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第104話:vs重蜥蜴の群れ

どもどもべべでございます!

今日はヴォルさんの新技披露会!

どうぞ、お楽しみあれ~!


挿絵(By みてみん)


おや、ヴォルさんの様子が……?

 

 街道を脱し、林の近くへ停めてある馬車まで走る。

 見た所、護衛は雇っているらしい。長剣を構えた軽戦士の青年と、僧侶の少女が戦っているのが見える。

 だが動きを見るに、重蜥蜴ヘビーリザードをまとめて6匹も相手取るには練度が足りないようだ。既に青年はダメージを受けているらしく、馬車を守りながら戦うという状況に対応出来ないでいる。

 早いとこ駆け付けてやらんと、間に合わんな。


「お前ら! もう少し持たせろ!」


「助っ人だ!」


 銅貨三人組の戦士と斥侯が、大声で注意を引きながら全力で接近している中、後ろではハノンと魔術師が呪文を唱える。ある程度まで距離が詰まれば、この2人なら魔術を使った方が確かに良いな。

 だったら、俺も全力で接近しよう。


「フスッ」


 身体強化で脚力を上げつつ、走りながら武器を構える2人を追い抜いていく。そんな俺の姿を、馬車から見れば一番最後尾にいる重蜥蜴が目視した。

 そうだぞ、丸まるした餌が突っ込んできてやったんだ。是非とも大口を開けてくれ。


「シャア!」


「フシッ」


 奴さんが狙い通りに、俺の相手をしてくれた。その鋭利な牙が並んだ口で、思い切り噛みつこうとしてくる。

 それを寸前で躱し、脇をすり抜けてやる。俺は更に奥に用があるんでな、後ろから来る2人と相手しててくれ。


 しかし、さっきのは結構ギリギリだったな……やはり重蜥蜴は、森の中で会う奴より街道などに出てくる方が厄介だ。

 なんでって、こいつ等の体は今、薄いオレンジ色になっている。これは日光を浴びて体が温まってる証拠なんだ。

 爬虫類タイプのモンスターや動物は、体が冷えると動きが鈍くなる。逆に、こういう体が温まった連中は、率先して馬車を襲いにくる程度にはアグレッシブになるんだよ。

 動きも一段と速いし、好戦的にもなる。重蜥蜴が肉以外で討伐対象になる理由が、この危険性にある訳だ。


「え、援軍だ、良かった……!」


「『豊穣の神よ、どうかかの者の痛みを和らげてください』……ヒールっ」


 俺が戦線に突っ込み、重蜥蜴たちの意識をそらした結果、神官少女の奇跡が間に合った。

 ヒールという回復の奇跡が青年に届き、その傷を癒していく。これならフォローは最低限で良いだろう。

 青年を庇うように、前に立つ。後は、蜥蜴共がどういう行動を取って来るかだが……。


「『――――を逆巻いて斬りつけよ』、ウィンドカッター!」


「『――――天翔け突き進まん』……ウォータースピアっ」


 風の魔術と水の魔術が、敵陣の真ん中に飛来する。同時に、追いついた戦士と斥侯も重蜥蜴を斬りつけ始める。

 流れだけをみれば、重蜥蜴6匹を挟み撃ちにして魔法で奇襲をかけた結果だ。最上に見えるが、そうでもない。

 なんせ、ウォータースピアは重蜥蜴の鱗に弾かれてほぼダメージ0だからな。ウィンドカッターも、範囲魔術である代わりに威力はそこまで高くない。こいつらのタフさを考えると、まだまだ倒れはしないだろう。


「フスッ」


 さて、戦士と斥侯が2匹は相手取ってくれているから、俺は残りの4匹を対処しようか。

 まずは、ウィンドカッターで傷ついた中衛の連中を狙う。といっても、クイックマッドの魔術で動きを封じるだけだ。


「フシッ、フシッ!」


 ぬかるみになった地面に体が飲まれ、2匹が一時的な行動不能に陥る。同時に、前にいる2体を威嚇してこちらにヘイトを集めてやった。

 これで、この蜥蜴共は餌である俺に向かってくるだろう。


「え、えぇ? 角兎ホーンラビットが、魔術!?」


「し、しかも挑発プロボックまでしなかった!?」


 後ろで何か騒いでるが、今は敵に集中しろや!


「シャアアア!」


 流石に魔術に威嚇まで使うと、攻撃の余裕はない。後手に回った結果、挑発した2匹が俺に牙を剥いてくる。

 突っ込んでの噛みつきと、体重を利用してののしかかりだな。流石に速いが、さっきみたいな移動中で攻撃された訳でもない。こういうのは見てから回避が余裕で間に合う。


 噛みついてきた奴の牙を、体を捻って寸前で回避。こうすれば腰に余裕ができるから、のしかかってきた奴から足のバネを利用して離れる。

 群れてくるくらいには仲間意識を持ってる連中だ。噛みついてきた奴の方向に跳べば、巻き込みを危惧して追撃が遅れる事だろう。


「今だ! やれぇ!」


「おぉるぁああ!!」


 銅貨組の斥侯が、重蜥蜴の首筋を短刀で切り裂く。

 鱗が斬れ、肉がむき出しになった部分は脆い。そこを逃さず、戦士の両手剣が一匹の首を豪快に落とした。

 残りは5匹。行動を終えた者と、行動が出来ない者が、4匹。

 つまり、今自由に行動できるのは、馬車から最も離れた1匹だ。これなら、襲われた連中の報酬が減る事はないだろう。


「ぐぅ……! 速ぇなっ」


 仲間の首を落とされたからか、残りの一匹は戦士に向かって噛みついてくる。

 両手剣でなんとかガードはしているものの、衝撃は相当なようだ。もんどりうって転倒してしまっていた。

 こうなると、早いとこ戦況を打破しないといけないんだが……。


「フゥゥ……!」


 これは、オリアンティから学んだ()()を試す良い機会かもな!

 クイックマッドと同じ要領で、魔力を体に纏わせる。同時に気を練って、体の内部から強化を施していく。

 ハノンが2週間の間に魔術の訓練をしていた期間、当然俺も魔術を磨いていた。なんせ、この体なら魔法を十分に使えるってわかったからな。

 そして、俺にとってかなり使い勝手の良い魔術を習得できたのだ。


「フシッ!」


「な、なにこれ!?」


 魔術を行使した俺を見て、後ろにいた神官少女が驚きの声を上げる。


「角兎が……ハリネズミになっちゃった!」


 おい、兎なのかネズミなのか、はっきりしろ。

 とはいえ、俺も最初に鏡で見た時には、ハリネズミを想像しちまったから文句は言えんがな。

 今俺が使ったのは、【アイアンシフト】という魔術。これは、自分の肉体を一時的に、金属質な硬さに強化するという地属性魔術だ。

 主に、重たい防具を着込めない……それでいて攻撃を躱せない魔術師が、防御用に使用する魔術だな。


 確かに、この魔術で強化された肉体硬度は相当なものになる。しかし、大きな欠点も抱えているんだよな。

 それは、体をほとんど動かせなくなり、鈍重になるというものだ。

 角兎にとって、この欠点は致命的だ。硬くなるとはいえ、肉体的なデメリットを抱えては倒すことも逃げることもできなくなる。

 だが、そこはオリアンティからの助言と、俺の持つ技で無理矢理にアレンジさせてもらったんだ。


「フッ、シッ!」


「シャアア! ガッ」


 背中の毛が鋭く尖り、硬質化した姿になった俺は、一瞬で目の前にいる重蜥蜴の懐に潜り込む。

 そして、体を丸めて跳躍。奴さんの喉笛めがけて、無数の棘が突き刺さった。

 同時に、捻りをくわえて回転。やや無理矢理ではあるが、ざっくりと重蜥蜴の喉が切り裂かれる。

 思わずのけぞった相手の体を視認した上で、着地。そのまま跳躍。

 無防備になったどてっ腹に、自慢の角を突き立てる。


「ガヒュッ、ッ、ッ」


 俺の頭上では、もがき苦しむ鳴き声が聞こえてくる。これで一丁上がりだな。

 これが、俺が使う場合のアイアンシフトだ。硬化するのを、背中の毛だけに留める事で、動きの阻害を最小限に抑える。

 そして、気を用いて身体強化をかける事により、身体能力の低下を打ち消した結果が、現在の戦闘スタイルだな。

 硬質化した毛は、針や角というよりは剣に近い構造にしてある。今までは打撃がメインだったが、これで今後は斬撃だって使えるぞ。

 これぞ名付けて、【ヴォル・ヘッジホックスタイル】だ! 何故かオリアンティやハノンには大不評のネーミングだったけどな!

 ダサいなんて直接的な言い方、おっさん泣いちゃうぞ!


「うおぉ、なんだあれスゲェ!」


「ヘビーリザードを一撃で落としたぞ!?」


「ほらほらぁ! 早く攻撃しなさぁ~い!」


 これで残りは4匹。

 内1匹は、ハノンが水魔術をぶっかけた事でいくらか動きが鈍っている。これなら、後ろの2人に任せて良いだろう。わざとそいつを先導して、2人にけしかけるように促す。

 そんかし、まだ動きの良い奴は俺が相手取る。戦士と斥侯は、ウィンドカッターで傷ついた奴らを狙うつもりだな。


「『水よ、命の源よ。主を守る盾となりて、潤いを持って事を成さん』……【ウォーターシールド】!」


 同時に、俺の周りに1つ水球が発生する。ハノンが唱えた水の盾だ。

 視線を向ければ、ハノンが戦士たちの横まで接近している。そして、ハノンの周りにも水の盾が生成されていた。

 ハノンの魔法は、ウォータースピアが強化されただけじゃない。ウォーターシールドも、一度に2人まで、もしくは1人に2つまでつけれるようになった。これは、乱戦時においては非常に重要な成長だ。


 俺のこの形態は、身体強化でデメリットを打ち消してるから、実質は元の肉体のポテンシャルで戦わないといけない。攻撃力こそ絶大に上がっているが、回避自体は少し下がってしまう。

 そんなデメリットを帳消しにしてくれる、このウォーターシールド。ますますハノンとの連携が心地良いものになった。


「っ、ヘナさん!」


「んっ……!」


 そして、重蜥蜴の一撃をハノンが防御する。

 手に握られているのは、いつの間にやら黒い盾になっていた。ヘナの盾スタイルだな。

 水球が割り込み、勢いを殺された重蜥蜴の攻撃では、その毛髪に傷一つ付けることはできなかった。

 器族であるヘナは、持ち主にとってしっくりくる形にその体を変質できる。ハノンと共に戦うにあたって、あいつは盾となってハノンを守る道を選んだ。


「ッ、ガァ!」


 ヘナは、防御力に特化しているだけではない。

 攻撃を受け止めた瞬間、盾の中心から柱のように太い塊が突き出される。あいつの毛は形状が自由自在だから、ああやってカウンターとして相手を弾き飛ばせるんだ。

 盾持ガードちであり魔術師でもあるハノンにとって、相手との距離を一定に保てるのは頼もしい事この上ないだろう。


「っと……すまんハノンくん、また助けられた!」


「よぉし、このまま行くぞ!」


 その間に戦士が起き上り、戦況が大きく有利に傾いた。

 魔術師の遠距離攻撃、ハノンの魔法とヘナの防御。

 そこに戦士と斥侯が追撃をくわえ、1匹ずつ確殺していく。

 もはや、この段階での敗北はあり得ない。


「フッ……シッ!」


 トドメに、俺が斬りつけて動きを乱した重蜥蜴に、軽戦士の青年が剣を突き立てた。

 そいつはしばらくのたうち回っていたが……やがて、動く事をしなくなる。

 合計6匹。確実に、殺しきった。


「う、ぉぉぉ……勝ったぁあああ!!」


 戦士が雄叫びを上げて、斥侯が息を吐く。

 魔術師がキャイキャイと跳ね、ハノンがヘナを撫でた。

 この戦いは……俺たちの、大勝利だった。

 

というわけで、フォルムチェンジヴォルさんです!


感想で、ヴォルさんの進化した姿を見たいとのお声があり、少しネタを考えてみました。

この作品では、生物の急激な進化などは発生しない設定になっています。それこそ、山ドードーのように長い年月の末に人の言葉を理解するようになったりするようなのはありますが。


ですが、主人公が何も変化無しというのも、確かにマンネリですよね。竜の玉物語でも、野菜人が変身してますしw


というわけで、身体を一時的に変質して戦えるようにしてみました!

どうかな~。賛否あるかしら。

という訳で、今後のヴォルさんにこうご期待~!

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― 新着の感想 ―
[良い点] おー! ついにヴォルさんの魔力の使い道が! ハノン君も頼りがいみたいなのが出てきましたねー( ゜∀゜)
[一言] ハリネズミ!かわいい!最高!
[一言] おや、ヴォルさんの様子が……? ティルリルン、トゥットゥットゥットゥットゥットゥットゥットゥーッ、トゥットゥットゥットゥットゥットゥットゥットゥーッ、ティーティーティー、ティティティッティテ…
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