第114話:いちゃもん
どもどもべべでございます!
長らく更新を開けていて申し訳ありません。
しばらく忙しさが続くかも……ですが、こんな作品で良ければ読んでいただけたら幸いです!
どうぞ、お楽しみあれー!
朝風呂を堪能し、さっぱりとした顔で町を歩くハノン。
血色の良いその肌は、歩く度にどこかしらを揺らしている。お前それ、冒険者のしてていい肌じゃないと思うぞ。
「ナローさんのお店か? 俺らも昨日覗いてみたぞ」
「劇場とは反対の方角だったな。あ、それ一口いいか?」
「あ、はいどうぞ」
ハノンと一緒にい歩いているのは、昨日まで一緒だった銅貨三人組だ。ナローの店を探している間に、屋台の姉ちゃんと値切り交渉(靴舐めも検討する程のごり押し交渉)をしていたのを発見して、ナローの店まで案内してもらっている。
本当は見て見ぬふりをしたかったが、ハノンが話しかけてしまったものは仕方がない。
『……進まねぇな』
「あはは……」
最初はまったく応じなかった姉ちゃん達が、ハノンを見た瞬間黄色い声を上げてガンガン値段を下げていったのを見て、こいつらは味をしめたらしい。移動中も、ハノンに絆されそうな女性の屋台に誘っては値切りを行っている。
おかげでハノンは、両手に様々な料理を抱えての移動を余儀なくされていた。荷物持ちと称して、銅貨三人組はその料理を受け取っては食っていく。
金自体はこいつらが出してるから、文句はないんだが……案内が進まないのはいただけん。そろそろ口出しならぬ、足を出すべきだろうか。
「もぐもぐ……あぁ、そこよそこ~。あの屋台とは思えない大きなお店よ~」
「うわぁ、もはやお店ですね……というか、普通のお店では?」
「折りたたんで移動が出来れば屋台だって言ってたな。……ところで、なんで角兎は蹴りの体勢に入ってるんだ?」
「……フス」
チッ、運が良かったな。
俺の足が炸裂する前に見つかった店は、確かにどう見ても普通の店舗のようだった。骨組みだけだなんて事は断じてないし、外装もしっかりしている。
しかし、よくよく見れば基礎と地面との接合部が僅かに浮いてたりしてるし、店としては規模も小さい。
『なるほど、【魔女の家】か』
「魔女の家、ですか?」
『地属性の魔術の一つさ。込めた魔力によって、規模の異なる居住空間を作り出せるって代物だよ』
旅路で使うなら、ただの土くれで出来た祠で充分なんだがな。どこかに拠点を構える場合にはこういった住居を作る事もある。
これだけの規模で店舗を構えるなら、数人がかりでの魔術だろうな。
『ナローめ、この祭りに随分力入れてるんだな』
「そうなんですね……」
「お~い、契約獣とばかり話してないで、さっさと入っちまおうぜ」
戦士の男に肩を叩かれ、ハノンは慌てて店の前に立つ。
と、その時だ。
「あぁんコラ! テメこら誰に許可取ってこんな店開いてんだオォン!?」
「ショバ代払ったんか? なぁ払ったんか?」
……なんだろう。随分とこう、テンプレな台詞が中から聞こえてきた。
懐かしいなぁ。昔は俺も、あんな風にオラついてた時期があった。兄貴分だったオゴスの旦那に付いてっては、周りの奴らに絡んでゲンコツ貰ってたっけ。
って、そんな思い出に浸ってる場合じゃなさそうだな。
「おいおい、なんだ?」
「おじゃましま~す」
「ハノン、待っとくか?」
「い、いえ、行きます」
ただならぬ気配を感じた俺達は、扉を開けて中に入っていく。
いや、正直俺としては、脅威として認識したくないんだがな?
「おや皆、いらっしゃいませ」
「あぁん!? んだテメェらこらぁ!」
「見せもんじゃねぇぞおぉん!?」
店内は雰囲気の良い雑貨屋だった。
白を基調とした内装に、狭いながらも充実したラインナップの商品。正直屋台ではない。断じてない。
店内には清潔感があるが、中から聞こえていた声の通りの連中がそれを汚している。それはもう見事な三下が2人、カウンターに立っているナローに絡んでいた。
いやぁ、まるでお手本のような三下だ。ここまで見事に三下と呼べるほどの三下も珍しい。
初めてハノンと戦った、三下を演じてた暗殺者達に見習ってほしいくらいだ。
「おいおいお前ら、何を営業妨害してんだよ?」
「あぁぁん!? こいつがショバ代払わねぇかからちょーしゅうしてんだよぉ! せーとうなけんりって奴よぉ!」
「ナローの野郎、よそ者のくせしてタールネスの兄貴に逆らうからなぁ! ちとお灸を据えてやってんのさぁ!」
「ちょ、バカおま、バラすなってあにきに言われてんだろうがよ!」
タールネス? ナローの名前を知ってるって事は、こいつらナローと同門か。
もしくは、盗賊ギルドの敵対組織か?
「まぁ、ご覧の通り。困っていてね。良ければ助けてくれないかな?」
「は、はいっ」
ハノンがいそいそと盾を取り出し、三人組もまた襲われても良い体勢を取る。ヘナは……出るまでもないだろうな。
流石の三下も、4人と一匹は相手にしないと思うんだが、どうだ?
「お、おいお前ら、俺らにさからうってのかぁ?」
「タールネスの兄貴が黙ってねぇぞ!?」
うん、見事な三下っぷりだ。
そもそも俺らよそ者だから、タールネスがどれ程の人物かわからないからなぁ。その脅しは効果半減と言っていい。
不要なトラブルなら避けるところだが、今回はナローが巻き込まれている。手を出さない選択肢はないだろう。
「逆らうもなにも、私達は彼の護衛を依頼された冒険者だし~」
「正当防衛だよな。そっちが店に手を出さない限り、俺等は何もしないぜ?」
「なぁ、大人しく出てくってんなら、穏便に済ませるが?」
こいつら、値切り交渉の時にはあんなに見苦しく騒いでたのに、こういう時には無駄にかっこつけるな……。
いや、良いんだけどな。しっかりと効果的なことやってるし。
「ぐ、ぐぐぐ……!」
「こっ、今回はこのくらいにしといてやらぁ!」
「このことは兄貴にほーこくしてやるからな! お、覚えてろよ!?」
三下達は、またしても典型的なセリフを吐いてその場を後にしていく。
いやまぁ、報告されるってんなら逃がす手はないと思うんだが、ナローが首を横に振ってるからな。追わなくてよさそうだ。
「いやぁ助かったよ。ありがとうね皆」
「ナローさん。あいつら何だったんだ?」
「あぁ、同業者の嫉妬による妨害って奴さ。僕らの界隈も、一枚岩じゃないからねぇ」
どっちの界隈か? なんて野暮な事は聞かなくていいな。
この町の盗賊ギルドは、結構荒れてるようだ。
「僕はグランアインを拠点にしてるからね。それがこうしてアーケンラーブで一旗揚げようとしてるのが、気に食わないんだろうね。良ければ君たち、また奴らが来ても良いように、護衛してくれないかな? 報酬は払うからさ」
「えぇ~、せっかくの祭りなのに……」
「帰りの護衛は別の冒険者に頼もうかなぁ……」
「「「やらせていただきます!」」」
……お前ら。
その様子を見るに、相当使い込んだな?
「ナローさん、僕も……」
「おっと、ハノンくんは大事な用事があるだろう?」
「けど……」
「大丈夫だよ。むしろ、君にはこの問題の根本を解決してもらうために動いてもらうからね」
「え?」
……嫌な事を聞いたな。
どうやら、ただ荷物を運んで情報を貰うって案件じゃなさそうだ。そんな気はしてたけどな。
ギーメイも承知の上だろう。本当に盗賊ギルドには、良い性格してる奴しかいねぇ。
「ふふ、お願いね。ついでに何か買っていくかい? 助けてくれたお礼に、割引してあげる」
「え、えと、じゃあ……」
「冒険者に御用達のアイテムもあるから、どうぞ見ていっておくれ」
その後。ハノンはナローのおススメをいくつか買わされて、店を後にした。
土産物もあるにはあったが、ポーションや帰還の羽根は高すぎる気がするぞ……。一般市民は絶対に買わんだろう。




