第103話:発情期?
どもどもべべでございます!
今回はちょっとした伏線回?
といってもろくな話じゃないですけどね~。話半分でどうぞw
ではではご投稿! どうぞお楽しみあれー!
俺たちが護衛任務について、4日が経った。
「いやぁ、なんのかんのであと少しだな!」
「そうだな。山賊以外に敵もあまり出なかったし……危険手当は少ないけど、安全に越したことはないわなぁ」
「そもそも、今回の報酬なみに高価な魔法の杖が手に入ったものねっ。私達にとってはプラスの成果よぉ」
「ふふ、油断しちゃ、だめですよ?」
銅貨三人組の言葉に小さく微笑みながら、ハノンも頷く。確かに、最初に盗賊とやり合った時以外の戦闘は、せいぜい見つけた角兎の群れを襲って肉を確保したくらいだ。
平和そのものである旅路。アーケンラーブの町までは残り僅かだが、ここはハノンの言う通りだ。最期の最後で警戒を怠らないように努めよう。
「……フス」
「……ヴォルさん、大丈夫ですか?」
『ん、あぁ……大丈夫だ、お前が心配することじゃねぇよ』
「そう、ですか。何かあったら、すぐに言ってくださいね?」
……と言いつつ、ハノンに心配されちまったな。
ハノンの足元で軽く鼻を鳴らし、毛並みを整える為にぶるりと体を左右に振る。どうにも、あの初日以降が微妙な感じだわ。
気を引き締めにゃならんと言ってる張本人がこれじゃあ、示しがつかんぞ。
「なんだハノンくん、角兎が退屈してんのか?」
「いえ、そういう訳ではないみたいなんですけど……」
「やっぱり、同族を襲ったのはまずかったか?」
「いえ、そこはヴォルさんも、問題ないって言ってくれてましたよ」
3人組の中でも、特にちゃらんぽらんな戦士の男にすら指摘されちまった。
これはいかんな。こいつに違和感を覚えられるんじゃ、集中なんて言えた義理ではない。
とはいえ、今俺が抱えているのは、すぐにどうこう出来る問題でもない。なんせ、俺一人じゃあどうにもできん事なんだからな。
「あら、もしかして発情してる?」
「フス!?」
「え?」
「角兎って年中発情期だからねぇ、お相手いないんならストレスあるんじゃないかしら?」
ちょ、おま、言うんじゃねぇよ!
くっそ、ハノンに意識させないようにしてたんだがな。
「発情……してるんですか? ヴォルさん」
『まぁ、角兎の本能って奴だな……』
正直、俺だってこの体になってからここまで如実なのは初めてだ。
確かに角兎は年中子作りが出来る体質をしている。これは種族としての弱さが根本的理由だな。
いつでも子孫を残せるようにしておいて、種族全体の絶滅を防いでいるんだろう。元々が生き汚さの極致みたいな生態してるんだし、さもありなんと言った所だ。
この体になってから、まぁ多少はそういう衝動を感じた事はある。しかし、俺だって年中発情期仲間である人間って種族だったんだ。性欲のコントロールは容易い事だった。
そも、気功師としての修練を積んでる奴なら、その辺りの煩悩をどう対処するかなんてのを最初に叩き込まれる訳だし。
(ハノンとあんな話したから、だよなぁ……)
そんな俺が、何故こうも発散の仕方がわからない学生みたいな状況になっているのか?
思い当たる節があるとするならば、初日に交わしたハノンとの会話が原因だろう。
《酒と女と金だ》
《……え?》
《冒険者になった理由だよ》
そう、これだよ。
俺が俺である理由を、思い出しちまったのが何よりの原因だよ!
体が角兎になってこっち、ずっとハノンの教育に力を注いでたから特に影響なかったんだが……俺の冒険者としてのルーツを思い出してしまった事で、剛健のヴォルフガングが疼きだしやがった。
つまるところ、割と頻繁に娼館に通ってたり、遠征で別の町に行った時なんかは決まって女を引っかけてた頃の感覚を思い出しちまったわけだ。
『精神が感覚を思い出したら、それが体に影響を与えるもんだ。かといって、この体じゃ発散も出来んだろ? お前が気にする事でもないし、出来る事もないのさ』
「うぅん……でも、辛いんですよね?」
『少なくとも、辛くはねぇよ』
すまん、ちょっと嘘ついた。
流石に発散できないのは、辛い。でも出来ないのは事実だし、しょうがない事だ。
なんたって、今の俺の体は角兎なんだからな。この体でいる限り、人間の女となんてそうそうお相手できそうにないだろう。
逆に、相手が出来るとしたら同じ角兎や、兎系のモンスターなんだろうが……ご存じの通り、俺の中身は40代のおっさんだ。
流石に、モンスター相手にどうこうしたいなんていう精神構造は持ち合わせていない。道中で襲った角兎達を見ても、別にビビッと来ることはなかったしな。
だから、この感覚は一時的なものだと割り切って、静まるまで耐えればいいんだ。人間に戻った時に、精一杯我慢した分を吐き出せばいいんだよ。
「……ふぅむ」
そんな俺の考えを知ってか知らずか、ハノンは唇に指を当てて考え込んでしまっている。
別に、ハノンが気にする事では、本当に無いんだけどなぁ……。
「なぁなぁ、その角兎の子供が出来たら、やっぱりめっちゃ強いんかな」
「そうねぇ、遺伝子的に優良な個体が出来そうではあるんじゃない?」
「ハノン、その個体を育てて契約獣として売り出すのもありなんじゃないか?」
「え? い、いや、それは……どうでしょう」
おい、何を恐ろしい事考えてるんだお前ら!
だから、兎相手に発情なんてできる訳ないだろうが!
「フスッ!」
「うごふっ!? よ、鎧越しに蹴りの衝撃が来たぞ……!?」
馬鹿な事を言い出した奴は、とりあえず蹴りでお仕置きだ。
ちゃんと鎧に当ててやったんだから、有難く思うんだな。
「皆、そろそろアーケンラーブにつくから、滞在手続きの為にカードの準備をお願いね」
と、そんな茶番で場の空気が引き締まった所で、ナローから声がかかった。
視線を通行方向に向けると、木々の向こうに外壁が確認できる。間違いなく、アーケンラーブの町だな。
まだまだ遠いが、目視さえできれば気力も湧くってもんだ。
「よ、よぉし、ひとまずこの話は後にしよう」
「そうね~、準備しとかないとね~冒険者カードっ」
「お前ら……人が犠牲になってからあっさり話題を断ち切りやがって……!」
くだらない茶々をいれてた三人組も、これ幸いと俺からのお咎めを回避するために切り替えていく。この辺のしたたかさは、長年の積み重ねだな。
「……んぅ? ねぇみんな、あっちの脇道見て!」
と、ここで馬車の屋根に乗っていた女魔術師が声を上げる。
俺らに声をかけつつも、視線は馬車の前方を向いたままだ。
「あそこに停まってる馬車、襲われてない!?」
「「なに!?」」
その声に、俺らも指を指された方を見やる。
視線の先には、確かに商用と思われる荷馬車がある。そして、数人の影が蠢いていた。
あの動きは明らかに戦闘による挙動だな。なにより、馬車を取り囲んでいる連中が問題だ。
『結構な群れの重蜥蜴だな! アーケンラーブ周辺の森から出てきやがったか!』
「な、ナローさん、どうします!?」
重蜥蜴。かつてフロキア達とパーティを組んだ時に初めて相手取った連中だな。
あの時は3匹を討伐したが、今回はそれ以上だ。馬車を中心にじりじりと接近している連中は、見えてるだけでも6匹はいる。
森から出て馬車を襲うって事は、腹を空かせている上に体も温まっている個体ばかりだろう。アグレッシブな重蜥蜴が6匹というのは、正直かなり厄介だ。
「……皆、加勢できるかい? 危険手当は約束するよ」
「おう! 任せろ!」
「了解よぉ!」
だが、ナローはここで救助を選択した。
ならば、俺ら冒険者としての返事は1つだ。
『ハノン。今の内に防御魔術使っとけよ!』
「は、はい!」
各々が武器を構え、駆けだす。
さぁ、アーケンラーブにつく前に、ちょっとした人助けといこうか!




