第100話:ヘナお披露目
どもどもべべでございます!
今日は仕事が休みなので、こんな時間にご投稿!
どうぞ、お楽しみあれー!
追剥ぎのボスの人相を紙に映し、討伐の証拠である杖を手に入れた事で、ナローにも危険手当の要求を受理された。
これで多少の色も付くし、町にこの証拠を提出すりゃ懸賞金を貰うこともできる。万々歳だな。
「なぁ、懸賞金で何買う?」
「そうね~、あの杖中々の上物だったし、デザイン加工して貰って私が使うようにするとか~?」
「魔術師であるハノンがそれで良いなら、懸賞金の山分けん時に杖分の金引いて現物支給でも良いんじゃね?」
「あ……僕、杖は使わないので……」
「本当!? じゃあ貰っちゃうわねっ」
……本来、こういう後から貰う金の話ってのはするもんじゃない。
気が緩んでる証拠だからな。依頼を達成できたも同然と考えてるから、こういう話題が出てしまうってのはある。
とはいえ、こういう実りの話を邪魔する程、俺も野暮じゃない。
本格的に緩み始めたら、蹴りつけてでも意識させてやりゃあいい。先は長いし、常時気を張りっぱなしだといざという時に大事な何かが切れちまうってものだ。
現に、ここから先は実に順調な旅路だった。特にモンスターに襲われる事もなく進む事ができたため、陽が沈む頃にはかなりの距離を稼ぐことができていた。
今現在は、野営に適した場所を見繕っている段階だな。
「うん……馬の体力的にも、今夜はこの辺りで野営って事でいいかな?」
「異議な~し」
「わかりました」
各々が言葉を紡ぎながら、暗くなる前に野営の準備を始める。
ハノンは食事係だな。ナローから提供された保存食を使って、全員分のスープを作っている。
冒険者になってからずっと、竜の息吹亭で過ごしているハノンだ。オゴスの旦那に教えてもらったりしているし、その技量は周囲に充分自慢できるものだ。貴族であるオリアンティのお墨付きだぞ。
「へぇ、見事な手際だねぇ」
「い、いえ、そんな……」
と、そんなハノンにナローが話しかけてくる。
野営道具の中に準備していた屑野菜と、保存食の肉をそれで味付けして軽く炒めつつ、ハノンは恥ずかしそうに視線を泳がせていた。
「ハノンくん、調味料とか欲しくないかい?」
「あ、えと、一応、風味付けのものは持ってますけど……」
「香辛料とか、少し割引で売ってあげようか?」
「いいんですか?」
ナローめ、こんな時にまで商魂たくましい事を……。
だが、香辛料は魅力的な提案だな。こんな旅路では滅多に味わえないし、なにより辛味は体が温まる。野営にはぴったりだ。
「うん、僕ら全員で食べる分だからね。ハノンくんだけじゃなくて、彼等にも一部負担してもらえばいいんじゃないかな」
「……だってよ。どうする?」
「うぅん、まぁ確かに塩味のスープとかよりはもっと美味いものの方がいいよなぁ」
「でも、香辛料って高いわよ?」
まぁ、確かにな。高いからこそ美味いとも言えるが。
結局、三人組は自分たちの報酬から少しだけ天引きという形でこの商談を受けた。その間にもハノンは、炒めた野菜と肉の入った鍋に出汁の入った水を加え、スープにしていく。
さらに山ドードーの卵とバターを使って、パンに乗せるオムレツを人数分用意すれば、その晩のメニューは完成だ。こういう時、中の物が腐りも壊れもしない異次元バッグは便利だな。
「うわぁ、めっちゃいい匂い……」
「お前もあれくらい料理できたらな……」
「なによぅ、普通の女でもあんなに女の子してないわよ~! ハノンくんが嫁力高いだけでしょう!?」
いや、ハノンのあれは積み重ねの結果だからな。勉強を怠った者の言い訳は見苦しいぞ?
それにしても、野菜の皮うめぇ。
「よし、っと……それじゃあ皆さん、食べましょうか」
「「「わ~い食べるぅ~!」」」
周囲が暗くなり始めた頃に、料理は完成。
全員が食事の席についた所で、ハノンが驚くべき強硬策に出た。
「皆さん、紹介しますね」
「っ……!」
なんと、ポケットからヘナを取り出したのだ。
確かに人数分用意されてるが、ここで無理に紹介するつもりだったか。
しかし、ヘナもこれには不意打ちだったみたいだな。めっちゃブルブル震えてるし。
「うんと、ハノンくん? それなぁに?」
「紹介っつうからには、生き物か?」
「はい。ヘナさんって言うんです」
バイブから硬直に変わりつつある毛玉を撫でながら、ニコリと笑うハノン。
……さては、食事時になっても安全地帯であるポケットから出ようとしないヘナに、少し怒ってるな? 心の準備が長すぎると思ってるんだろうか。
「僕の、契約獣なんですよ。見ての通り、とても人見知りなんですけどね」
「へぇ、その角兎以外にもいたんだな」
……な、なるほど。
ハノンのやつ、ヘナを契約獣として紹介するつもりみたいだ。
確かに、ヘナはパっと見人間には見えないし、契約獣ってんなら無理に誰かと会話することもないんだが……戦略としてはダーティな部類だな。
「見た事ないモンスターねぇ」
「ゴーレム系らしいんですよね……」
「あぁ、人工生命ですか。遺跡やダンジョンで稀に発掘されるらしいですね」
意外とすんなり信じてるし。
ハノン、意外とアルバート寄りの性格してるんじゃないだろうか。信じ込ませたり、先導するのが上手いしな。
あまり怒らせない方が、良いのかもしれんな。
「野外活動が得意ですから、これからたまに出していきますね? ヘナさん、挨拶しましょうね」
「…………(ぴょこり)」
「あはは、カワイイ~」
結局この依頼中、ヘナはハノンの契約獣扱いで周りから認識されるようになる。
器族というイレギュラーを隠すには申し分ない結果だが……ヘナ、お前それでいいのか。
いやまぁ、俺も普通にハノンの装備扱いしてるし、別に良いのか……?
「それより、早く食おうぜ! もう腹減って仕方ないんだっ」
「あぁ、オムレツが冷めちまうっ」
「そうです、ね。では皆さん、どうぞ召し上がれ」
とまぁ、ヘナよりも周りの意識は食事に向いた事で、自己紹介はここまでとなった。
ヘナの負担になりすぎないように、このタイミングにしたんだろうな。多少無理矢理だったとはいえ、ちゃんと考えているのは良い事だ。
それに、俺だってそろそろ食いたいしな。
「いただきま~す!」
「んっ、スープ美味いな!」
「あちちっ、ふぅ、ふぅ……」
うん、今回のスープも美味いな。
屑野菜と肉だけしか具はないが、調味料と香辛料で味付けしてあるため、非常に風味豊かだ。
オゴスの旦那から教えてもらった、骨やら野菜やらをごった煮にして固めた奴入れてたよな? コンソメっつったか。
あれを入れる事で、スープに深みが出てる。そして一瞬後に舌に刺さるわずかな辛味。これが美味いと同時に、体を温めてくれる。
冷える夜にはうってつけのスープだ。
「うおぉ、このオムレツ、とろっとろだぞ!」
「新鮮な奴なのか?」
「はい、今朝産んだのを異次元バッグに入れてた、山ドードーの卵です」
「おやおや、山ドードーの卵とは。ハノンくんの香辛料代は、これでチャラにできちゃうねぇ」
うん、オムレツも美味いな。
そもそも、卵を半熟で食えるっていうのが贅沢だ。噛んだ瞬間、トロミがパンと舌に絡みついて濃厚な旨味で満たしてくれる。
そもすればそのまま消えてしまいそうで勿体なく思えるが、硬いパンが卵の味を歯ごたえと共に長引かせている。最高の相性だ。
また、この卵が染みた部分をスープに浸して食えば……うん、こりゃ美味い!
スープがより濃厚になったな。癖になりそうだ。
「うぉぉ、角兎がめっちゃ旨そうな食い方してる!」
「私も真似しようっと。あむ……んんん~! 美味しい~」
「本当に、美味しいですねぇ」
「あ、あはは……ありがとうございます」
◆ ◆ ◆
星が空に満ちる頃には、スープは一滴残らず無くなっていた。
満足した所で、就寝時に立つ見張りの時間を分配する。
今回はハノンと俺、ヘナと銅貨組の魔術師、斥侯と戦士の3組での交代制だな。
ヘナがめっちゃ不安そうだったが、ハノンがにこやかに「がんばれっ」て言うもんだから二の句が継げなくなっていた。……意外とスパルタなのな。誰に似たのやら。
「じゃあナローさん。見張りは俺らに任せてくれ!」
「はい、よろしくお願いしますね」
ナローは馬車の荷台にある就寝スペースへ。といってもハンモックを吊るすだけなんだが、床や地面で寝るよりはずっと良い身分だ。まぁ依頼主だし当然の権利ではある。
3人組はテントの中で仮眠を始め、ヘナもまたハノンのポケットで休んでいる。
名実ともに、今はハノンと俺の2人きりって事だ。
いつも一緒に寝てはいるが、こうした夜の見張りで一緒にいる事は初めてだな。……さて、何を話したもんか……。




