第105話:アーケンラーブ
どもどもべべでございます!
さぁ、いよいよ次からはアーケンラーブ編!
同時に、ハノンくんとヘナちゃん、そしてヴォルさんの3人という最小数キャラで個々を描いていきますよ!
どうぞ、お楽しみあれー!
「皆さん! 本当に、ありがとうございました! どうお礼をしたら良いか……」
「俺たちからも礼を言わせてくれ。本当にありがとう!」
「死んじゃうかと思いました……」
重蜥蜴を討伐した後、俺たちは襲われていた荷馬車の面々と顔を合わせていた。
さっきの青年と神官少女、そして荷馬車を運転していたおっさん、3人だな。
うん、おっさんとはこれからも仲良くできそうだ。頭髪的に。
「いえ、皆さんが無事で何よりですよ」
「俺らも危険手当になったしな!」
「いや、本当に助かりました……やはり、護衛の数をケチるものではありませんなぁ」
「父さん、だから言っただろう? 僕らだって冒険者としてはまだまだなんだから」
「そうですよお父さん。これからはちゃんと人数を雇いましょうね」
ふむ、どうやらこの2人はおっさんの身内らしいな。
冒険者ギルドを通しての依頼ではなく、このおっさんの親族が冒険者だったから、お願いして護衛してもらってたのか。
「肝に銘じておくよ……。っとと、お礼と言ってはなんですが、助けていただいた皆さんにこちらを! うちで作ったチーズです」
「へぇ、チーズか」
「牧場主さんなんですねぇ」
「えぇ、この近くの牧場で働いております」
しかし、銅貨3人組のおかげで円滑に会話が進むな。
既にハノンは輪の後ろで笑ってごまかしてるだけになっている。人見知りはまだまだ改善されきってはいないらしい。
今回ばかりは、こいつらが一緒に依頼をこなしてくれてたすかったな。
「いやぁ、祭りに使う食材がダメにならなくて本当によかった」
「お? 祭りがあるんだな」
「えぇ。アーケンラーブの町で毎年行われる、防衛祭という奴です」
防衛祭。
聞いた事があるな。かつて大量のモンスターに町が攻め込まれた際、貴族と民が手を取って撃退した過去があるんだとか。
それを記念日として、祭りを開くことになったんだよな。大体20年くらい前からある、比較的新しい文化だ。
「防衛祭は、一週間続きます。3日前に開催されましたので、後4日は楽しめますよ。この機会に是非、アーケンラーブを好きになっていただけたら我々も嬉しいです」
「そうですね。楽しんでいきますよ」
ナローがにこやかに対応し、この3人とはここでお別れだ。
去り際に何度も何度も頭を下げながら町へ向かう牧場親子を見送った後、戦士がナローに語りかける。
「この時期に荷下ろしって事は、この商品は祭りに使うのか?」
「うん、だから言ったでしょう? アーケンラーブでしばらく滞在するから、もし片道だけの依頼で良いなら帰ってもいいって。祭りで一枚かませてもらうのさ」
「なによぉ、祭りを楽しむなんて選択肢があるんなら、私達だって滞在するに決まってるじゃないっ」
「だな。報酬を祭りで溶かす未来が目に浮かぶようだぜ」
「飲んで食うぞ~!」
それでいいのか銅貨3人組。
『……ハノンは、祭りに行ってみたいか?』
「は、はい。どんなお祭りなのか、楽しみです……!」
『そうか。じゃあ俺らも滞在で決定だな。元々オリアンティに会えるか試してみるつもりだったし、丁度いいだろ』
それに、祭りだったら良いストレス解消になりそうだ。
変に昂ってる角兎の本能を、鎮めてくれるかもしれん。いい加減抑え込んでおきたいんだよな、この発情……。
「さて、それじゃあ僕らも行こうか。アーケンラーブまではもう少しだからね」
「おう!」
「は~い」
「は、はいっ」
その後、これ以上のトラブルは特になく、俺たちはアーケンラーブに到着する事ができた。
流石は現在祭りの真っ最中。観光客もそれなりにいるらしく、手続きにそこそこ並ぶ必要があったが、まぁそこは当然といった所か。
そもそも、アーケンラーブが観光に力を入れている町だしな。防衛と資源目的で辺鄙な場所に作られたグランアインとは真逆なんだ。
「あ、手続きの後で構わないので、追剥ぎの討伐も受付してください」
「ご協力感謝します! 身柄ですか? それとも戦利品ですか?」
「戦利品ですね。この人が持っている杖が証拠です」
俺たちの番が来たことで、ナローが賞金首の懸賞金を貰う手続きを取ってくれた。
こういう追剥ぎの討伐は、冒険者の格を上げる一因になってくれる。アーケンラーブで手続きしても、町同士のネットワークで追剥ぎはいなくなった情報は共有されるのだ。
つまり、この功績はグランアインでも身になるって事だな。
「……はい、確認が取れました。十里眼のナバが愛用していた杖ですね。鑑定人が元の持ち主の死亡を読み取ってくれましたので、間違いなく報酬が出ると思います!」
「ありがとうございます。……懸賞金は、君たちで山分けして良いよ。追加ボーナスって奴だね」
「うおー! ありがとうな!」
「私はその分杖もらっちゃうから、皆でよろしくね~」
「あ、ありがとうございます……!」
こいつらからしてみたら、祭りで飲み食いできる金が入ったって事なんだろうな……。
ハノンはこの辺節制しそうだから、俺から少しははっちゃける様に言ってやるか。
とまぁ、臨時収入も得た所でようやっと中に入れるようになった。
荷馬車が門をくぐると、聞こえていた喧騒がより臨場感に溢れたものになる。
陽気な音楽。人々の笑い声。
往来で披露される大道芸に、所狭しと並んだ屋台。
鼻孔をくすぐる料理の数々。遊びはしゃぐ子供たち。
平和という二文字を濃縮したような、心地の良い空間。
ハノンが目を丸くしている。ヘナですら、ポケットから目を覗かせている始末だ。
『どうだ? 楽しみになってくるだろ』
「は、はい……凄いです……!」
「……人、いっぱい……む、無理。だけど、楽しそう……」
銅貨3人組もまた、この光景にうずうずしてるみたいだ。それを見たナローは、苦笑しつつ全員に宣言する。
「護衛はここまでで良いよ。皆ありがとうね。ここで片道分の銀貨25枚を支払うけど、帰りはどうする? 4日後の祭りが終わると同時に僕も発つんだけど、それまで待てないなら、今危険手当を支払うよ」
「4日間遊ぶに決まってるだろ!?」
「また俺たちが護衛するから、危険手当は帰ってからでいいぞ!」
「は、はやく報酬頂戴! あの骨付き肉がなくなっちゃう!」
食い気味だな。お前ら。
まぁ、ハノンもそれで文句ないみたいだし、また帰りはこいつらと一緒かな。
結局、この面子とは一旦ここで解散となり、4日後に再集合となった。元気よく走っていく3人組を見送り、俺とハノンとヘナ、そしてナローだけが残される。
「さて、ハノンくん」
「は、はい」
「君の目的である情報は、明日の昼に、ここに荷物を届ければ貰えると思うよ」
2人きりになった事で、ようやくナローが盗賊ギルドとしての一面を覗かせた。
荷馬車から手荷物を降ろし、一枚のメモを乗せてハノンに手渡す。
「そこは盗賊ギルドのお抱えになってる店だからさ。このメモを渡せば入れてくれると思うよ」
「あ、ありがとうございますっ」
「ふふ、それまではゆっくり観光すると良いよ。宿を取る必要があるなら、僕の名前で登録してる所があるんだけど、使うかい?」
「そ、そこまでしていただくのは悪いです……!」
「むしろ、僕がめったにそこに行かないから、売上に貢献して欲しいんだよねぇ。それに、荷物を置いとくなら信用がある宿に置いて欲しいって心境もあるのさ。……ダメかな?」
「あう……」
そう言われてしまうと、ハノンとしては断れない。
結局、ナローから宿屋の名前と手紙を預かって、そこで宿泊する流れになってしまった。
まぁ、祭り期間中は宿屋なんかどこも一杯だろうからな。ここでスムーズに手続きできる場所を得られたのは大きいだろうな。
「何からなにまで、ありがとうございます」
「なに、僕だって今回の旅路で助けられたよ。盗賊ギルドとか関係なしに、今後は君に護衛の依頼を持ち掛けるつもりさ。その時はまたよろしく頼むよ?」
「そ、そんなっ、いいんですか?」
「ははは、良い冒険者には唾つけとかないとねぇ。じゃ、後は祭りを楽しんでね」
そう言って、ナローは馬車を走らせて行ってしまった。
ギルドに出向くのは、明日の昼間。実質俺たちは、1日の観光期間を得る事が出来た訳だな。
ハノンは色々と与えられて申し訳なさそうだが、それはこいつの人徳だ。甘えておいて損はないさ。
『んじゃ、まずは宿屋だな?』
「そう、ですね。売り上げに貢献しないとです」
『律儀な奴だなぁ』
こうして、俺たちのアーケンラーブ滞在が始まった。
せっかくだ。4日間、芯までしゃぶり尽すつもりで楽しもうじゃないか。




