第116話:結託
どもどもべべでございます!
またコロナが大変な事に……何事も無いことを祈りましょう。
ではではご投稿! どうぞ、お楽しみあれー!
さて、現状は最悪だと言っていい。なんせ、実質的な人質を向こうに取られてるんだからな。
それがお目当ての人物かもわからないってのに、人質として機能するなんておかしな話だ。しかし、少しでも可能性があるのならば、ハノンとしては断るに断れん。
だが、必要以上に危険だと判断する内容ならば、無理にでも止めんといかんな。
「……お話し、聞かせてもらってもいいですか?」
「おぉ! 君は善意に溢れた少年だね。素晴らしい!」
こいつ、いけしゃあしゃあと……!
なんだこの性格の差は。慣れ親しんだハノンの顔だけに、恐怖すら覚えるギャップを感じてしまう。
「なに、内容自体は簡単さ。君の活躍は聞いてるからね、おあつらえ向きの役どころを用意したとも。ズバリ、護衛任務だよ」
「護衛、ですか?」
「そうさ。君の盾持ちとしての評価は部下からも好評でね」
ナローからの報告が上がってるってことかね。
……いや、確かにナローからの評価は高いだろうとは思う。しかし、ハノンの盾持ちとしての技量はまだ並みの域を出ていない。
つまりこれは、盾持ちだけの要素で選ばれた訳じゃない護衛って事だ。ハノンも、その辺りは察しているらしく、少し考えている。
「……えぇと、正直、僕は盾持ちとしてはまだまだ未熟なので、あまり過度な期待をかけられても困るのですが……」
「謙遜しないでおくれ。君は盾持ちでありながら魔術を行使し、イレギュラーなまでに強い角兎を連れているじゃないか。まさに我々にとっては、君のような歪な守り手が必要になっていたんだよ」
歪な盾持ちが欲しかった、ね。
つまりは、まともにガチガチな装備ではいられなさそうだな。
「アノンさんと顔が似てるから、というのも要因ですよね? 偶然とは思えませんし……本当なら、アノンさんがその護衛につく手はず、なのでは?」
その指摘に、アノンは満足そうに口角を吊り上げる。
やはりというかなんというか、ハノンの役割は、アノンの影武者らしい。それも、護衛任務という危険が確定したような状況下での影武者だ。
「聡明な子だ。同じ顔として鼻が高いね! 察しの通り、ボクはとある人物の護衛を頼まれている。盗賊ギルドとして、裏から対象を見守りつつ、防衛祭のフィナーレを飾るという重要な案件さ」
「防衛祭のフィナーレ、ですか?」
「そうさ。防衛祭では最終日に、街の平和を守った英雄が行進を行うんだよ。市民はその姿を見て歓喜し、また来年も平和を維持しようと心に誓うという麗しい風習さ」
アノンは一度言葉を切り、足を組む。脚が大きく露出した服装をしているため、ハノンはバツが悪そうに視線を逸らした。
いや、まぁ細身ながらも整ったスタイルだとは思うが、お前もその辺はどっこいだから、そんなに気にする事はないと思うぞ。自分見てるようなもんだろ。
「しかし、そんな神聖な行事を台無しにしようとしている族がいるんだ。嘆かわしい話だと思わないかい? しかもその企みを、身内が実行に移そうとしているんだから始末に負えないよ」
「身内、ですか? 盗賊ギルド内で、そのような事を考えている人がいる……と」
「あぁ、うちも一枚岩ではないからね。新参であるボクの派閥を良く思っていない連中や、もっと甘い汁を吸いたくて平和を乱す奴らがいるのさ。……それでも、防衛祭に手を出そうなんて暴挙は、今まで無かったんだよ」
アノンは小さくため息をつき、俺達に向き直る。
先ほどまでの飄々とした態度ではなく、真っすぐな瞳だった。
「何に目が眩んだかは知らないが、防衛祭を潰す訳にはいかない。ボクは今回、全力を持って自陣の膿を取り除くつもりなんだ。その為には、彼等の知らないカードが欲しい。それにうってつけなのが、君なんだよ……ハノンくん」
「僕が、アノンさんとして護衛をしている間に……アノンさんが、その首謀者を叩く、という事ですか」
「君は本当に聡明だ。是非ウチに欲しいよ」
ふむ、内容は把握できた。
そして、ギーメイが何故ハノンをこの街に送り込んだのかも理解したぞ。アノンの影武者として売りつけたって訳だ。
「……正直、不安で仕方ありません。そこまでの決意に応えられなかったらと思うと」
俯き、指で指を弄りながら不安を漏らすハノン。
しかし、その表情とは裏腹に、瞳は揺れていない。これは、ハノンが何かを決めた時の表情だ。
「でも……この街は、僕が師事している人の故郷でもあります。その人の街を、守れるのなら……是非、協力させてください」
……ま、そうだよな。
アーケンラーブの平和に繋がる案件だと聞かされたのなら、ハノンが断るはずも無かった。
オリアンティの住むこの街が危機に晒されている。それだけで、こいつには動く理由として充分だろうさ。
正直、俺としては装備が限られそうな盤面だから遠慮して欲しいんだけどな。
「ありがとう、君の協力に心から感謝するよ。君がこの街に滞在している限り、我々は援助を惜しまないと思って欲しい。せめてもの誠意という奴さ」
「あ、ありがとうございます。えぇと、それで、護衛対象はどんな人なんでしょうか?」
「あぁ」
アノンは、透明な水晶を取り出してテーブルの上に置く。風景や人物をその中に写しておけるアイテムだな。
その水晶が起動し、一人の人物が浮かび上がってきた。
「……え?」
「フス?」
その姿を見て、ハノンと俺は声を上げてしまう。ヘナが見ていても、何かしらのリアクションを取った事だろう。
「オ、オリィさん?」
『だよ、な?』
「おや、知り合いかい?」
そこにいたのは、オリアンティだった。
……オリアンティ、だよな? いや、でもなんか、違和感が……。
「彼女の名前は、オリフィリア・フォン・ゴール。この街の領主様の妻にして、防衛祭の起源となった大防衛を成し遂げた、まさに英雄だよ」
「え、えぇぇ!?」
オリフィリア? 別人って事は……あいつの母ちゃんかなんかか!?
というか、オリアンティ! あいつ領主の家系だったのかよ!




