるアノン。
場所は変わらず会議室ながら、その雰囲気は和気あいあいとしたものになっている。
「か、帰ります! 今すぐ、グランアインに……!」
ハノンを除いて、だが。
「決めた事をあっさり反故にするなんて、男らしくないぞハノンくん! いや、今はハノンちゃんかなハッハッハ!」
「こ、こんなの、聞いてませんよ……! 僕、む、無理です!」
今現在、ハノンはアノンの影武者となるべく変装を余儀なくされている。まぁ事前のすり合わせって奴だな。
そして、その服装は……事もあろうに、ギーメイの持ってきた衣装だった。
同じ衣装が2組になって入ってたのは、そういう事だったんだな。
「いやいや、ハノンさん。正直なところ、これはお金取れるクオリティですぞ。恥じらいが強い分、アノン様よりも初々しいですからな」
「ボンズさんまでそう言うか。どうやら私の味方はいないらしい!」
「そ、そう言われても……お、女物の服を着て、人前になんて、出れません……!」
そう、ギーメイの用意した服は、どれもこれも女物だったのは、ここに来る前に確認した通りだ。
今のハノンは、スパッツの上に飾り程度のスカートを付け、全体的にフリフリした服に着替えている。いくつか派生がある踊り子のスタイルの中に、アイドルっていう奴があるが、そいつらが好んでこういう服着てる事が多いな。
ハノンもなんだかんだ言って、鍛えている男だ。体つきはそれ相応に締まってきているため、線を隠すようにフリルを多めにしているらしい。
腕も、ノースリーブに追加で……なんだ、腕カバー的なナニガシをつけている。やたらぶかぶかでフリフリで、手とか隠れてて動きづらそうだ。
しかし、なんだな……それなのに、脚を大きく露出できてるのが凄い。
風呂場でも感じた通り、ハノンの下半身は、鍛えていてなお一定の肉が付いている。その柔らかさは、女性的な服を着こんでも違和感が無いくらいだ。
おかげ様で今ハノンは、長い腕カバーで下半身を隔しながら赤面しているという状況だ。腕カバーが早速役に立ってるな。
「言ったよねハノンくん? ボクの仕事は、パレードの裏方に徹しての護衛だって! 護衛ならば当然、対象の近くにいる必要がある。それはつまり、パレードに参加していなければいけないという事さ!」
「あぅ……そ、それは確かに、そうなんでしょうけど……!」
「そしてパレードと言えば、大賑わいの歌と踊り! そしてボクの表の顔は、新鋭の劇団長! パレードで踊り子を努めるのも当然という事さ!」
「うぅ……!」
うん、まぁ、そうだな。
アノンがパレードに参加しつつ、誰かを守れる位置にいる必要があるならば、確かに領主の近くで踊ってる方が違和感ないんだろう。理にかなっている。
「今回のパレードは、領主様が動物たちと戯れながら、踊る妖精達を連れて回るという内容なのです。ハノンさんはその妖精ポジション、そして角兎を直接お傍に置いて、護衛についてもらいます」
「フス」
なるほどねぇ。違和感が無いな。
一々パレードにテーマを設けるのは感覚がわからんが、そういうシチュエーションなら俺が近くにいれる。ハノンも周囲をウロチョロできるし、周りを観察しやすいな。
『いいじゃねぇかハノン、理にかなってるぜ』
「そ、そんな! ヴォルさんまでっ」
『そりゃあ、見れねぇくらいに酷い出来なら俺も反対したけどよ。今のお前なら、普通に女にしか見えん。護衛として近くにいるにゃあ、バッチリの出来栄えだ』
「うぅ……」
本番では化粧もすんだろうし、そうなるとますます違和感が無いだろう。事を起こす相手も、盗賊ギルドのアノンが近くにいるって認識になるだろうし、アクションを起こしづらくなるはずだ。
その間に、アノンが黒幕を叩く。充分に作戦として成り立っているなら、女装くらいは許容範囲だろうさ。
「どうやら、ヴォルくんも反対じゃないようだね?」
「決まりですかな」
「すみません、もう少し顔を上げてもらっていいですか? 見上げる感じで……」
「う、うぅぅ……! うわぁぁぁん!」
味方がいなくなったハノンは、部屋の隅に駆け込んでフィットすると、しゃがんだまま頭を押さえて引きこもってしまった。
前は充分隠れていたが、後ろは割と露出してんだな。背中のラインから尻にかけて、少しだけ谷間が覗いている。
「ふむ、これはこれで……」
無表情姉ちゃんが、変えの水晶を取り出してまた連写し始めた。そのアイテム、相当高価だったと思うんだが。
「さてさて! じゃあボンズさん。彼女の様子はどうだい?」
「はい、念話持ちが通訳してくれたので、今は了承して大人しく待っておりますよ」
あん?
なんだ、まだ協力者がいるのか?
まぁ、護衛は多い方がいいんだが。
「それはいい。きっとヴォルくんも喜ぶだろうさ」
「フス?」
「ふふふ、何がって顔だね? いやなに、君にもそれ相応の役どころがあるって事さ!」
……なんだと?
俺の役どころ? ……待て、今ボンズのおっさんなんて言った?
念話持ち? 通訳?
「いやはや、今回のパレードは、動物たちとの触れ合いも意識しなければいけないので。とはいえ、襲撃が予想されるパレードに、普通の動物を使っては無用なトラブルが起きかねませんからな」
「だからこそ、ヴォルくんがいてくれて助かったんだよ。……けど、いかんせん、動物が君1匹では足りなくてねぇ。こちらで意思の疎通が取れるモンスターを1匹、選抜させてもらったのさ」
……雲行きが怪しくなってきたぞ。
「いやぁ、彼女の望みを聞いてみた所、ヴォルさんのお役に少しでも立ちたいという事で。相当な覚悟を持っておりましたので、それならばと」
「丁度、見た目的にもバッチリだったからね! 君と彼女のタッグが領主様の傍にいれば、そりゃあもう住民は癒されるだろうさっ」
俺の役に? 望みを聞く?
見た目もバッチリ……おいおい、マジかよ。
俺が狼狽えた瞬間、ドアがノックされた。アノンが入室を許可すると、ギルドの一員であろう女性が入ってくる。
その腕には、1つのケージが抱えられていた。
「ほら、昨晩ぶりの再会だ。ボンズさんにとっては、命の恩人が2匹揃った形だねっ」
「いやぁ、せめてものお礼に、彼女の望みを叶えてあげたかったのです。役に立てて良かった。……ヴォルさん。彼女は、貴方の役に立ちたいと望んで、この作戦に立候補してくれたのですよ」
ケージの中には、予想通りというか、なんというか……。
『あ、あの……昨晩は、ありがとうございます』
『お、おう……』
昨日会ったばかりの、柔兎が入っていた。
後ろでハノンが「あぁぁぁ」と悶えてる声が、妙に遠くに感じた。




