ファンクラブの本気って奴だぜ!
ようやくファンクラブについて少し書けたぜ。
別にカップル忘れてた訳じゃないからな?
「有利……厨房は任せろっ」
サムズアップでそう言う来栖さん
「ああ! 任せたぜ!」
俺もそれにサムズアップで応じると、急いで調理室をでて教室に戻る。
ファンクラブがあるのは知ってたが、ここまで人気があるとは思わなかったぜ。
だがしかし! 人気があるとわかった以上、ファンサービスはしっかりしてやらなきゃならんよな!
何せ可愛い子が俺目当てにここに訪れるんだ! テンションが上がらない訳ないだろ?
シフトは二時間、その二時間でいかに多くの可愛い女子とお知り合いになれるか……すべては俺の技量にかかっている訳だ。
やるぜ……やってやるぜ! このモテ期を逃すものか!
『それではっ、そろそろ開会式を終りょ……おっと、慌てるなよファンガール。まだ誰も終わるとは言ってないぜぇ? 一体そんなに急いでどこに行こうとしているんだ? ゲスゲスゲス!』
ゲスい! 笑い方がゲスい! まさに、ゲスの極みだな。私以外私じゃないってか?
『ふっふっふ、全員理解しているようだな。空条有利は常に喫茶店に居るわけではないと、そしてこの場に本人は居ない……つまり、コウのシフトは午前中の2時間のみと!』
すげぇな……なんか名探偵みたいだ。バカなのに。
『つぅまぁりぃ! 彼のお帰りなさいませお嬢様を聞けるのは……早い者勝ちだと言うことを!』
おう、いくらでも言ってやるよ。バッチコーイ!
『ところで、知っているかね諸君、放送室には、ハンドマイクがあると言うことを……そして、ハンドマイクがあると言うことは、放送しながらでも自由に歩けるということを!』
……うわぁ、なにそれ超ズルい。
体育館の方から『あのアマ! はかったなぁぁぁ』という叫び声が聞こえた……気がした。
「王子!」
教室で待機していると、突然ドアを開けて麗奈さんが飛び込んでくる。
「うわっ! ビックリしたー……麗奈さん、開会式は?」
「無論、抜け出した……さぁ、それより早く例の言葉を私に言ってくれ」
ボイスレコーダーを取り出してそう言う麗奈さん。そこまでするか……つーかなんでボイスレコーダー持ってんだよ。
「言わなきゃ……ダメかな?」
言うまいと思っていたんだが、ボイスレコーダーまで持ち出されると、なんだか断るに断れない。
「無論、それ目当てで来たのだから」
曇りのない瞳でまっすぐと俺を見ながらそう言う麗奈さん。
……これはテコでも動きそうにないな。しゃーない、さっさと言って帰っていただこう。
あ、帰らせたらダメだわ、お金を落として言ってもらおう。
「お帰りなさ『クハハハ! 私は既に1-2クラスの教室付近までたどり着いた! せいぜい諸君も頑張るのだな! それでは開会式を終了する! ゲスゲスゲス』」
折角言ってやったのに、坂本先輩のゲス放送でかき消されてしまった。
「……おのれ……よくも……」
ふと麗奈さんを見ると、怒りに震えていた。なんというか……金髪が今にも逆立ちそうだ。
「やあ! 早速来た」
「貴様のせいで!」
「ぶげらっ」
ハンドマイクを持った坂本先輩が入ってくるのと同時に、麗奈さんが渾身の一撃を顔面に叩き込む。
「……大丈夫か? あれ」
麗奈さんが、坂本先輩を連れてどこかへ行くのを見送りながらそう呟く。
まぁ……坂本先輩が安らかに逝けるように祈ろう。
だが、人の心配をしている場合ではないと、すぐに思い知らされることになった。
目が血走った女生徒が、一気になだれ込んできて、店内が混乱状態に。見かねた来栖さんが、物理的に制圧。ええ、見事な眼光でした。チビるかと思った。
それで、順番に並んでもらって、外に1人案内係を置いて対処。
俺?……ずっとレジ番してましたよ。皆に有無を言わせられずにレジに立たされました。
シフトおわるまで、誰かが入ってくる度に『お帰りなさいませお嬢様』って言ってましたよ。
名前を聞くどころか、顔を覚える余裕すらなかったよ。
あ、姉ちゃんとエミが友達連れてきた時だけは、俺が対応したよ。
もう疲れたよ、パトラッシュ……
本当すみません、俺の認識が甘かったです。モテ期到来だぜひゃっはーとか言ってたけど、それどころじゃなかったです。
「おつかれさん……大丈夫か?」
俺が制服に着替えて、厨房で休憩していると、着替え終わった来栖さんが入ってきて、俺に向かってそう聞いてくる。
「あ、来栖さん……はは…もう、疲れたよ」
俺は、ぐったりと椅子に腰を下ろしたままそう返す。
もう、疲労感半端ねぇ……アイドルとかよく立ちっぱなしで握手会とかやってるけど、本当すごいな、俺は絶対に無理だわ。もうやりたくねぇ。
あと、ファン怖い。
「そりゃそうか……あー、けど、これから奏と一緒に回るんだろう?」
と、近くの椅子に座りながらそう言う来栖さん。
おー、そういえば、シフト終わったら奏ちゃんの所に行くって約束してたわ。
「なんで知ってんの?」
約束したとき来栖さん居なかったと思うけど。
「昨日、あいつからラインきた」
そうなのか、スゲー仲良くなってんだな。
「よし、んじゃ行ってくる」
俺は、椅子から立ち上がってそう言う。
「ん? 休憩はもういいのか?」
来栖さんがそう聞いてくる。
「うん、だいぶ休んだからね、もう十分だぜ」
俺はピースサインで答えながらそう言う。
「そうか、んじゃ楽しんできなよ」
軽く笑ってそう言う来栖さん。
仕事は十分やったからな、次は存分に楽しませてもらうとしようか!
実際にこんなファンいたら引くかもしれない。いや、多分引く。
迫力に圧倒される。
まぁ、多分居ないでしょ……
あー、けど、なんか大人気アイドルには居そうだな。




