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夏祭りより体育祭やろうぜ体育祭。ちょうど魔性の方も体育祭やってるし、乗るしかないこのビックウェーブに

男はな、命の危機を感じると男性ホルモンが増してとても魅力的になるらしい。

「 知っていると思うけど、今度体育大会があるので、今日のホームルームは各種目にでる選手を決めて行くから、みんな適当に考えてー……あ、ひとり最低でも三種目な」


 夏休みが明けて一週間ほど経った頃、HRの時間に教壇の前に立ってそう言う斉藤先生。


 男女別にわかれて、なんの種目にでるか相談する。


「体育祭か……面倒だな」


 俺の隣の来栖さんがそう呟く。


「それ、球技大会の時も文化祭の時も言ってたよね」


 定番というか、お約束というか、もはやテンプレ化しちゃってるから。


「集団行動が苦手なんだよ」


 これも前に聞いた気がするな。


「じゃあ、個人競技に出るわけだ」


 球技大会のテニスも、同じ理由だったなと思いながらそう言う。


「できればそうしたいところなんだが、走るのあまり得意じゃないんだよな」


 おや意外、あの体力お化けの龍之介と対等に渡り合えるスペックを持つ、チートな来栖さんが走るのが得意ではないとは。


 あ、胸が邪魔で走りにくいのか……納得。


「ん? 私の顔になんかついてるか?」


「いや、そら走りにくいわな……と思って」


 それと、顔は見てない。胸はみてるけど。


「どういう意味だ?」


「来栖さん、よかったら騎馬戦に出てくれないかな? それと棒倒しと力自慢も」


 一人の女生徒が来栖さんに話しかけてくる。文化祭で来栖さんも大分クラスに溶け込めたらしく、周囲からは怯えられることは以前と比べて少なくなった。


 俺も男友達の一人でもできたのかというと……そういうわけではない。仲良くしようぜと言ったのに、なぜか以前よりも更に距離を置かれた感じがする。

 この間なんか、目があっただけなのにものすごい勢いで逃げられたからな。

 本当、海に石を投げた時の魚のようだった。


 ……今の例えはあまり上手くないな。三十点だ。


「私がか?」


「うん、来栖さん力あるし、迫力もあるから適任だと思うんだけど」


 それは暗に来栖さんの顔怖いって言ってるのか? 


「悪いけど、私は集団競技は苦手なんだ。だから……」


「そこをなんとかお願いします」


 断ろうとした来栖さんの言葉を遮り、押しを強くお願いする女子生徒。


「そう頼まれてもな」


 その様子に、少し困ったような表情でそう呟く来栖さん。

 

「お願いします」


「走るの苦手なら、別にこっちでもいいんじゃないか?」


 俺は女子生徒にアシストする。


「力自慢ってなんだ?」


「三十キロの土嚢を持ち上げて、一番長く持ち上げれてた人が優勝……みたいな」


「なるほど……オーケーわかった出てやるよ」


 少しの間考えてからそう言う来栖さん。


 来栖さんって文化祭の時もそうだけど、お願いされたら中々断れない傾向にあるよな。押しに弱いのか、案外チョロいところあるのか。


「よかったー、ありがとうね来栖さん」


 女子生徒はそう言うと、女子の集団の方へと戻っていく。


 さて、俺も何にでるか決めるかな。そう思って立ち上がり男が集まっているところへ向かう。


「なぁ、なにが余ってる?」


「ひっ」


 俺が話しかけると、怯えたような表情になる男子生徒。


 おい待て、なんで悲鳴あげるんだよ。別に顔怖くないだろ。こんなにプリチーな顔してんだから。


「えっと、綱取り合戦と障害物競争と借り物競争かな」


「あ、じゃあそれ三つに出てもいい?」


 丁度、面白そうなものが残っていたので、それに参加していいかどうか尋ねる。


「う、うん……どうぞ」


 ややひきつったような笑みを浮かべて頷く男子生徒。


「ありがとうね」

 

 俺はそう言って自分の席に戻る。


◇◆◇◆


「というわけで、部対抗リレーにエントリーしてきました」


 三年生が引退し、新キャプテンになった城之内先輩がそう言う。


 部活が終わったあと、話があるということで女子更衣室に呼ばれたわけだが、まさか全員上半身下着もしくは何も着けずに大富豪していたとは思わなかった。


 ちなみに何もつけていなかったのは、坂本先輩だ。アホの先輩だ。


 水泳部だから裸になるのに抵抗がないのはわかるけど、ノクターン行きになるのでやめてほしい。


「どういうわけですか城之内先輩」


 俺は理由がわからなかったので、城之内先輩に尋ねる。


「体育祭の部対抗リレーにエントリーした理由? 体育祭は一般解放されてて、来年の入学希望者も少なくない数が見に来るわけでしょ?」


「まぁ、そうだな」


 そう頷く近藤先輩。


「なので、体育祭という機会を使ってアピールしていきたいと思います……彼を」


 そう言って俺を指差す城之内先輩。


「ん? なんで俺?」


 アピールするのは水泳部だろ? 俺をアピールしても意味ないんじゃないかな?


「水泳部といえば、女だらけで女苦しいイメージを持たれがちです」


 ドキッ! 女だらけの水泳部ってか? 最高じゃないか。俺なら間違いなく入部するね。それで疑似ハーレムを楽しむ。


 ってよく考えたら今がその状況じゃねぇか。やっべ、テンション上がってきた。


「そこに、こんなにハイレベルな男子がいると知ったらどうなるでしょう? しかも入れば水着姿が拝めます」


 つまり、美人の水着姿が拝めるというわけか……といっても、俺水着はそこまで好きなコスじゃないんだよな。なんか、見慣れたというか、興奮できないというか。


 あ、けどハイレグは別だ。あれはとてもいい。ギリギリをせめたラインに、食い込みにそしてそれを直す時の……っと、これ以上はやめておこう。


「私なら間違いなく入ります」


 手をあげてそう言う奏ちゃん。なるほど、奏ちゃんは水着に興奮するタイプか。


「私も間違いなくはいるよ」


 坂本先輩はそうだろうな。なんとなく頷ける。


「そうでしょうそうでしょう、しかも中学三年生と色々と多感な時期であれば、なおのことそう思うはずです」


 いろいろと多感なのは中二じゃね? と思ったけど、あまり変わらんか。


「そうだな……思いの外、悪くない案だな」


 そう言う近藤先輩。


「そうでしょうそうでしょう? まあ、どのみち毎年恒例なので出ますけど」


「あ、衣装はどうする? 海軍のマントでいく? それとも紙パックシリーズ? アン○ンマン?」


 そう言ってロッカーを物色する坂本先輩。


「衣装って?」


 奏ちゃんが首をかしげながらそう聞く。


「水泳部は毎年なにかしらコスプレをして出るんだ、ちなみに去年はこの紙パックシリーズだった」


 そう言って、近藤先輩はロッカーから人が着れるように、側面に手を出す穴の空いた、段ボールで作られた紙パックをいくつか取り出す。


 学校の自販機でよく売られている、八十円で買える抹茶オレやヨーグルッペにコーヒーを模してつくられたそれらは、かなりクオリティが高いものだった。コミケに着ていけそうだ。


「今年は、せっかく可愛い男子がいるので新しく作りましょう……部活の時間をつかって」


「いいんですか?」


 大会も終わりオフシーズンになったとはいえ、まだ季節的にはガンガン泳げる次期なのに勿体なくないか?


「顧問に許可はとってます」


 そうか……なら仕方ないな。


 というわけで、部活は暫くリレーの為の衣装作りをすることになった。


だからちょっと半殺しにさせて。


そう言って彼女は俺の鳩尾に拳を叩き込んだ。





色々と解せぬ。

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